宣言下で慰霊の日 沖縄の戦争資料館の苦境
6月23日は76年前の沖縄戦で、旧日本軍の組織的戦闘が終わったとされる「沖縄慰霊の日」です。その沖縄で、戦争の記憶を未来に語り継ぐための資料館が、いま危機に立たされています。
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■“ひめゆり”の資料館 ツイッターで訴えた「経営危機」
沖縄戦最大の激戦地だった本島南部にある「ひめゆり平和祈念資料館」。看護要員などとして戦場に動員され、犠牲になった「ひめゆり学徒隊」の女子生徒らをしのび、32年前に建てられました。
その資料館が今月、ツイッターで「当館は経営上の危機に直面しています」とメッセージを発信しました。何があったのでしょうか。
ひめゆり平和祈念資料館・普天間朝佳館長「入館者が86%減少。学校・団体も前年の1割しかなかった」
この資料館には、かつてその地で起きた戦争の悲劇を学ぼうと例年多くの客が訪れ、その数は2019年の1年間でおよそ50万人に。
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■新型コロナで入館料激減 リニューアルも…集客できず
しかし新型コロナの流行により度々休館することも。さらに、運営を支える入館料収入が激減。民間で公的な支援もなく窮地に立たされたのです。実はこの資料館、今年4月に展示内容をリニューアルしたばかりでした。
普天間朝佳館長「周りに戦争体験者がいない世代になっている。その世代にもしっかり伝わるような展示に変えていこうと」
戦争を知らない世代へ、イラストを使うことで当時の女子生徒らの姿を等身大で感じ取れるように工夫したといいます。復活に向けて動き出した資料館。
しかし、その翌月の5月。
沖縄県・玉城知事「(沖縄県への)来訪について、緊急事態措置期間は自粛」
沖縄の感染者は増え続け、緊急事態宣言が解除されないまま、6月23日の慰霊の日を迎えることに。
普天間朝佳館長「リニューアルしたのに修学旅行・学校もいらっしゃらないし、一般のお客様も本当にだいぶ少なくなってしまっている」
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■撃沈…子供たちも犠牲に 悲劇伝える記念館も「8割減」
一方、那覇市にある対馬丸記念館も、入館者がコロナ前から8割近くも落ち込んでいました。この記念館は1944年8月、アメリカ軍の魚雷攻撃で沈没し、775人の子供たちも犠牲となった学童疎開船「対馬丸」の悲劇を伝えようと遺族らの手で建てられたものです。
対馬丸記念館・語り部 外間邦子常務理事「この記念館を永遠に存続して対馬丸の子供たちの声なき声を伝えていきたい」
語り部の外間さんも姉2人を失いました。「記念館をなくしてはならない」その思いをメディアで発信すると、運営資金をサポートする協力会員が増えたといいます。
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■2週間で3000万円超の善意も…支援の継続が課題に
支援の動きは、ひめゆり平和祈念資料館でも。危機を訴えるあのツイッターが拡散されわずか2週間で3200万円を超える寄付が寄せられたのです。
普天間朝佳館長「資料館を大事に思ってくださる皆さんの善意の思いがすごくびっくり、驚きました」
あれから76年、次の世代へ戦争を語り継ぐ資料館には、継続的な支援が求められています。