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故フィリップ殿下 皇室との思い出

2021年5月17日 13:50
故フィリップ殿下 皇室との思い出

4月9日、イギリスのエリザベス女王の夫であるフィリップ殿下が99歳で亡くなりました。日本の皇室とも関わりの深かったフィリップ殿下について、かつてのエピソードを交えながら、日本テレビ客員解説委員の井上茂男さんとともに、振り返ります。


――4月9日、イギリスのエリザベス女王の夫であるフィリップ殿下が、住まいであるウィンザー城で亡くなりました。99歳でした。フィリップ殿下は、ギリシャの王族に生まれましたが、イギリス国籍を取得し、1947年に当時21歳だったエリザベス女王と結婚しました。その後、チャールズ皇太子ら4人の子どもにめぐまれ、70年以上連れ添ったエリザベス女王は、フィリップ殿下について、かつて「私の支えであり安心の場」と述べていました。葬儀は4月17日、ウィンザー城で行われエリザベス女王は静かに棺を見守りました。


――井上さん、フィリップ殿下の訃報にどんなことを思われましたか?

フィリップ殿下は、エリザベス女王の後ろに慎み深く寄り添う姿が印象的でしたが、日本の皇室ととても深い縁をお持ちの方でした。

エリザベス女王の来日は、国賓として来日した1975(昭和50)年の一度です。この時はフィリップ殿下と都内をオープンカーでパレードしたことが話題となりました。この時以外にも、殿下はお一人で来日していて、昭和天皇の「大喪の礼」、世界野生生物基金(現在の世界自然保護基金)の総裁としてなど、合わせて7回、来日しています。


――日本の皇室とも親しく交流されていたんですか?

こちらは、1984(昭和59)年10月、フィリップ殿下が来日した際に、昭和天皇と宮殿で会った時の映像です。この時、今の天皇陛下、当時の浩宮さまは、英国のオックスフォード大学に留学中でした。昭和天皇は「英王室の一員のように迎えてもらってうれしく思います」とお礼を述べ、殿下は「浩宮さまは大変よく勉強されています」と応じています。


――陛下が「英国王室の一員のように迎えられていた」というのは、どういうことでしょう?

この映像のように、陛下は、スコットランドのバルモラルの野生動物保護区を殿下に案内してもらったり、英王室の別荘、バルモラル城で女王夫妻と数日を過ごしたりするなど、女王夫妻から歓待を受けています。昭和天皇は祖父としてお礼を述べたかったのでしょうね。

コロナ禍がなければ、天皇皇后両陛下は、昨年5月に即位後初の海外訪問先として英国を訪ねる予定でした。この映像のように、エリザベス女王の後ろで迎えるフィリップ殿下にも会われたと思います。陛下はとても楽しみにされていたそうですから、寂しく、残念に思われたと思います。


――後ろに寄り添うお姿がとても印象的でしたが、フィリップ殿下というのは、日本の皇室とも縁深い方だったのですね。


【井上茂男(いのうえ・しげお)】
日本テレビ客員解説委員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)。