“黒い雨訴訟”控訴審判決 あす言い渡し
原爆投下後に、放射性物質を含んだ「黒い雨」を浴びたにもかかわらず、国の援護を受けられないのは違法として、住民が起こした集団訴訟の控訴審の判決が、14日、言い渡されます。
原告団長・高野正明さん「一審と同様に全面勝訴を私たちは願っている」
今月上旬、原告の住民等が、広島高裁での控訴審判決を前に集会を開き、決意を新たにしました。訴えを起こしているのは広島市や安芸太田町に住む76歳から97歳までの84人です。
「黒い雨」を浴びて健康が損なわれたとして、「被爆者健康手帳」の交付を求めています。
これに対して、被告の国は「黒い雨」が降った区域を南北29キロ、東西15キロの範囲と定義。このうち爆心地から北西にかけてを「大雨地域」。他を「小雨地域」としていますが、援護の対象は「大雨地域」だけとしています。
国に援護を求める原告は、2015年に提訴しましたが、既に14人が死亡しています。
去年7月、一審の広島地裁は、原告全員を「被爆者」と認める判決を言い渡しました。「黒い雨」と「健康被害」との関連を認める判決でした。しかし。
加藤勝信厚労相(当時)「十分な科学的知見に基づいたとは言えない判決内容との結論に至った」
国は、「黒い雨」が健康被害をもたらす可能性を示す科学的根拠が十分ではないと反論。この意向を受け、県と広島市は一審判決の取り消しを求めて控訴しました。
争点となっているのは、「援護対象の線引き」です。国は一審の敗訴後、「黒い雨」による健康被害を改めて検証する「検討会」を設置しました。「援護対象地域」の拡大を視野に、放射線医療の専門家らが協議しています。
しかし被爆当時の気象データが乏しく、今後の研究の精度を疑問視する声が相次ぐなどしています。被爆から76年。被爆者はこの1年間で9000人余り減少し、平均年齢は84歳に近づくなど、原告に残された時間は長くありません。
高野正明さん「命がある限りは闘うと、真実を伝えていくという気迫はあるが、肉体的にはむしばんでいるので早い解決を強く要望したい」
1日でも早く「援護対象地域」を広げ、「被爆者」と認めてほしい。その原告の願いは届くのか、控訴審の判決言い渡しは、14日午後3時からです。