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ミックスルーツのこと、理解してますか?

2021年6月11日 19:41
ミックスルーツのこと、理解してますか?

「ミックスルーツ」という言葉を知っているだろうか。これは多様な国や文化にルーツを持つ人々を示す表現だ。ミックスルーツの人々と共に生きる現代社会において、今ある課題とは何なのか、様々な議論を通して考えていきたい。

■新たに使われ始めた「ミックスルーツ」とは?

厚生労働省の人口動態調査によると、父か母のどちらかが外国籍という新生児は、日本の出生数全体の2%ほど(2018年データ)。いまや生まれてくる子供のうち、だいたい50人に1人という計算になる。

そのような中で、新たに「ミックスルーツ」というキーワードが使われ始めている。ミックスルーツとは「複数の国や文化にルーツを持つ人たち」のこと。これまで「ハーフ」や「ダブル」などと呼ばれてきた人たちを示す言葉だ。

社会の多様化が進み、多様なルーツを持つ人と接する機会がますます増えていく中で、新たに感覚をアップデートした方がいい問題もある。例えば、ミックスルーツの人々に何気なく語りかける言葉が、知らないうちに相手を傷つけてしまっているケースもあるという。

■当事者だからこそ気になる「日本語、上手ですね!」

日常会話の中で、ミックスルーツの人に何気なく言ってしまうひと言が「日本語、上手ですね!」だ。これひとつ取っても、当事者だからこそ感じてしまうモヤモヤ感があるという。母が日本人で、父がアメリカ人のタレント・俳優の副島淳さんは打ち明ける。

「生まれも育ちも日本で、ずっと日本語しか話したことがありませんでした。でも、これまで何千何万回と、日本語が上手ですね! と言われ続けてきました。だから高校ぐらいまでは疎外感があり、この見た目で日本語を話しちゃダメなのかな? じゃあ日本人っていったい何だろうと考えていた時期もありましたね」

ただ副島さんの場合は、大人になって交友関係が広がるにつれ余裕ができて「日本語、上手ですね!」と聞かれたときに、相手のステレオタイプに揺さぶりをかける目的で、「なんでだと思います?」と切り返せるまでになったそうだ。

日本テレビ「news zero」でデスクを務める松永新己さんも「一見すると日本人に見られないことが多いのですが、しゃべれば日本語だし、さらに兵庫出身なので関西弁。“キャラづけでは?”と思われてしまうのは悲しいですが、同時にちょっと“美味しい”と思う自分もいたりします」と複雑な心情を吐露する。

家庭では日本語とドイツ語の両方を使って育ち、22年前にドイツから来日した作家・コラムニストのサンドラ・ヘフェリンさんは、日常のやりとりのなかで、これまで何度もモヤモヤ感を覚えるシーンがあったという。

「日本企業へ面接に行ったときに、面接官にゆっくりとした日本語で話しかけられたことがあります。あとは、駅員さんに日本語で本屋の出口を尋ねたのに、わざわざ英語で『ブックストア?ストレート!アップ!』と返されたこともありました」

こういったやり取りは、相手には特に悪気もなく、むしろ親切心や気遣いの表れとみることもできる。だからミックスルーツの人たちも、完全にシャットアウトするわけにもいかず、当惑してしまうのだ。しかし、良かれと思った発言であっても、受け手側が傷つくことに変わりはない。言葉をうけとる側にはどう解釈されるのか、そのギャップを気に留めておきたい。

また、日本では褒め言葉だと思っていることでも、国や文化の違いによっては、まったく違う意味に解釈されるケースもあるそうだ。

サンドラさんは「日本では、顔が小さい女性がいると“小顔でお人形さんみたいでかわいいですね”と言います。ですがドイツでは、顔が小さいというのは脳みそが入っていないことを意味し、ぜんぜん褒め言葉になっていないのです」と説明する。


■「外国人」をカテゴライズしていませんか?

ミックスルーツの人たちが感じる“モヤモヤ”は、外見や外国人という“情報”だけで見て、一人ひとりを違う考えを持つ“個人”として尊重しないことに大きな原因があるようだ。実際、ステレオタイプなイメージや考え方が、判断基準として働いてしまっていると思われることも多い。俳優としても活躍する副島さんは、仕事の場で困惑することがあるという。

「映画やドラマに出演するときは、だいたい外国人の出稼ぎ労働者役のオファーが多いですね。すごく困るのは、片言の日本語で話してください、と言われるときです。日頃から普通に日本語を話していますし、逆に英語も上手に話せないので」

日本社会では、「外国人歌手」や「女流作家」など、“属性”でくくるフレーズを付けて、カテゴライズされる傾向があるようだ。これも当事者からすると、普通に「歌手」や「作家」として紹介されたい場合が多いという。

大切なのは、誰かを属性やカテゴリーで分かった気になるよりも、個人としっかり向き合い、その人自身を理解しようとすること。

まずは、そこからアップデートするのが必要なのかもしれない。


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この記事は、2021年2月26日に配信された「Update the world #2 ミックスルーツ~『日本語、上手ですね」をアップデート~』をもとに制作しました。

■「Update the world」とは

日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。

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