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先生がいなくなる

2023年8月5日 16:59
先生がいなくなる
「もう限界」。今、SNSには学校の先生たちの悲鳴があふれている。やりがいを上回るブラックな労働環境。長時間労働の末、命を落とした人も…。背景には、どれだけ働いても残業代を支払わないとする法律がある。先生を志す人は減り続けるなか、働き方改革は待ったなし。

 ◇◇◇

いま、先生たちの悲鳴に耳を傾けなければ…。

「まさにいま、長時間労働で悩んでいる、苦しんでいる若い人たちに、もう倒れてほしくないです」

先生はもう、いなくなる。今年1月、福岡市立玄洋中学校。採用1年目で1年生のクラス担任をしている稗田千紗先生(23)。

生徒
「おはようございます」

稗田先生
「はい。おはようございます」

稗田先生の1日。午前中は、1年生の3つのクラスで50分ずつ理科の授業を担当。授業の空き時間には、生徒とやりとりしているノートにコメントを書き込みます。

稗田先生
「(午後)4時まで動きっぱなしという日も少なくはないです」

昼休みも、教室で。

稗田先生
「食べ物か。食べ物なんでも好き」

生徒「なんでも好きってすごくない?」

稗田先生
「本当に?」

放課後は、女子ソフトテニス部を指導しています。

稗田先生
「もうちょいこっちに出して」

午後6時。部活動が終了。

生徒
「気をつけ、礼。ありがとうございました。失礼します。さようなら」

その後、欠席した生徒の自宅に電話。

稗田先生
「大丈夫ですか?体調の方は」

次の日の授業の準備も欠かしません。この日、学校を出たのは定時から2時間半近く過ぎた午後7時すぎ。

稗田先生
「体力的に少しきついこともありますけど、楽しいことが多いので頑張れてます」

公立中学の先生が行う1か月の時間外労働は、平均114時間。過労死ラインの倍、160時間以上に及ぶ先生もいました。

     ◇

先生の働き方に、一石を投じた人がいます。大阪の府立高校に勤務する西本武史先生(35)。

西本先生
「やりがいもあるし、本当にすてきな仕事だと思うんですけれど、今の状況では、残念ながら『お勧め』はできないですね」

「適応障害」を2017年に発症、4か月以上、休職を余儀なくされました。1か月の時間外労働は、最大で155時間に達しました。

「もう限界です。精神も崩壊寸前です。」「このままでは死んでしまう」と校長に何度もSOSを出していましたが、改善策が講じられることはありませんでした。その後、西本先生は大阪府を相手取り損害賠償を求める訴えを起こしました。裁判所は、校長の注意義務違反が認められるとして大阪府に約230万円の支払いを命じました。

西本先生
「まさに長時間労働で悩んでいる、苦しんでいる若い人たちに、もう倒れてほしくないです。だからこそ行政に動いてほしい」

     ◇

妻・安徳晴美さん
「いい人でした。私、この笑顔大好きでした」

激務の末に、命を落とした先生もいます。福岡の県立高校で英語を教えていた、安徳誠治さん。

妻・晴美さん
「『なんであんなに激しい働き方をさせてしまったのかな?』と思って」

41歳のときに脳出血で倒れ、15年間1度も意識が戻らないまま、2017年に息を引き取りました。

妻・晴美さん
「(誠治さんは)『やりたくない、したくない。それをできない、自信がないので、ということで管理職に言ったけど、全然聞き入れてもらえないんだよね』」

倒れる直前は、月125時間を超える時間外労働。公務災害と認められましたが、夫、父が帰ってくることはありません。それでも、息子・佑(たすく)さんは、母や教え子たちから聞いた父の姿に憧れ、教員免許を取得しました。

息子・佑さん
「お父さんみたいなスーパーヒーローみたいなそんな存在は、かっこいいなと思ったので」

しかし、まだ教員採用試験を受けられずにいました。

息子・佑さん
「気持ちでは(教師を)したい反面、自分が倒れてしまうのかなっていう…、不安なんですかね」

2021年度に行われた教員採用試験の倍率は、過去最低となりました。

名古屋大学大学院・内田良教授
「教員が単に忙しいというだけでも重大問題ですけれども、実は授業の準備ができていない。子どもに向き合えていないという意味では、本当に日本全体の危機だと考えないといけないかなと思います」

先生の、子どもの未来は…。

2023年3月19日放送 NNNドキュメント’23『先生がいなくなる』をダイジェスト版にしました。