iPS細胞で拡張型心筋症の治療 秋にも
慶応大学の福田恵一教授は1日、iPS細胞を使った拡張型心筋症の治療に向けた臨床研究について、今年の秋にも1人目となる患者に行うと述べました。あわせて3人に行い、安全性と効果を調べます。
慶応大学の福田恵一教授らの研究は、iPS細胞から作った心筋細胞およそ5000万個を1000個ずつ「心筋球」と呼ばれる小さな組織にしてから専用の注射針で心筋に注入するものです。移植した心筋球により、心臓の収縮力を生み出したり、新たな血管を形成するなどして、患者の低下した心機能を回復する効果が期待されています。
1日の会見で福田教授は、拡張型心筋症の患者への慶応大学での臨床研究を今年秋に1人目を行い、あわせて3人に行いまずは、安全性と効果を確認することを明らかにしました。また、福田教授自身が社長を務める「Heartseed」でも同じiPS細胞を使った方法で、虚血性心疾患の患者に対し、企業治験を行う予定だということです。
さらに、iPS細胞由来の心筋球を用いた再生医療に関してデンマークを本拠とするヘルスケア企業、「ノボノルディスク」と全世界での技術提携、ライセンス契約を結んだことも発表されました。この提携で、およそ650億円の一時金などが「Heartseed」社に支払われ、共同開発のための資金として使われます。
こうした海外の会社との提携、契約について、福田教授は、「多くの人の命を救うためにはそのぐらいの投資が必要。心不全というこれまでだれも治すことができなかった病気を治すことができるようになるのではないかと考える。そのためのもの」「様々な研究を行い、特許化をしてきた。せっかく素晴らしい研究をしても、それを医療という形にまで到達するのは極めて難しい。それが『死の谷』といわれるもの。開発できればいいんだけどと研究するが、多くの人の力が必要。その一つが企業連携を作り上げて安定的な資本を取り入れて、薬事承認に至るまでのステップを乗り越えていく」「多くのアカデミアの人々、医薬品開発を目指す人へ勇気を与えたい」と述べました。