日テレNEWS
社会
2021年5月27日 22:06

「世界一“脱炭素”に熱い」元外交官の挑戦

「世界一“脱炭素”に熱い」元外交官の挑戦
(c)NNN

脱炭素を面白く。そんなポリシーを掲げるオピニオンメディア『EnergyShift(エナジーシフト)』の編集長・前田雄大さんは、元外務省官僚という異色の経歴の持ち主だ。将来を嘱望されたキャリア官僚が、ベンチャー企業で目指すものとは。

■「世界一脱炭素に熱い男」が語るエネルギーシフトの今

前田さんが現在勤めるのは、株式会afterFIT。再生可能エネルギー(以下、再エネ)を普及させるため、発電、保守運用、さらには新電力としての電力小売り事業までを一気通貫で手がける。それらにAIやドローンといった最新技術を組み合わせて“グリーンテック”の普及を目指すベンチャー企業だ。前田さんは、同社が運営するオピニオンメディア『EnergyShift』の発行人兼統括編集長を担っている。

「対象読者は、もちろん全員です。みんなに脱炭素に興味をもってもらい、日本でムーブメントが起こせたらと思っています。その上で、これからの社会の中心となっていく30代、40代の方々には特に興味を持ってほしい。また、企業の経営者や事業担当者に記事や動画を見てもらい、脱炭素に関する世界の最新動向をロジカルに伝えることで、事業展開の糧にしてもらえればと思っています」

スピーディーに情報を届けるため『エナシフTV』というYouTubeチャンネルも運営。前田さん自らが「世界一脱炭素に熱い男 ゆーだい」と称して出演。「人前で話すことは嫌いじゃないので、楽しくやっています」と笑う。

最近ではYouTubeをきっかけに、出版社が運営するメディアにも記事を寄稿するようになった前田さん。

「大切にしているのは、脱炭素や再エネを『自分ごと』として捉えてもらうこと。そのためにEV(電気自動車)をはじめ、身近なテーマも積極的に取り上げています。今後もあらゆるチャンネルを通じて情報を発信し、日本の産業界の意識を変えたいです。今はあまりにも後手になっている。時代を先読みして、『自分たちが世界をリードするんだ』くらいの気概を持って事業に取り組む企業を少しでも増やしたいと思っています」

■順風満帆のキャリアを捨ててでも叶えたかった夢

背景には、外務省時代から感じてきた強烈な危機感がある。再エネはかつて、環境保全の一環として語られることがほとんどだったという。しかし、技術の進歩によって自然エネルギーの発電コストが低減し、2010年代の半ば以降は化石燃料による発電のコストと同程度まで下がる。2017年、フランスとイギリスが、2040年までにガソリン車・ディーゼル車の販売を禁止にしてEVに切り替える方針を発表したのは象徴的な出来事だったと前田さんは指摘する。

「気候変動に対する危機感と経済的な合理性が結びついて、世界各国がオセロをひっくり返すように一気に再エネの導入へと舵を切りはじめました」

これに伴い、再エネによって生み出された電気をためる「蓄電池」や、電力を効率的に利用するための「パワー半導体」など、「グリーンテック」分野での覇権争いが激化していく。

「ところが、日本は完全に出遅れてしまった。他国に比べて再エネのコストが高かったことも原因のひとつでしょう。産業界も再エネというと、環境規制だと思って尻込みしてしまいがちでした。けれどそれは全くの勘違い。再エネは、経済の問題なんです。今後、グリーンテックの領域での技術革新は、各国のGDPを左右するくらい重要になっていくはずです。にもかかわらず、それに本気で取り組もうという民間のプレイヤーが、当時はほとんどいませんでした」

そこで前田さんは外務省を飛び出し、自ら「民間のプレイヤー」となることを決める。このキャリアチェンジを、驚きをもって受け止める同僚は少なくなかったという。

「僕にとっては、そもそも外務省で働くことも、この国をもっと良くするための手段でしかなかったんです。民間で働くことが『国益』に叶うなら、僕は迷わずそちらを選びます」

この国をもっと良くしたい。そう口でいうのは簡単かもしれない。けれど、それを行動に移せる人は、決して多くはない。何が前田さんを突き動かすのだろう。

「19歳のときにアメリカンフットボールのU19日本代表に選ばれたことが、きっかけなのかもしれません。フィールドに立って『君が代』を耳にした瞬間に、『自分は日本人なんだ』ということを強烈に自覚したんです。社会を構成する単位としての『日本』を意識するようになったのは、あれからだと思います。

就職前に大病を患ったことも、契機となりました。命を落とすかもしれない大手術の前日に、自分をここまで育ててくれた社会に全く恩返しできていないことに気づいたんです。もし助かったら、これからは自分のためじゃなくて、社会や人のために生きようと決めました。そういう風に生きられたら、きっと死ぬときにも『自分はやり切ったぞ』と胸を張れると思ったんです。誰もが笑っていられる社会をつくること。あの日から今日まで変わらない、僕の行動原理です」

■日本がエネルギー輸出国になるには、今が唯一のチャンス

これからグリーンテックの分野で、日本が世界と渡り歩くためには、何が必要なのだろうか。

「まずは団結することです。もはや一社だけでは、グローバルな競争で勝ち目はありません。ほかの業界も巻き込みながら、オール日本でシェアを取るべきです。日本経済全体に、まだ体力の残されている今なら、それができる。あと5年くらいが勝負だと思います。僕のこれからの役目のひとつは、その旗振り役になることです」

同時に、前田さん自身もafterFITで新たな事業を生み出していきたいという。

「まずは地方で、地産地消で再エネを循環させるモデルを作りたいですね。デジタル技術と組み合わせれば、過疎化などの問題を解決する糸口にもなるはずです。

もうひとつ、外務省時代からずっと挑戦したかったのが『洋上風力発電』の事業化です。日本は平野は少ないけれど、海はいくらでもある。実現すれば、海がそのまま油田になるようなものです。これまでにない規模で再エネを利活用できるようになります。その上で蓄電池などの開発も進めていけば、日本がエネルギー輸出国になれるかもしれない。海外にエネルギーを依存しないようになれば、他の産業の競争力もさらに高まるはず。そんな未来を現実のものにするために、これからも走り続けていきたいですね」


   ◇

この記事は、日テレのキャンペーン「Good For the Planet」の一環で取材しました。

■「Good For the Planet」とは
SDGsの17項目を中心に、「地球にいいこと」を発見・発信していく日本テレビのキャンペーンです。
今年のテーマは「#今からスイッチ」。
地上波放送では2021年5月31日から6月6日、日テレ系の40番組以上が参加する予定です。
これにあわせて、日本テレビ報道局は様々な「地球にいいこと」や実践者を取材し、6月末まで記事を発信していきます。