【解説】戸籍に「読み仮名」記載へ “光宙=ピカチュウ”は認められる? 通知が来たら…変更も可能
戸籍にこれまではなかった「読み仮名」をつけることを定めた法律が参院本会議で可決、成立しました。
●“キラキラネーム”に規定
●10通りの読み方も
●読み仮名の通知がきたら
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
戸籍の氏名に「読み仮名」をつける、改正戸籍法などが2日の参院本会議で可決、成立しました。来年度にも施行されます。
それとあわせて、いわゆる「キラキラネーム」などの本来と異なる漢字の読み方には「氏名に用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」といった規定が設けられます。
どのようなものが認められる、また認められない可能性があるのでしょうか。
●認められる可能性
(1)漢字と外国語の意味が関連
(2)漢字の意味から連想
●認められない可能性
(1)漢字と逆の意味
(2)漢字との関連性がない
具体的な例を見ていきます。
「騎士」と書いて「ナイト」は、漢字と外国語の意味が関連づけられるとして認められる可能性が高いです。一方、「太郎」と書いて「マイケル」は、漢字との関連性がないため、認められない見通しです。
ほかにも、認められない可能性がある例とその理由を確認します。
「高」と書いて「ヒクシ」→漢字の意味とは反対
「太郎」と書いて「ジロウ」→読み違いかどうか判然としない
「佐藤」と書いて「スズキ」→別人と間違えうる
「光宙」と書いて「ピカチュウ」→人の名前としては違和感のあるキャラクターの名前にあたる可能性
今後は、こうした名前は認められない可能性がありますが、すでにこうした名前を使っている人がもしいれば、そのまま使えるということです。
去年、明治安田生命が発表した“赤ちゃんの名前ランキング”では、上位の名前でも読み仮名がないと読むのが難しいものがあります。
明治安田生命「生まれ年別の名前調査」(2022年)で、男の子の4位だった「陽翔」は把握しているだけで、「ハルト」「ヒナト」「ヒナタ」「ヒロト」「アキト」「ハルヒ」「ヒュウガ」「ヒビト」「ヤマト」「ヒカル」の10通りの読み方があるといいます。現在のルールでは読み方は自由なので、これだけあるわけです。
女の子で1位の「陽葵」でも、「ヒマリ」「ハルキ」「ヒナタ」「ヒナ」「ヒヨリ」の5通りほどを把握しているということです。
現在の手続きでは、新生児の名前を考えたら、役所に出生届を出します。その出生届には「よみかた」との欄もあり、氏名と読み仮名を書くことが求められます。一方で、その出生届の注釈には「よみかたは、戸籍には記載されません。住民票の処理上必要ですから書いてください」とのただし書きがあります。
読み仮名は住民票には記載されるのに、戸籍には反映されてこなかったわけです。
今後は、新生児の名前を“初めて”戸籍に載せる際は、出生届の読み仮名が自動的に反映されるようになります。そのほか、すでに戸籍に記載されている人たちについては、実際に戸籍に読み仮名をふる作業は自治体がやることになります。ただ、その前に住民基本台帳をもとに、すでに役所が把握している読み仮名が合っているかどうか、国民全員に確認する通知が来ることになります。
通知に記載された読み仮名が間違っているなど変更したい場合は、今回可決された法律の施行日から1年以内に本籍地の市区町村に届け出をすれば変更ができます。届け出がなければ、通知の読み仮名がそのまま記載されることになります。
また、あえて「別の読み仮名に変える」ことも可能です。施行から1年以内に届け出をすれば、1回は変更が可能だということです。ただ、一般に認められる範囲である必要があります。
ただ、注意点もあります。
戸籍上の読み仮名が変わると、今までに作成したパスポートやクレジットカード、銀行口座の名義など…、全て自分でそろえる必要が出てきます。また、名字の読み仮名を変える場合は、戸籍に入っている家族全員で変える必要があります。
「行政手続きのデジタル化」を進める中で、戸籍に読み仮名を記載することが作業の効率化につながるからということです。
3年前、10万円の新型コロナウイルスの給付金では、戸籍に読み仮名がないこともあり、銀行口座との結びつけに手間取り給付が遅れる事態にもなったといいます。
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名前はまさに、その人そのものです。とにかく正確に読み仮名が記載されるよう、関係する役所には準備を整えてもらいたいです。
(2023年6月5日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)