イチケイの見習い裁判官 密着500日
人を裁く仕事。イチケイの裁判官に密着すると…
「開けていいですか?愛妻弁当ですよ」「普通の人のつもりなんだけどね。ふふふ」
見えてきたのは、普通のパパの顔と知られざる裁判官の日常でした。光武敬志判事補。任官4年目の見習い裁判官です。
ディレクター「それなんですか?」
光武さん「これ弁当。裁判員の方の弁当ですね。昼休み入るとこうやって持って行くことが、まあ若手の仕事」
東京大学を卒業後、難関の司法試験を突破し、28歳の時、裁判官になりました。
広島地方裁判所に勤める、光武さんは1歳の息子を持つ、新米パパです。
妻「ずっと何年も弁護士って言っていたので、もう(弁護士)事務所も決まっていたので…」
光武さん「うん」
妻「あとは裁判官という職業が、どんなものかも分からなかったし、
一般人からすると何をするんだろう?『トン!トン!有罪!』しか分かんないじゃない。ははは」
光武さん「あのトントンはないからね」
光武さんが所属する刑事第1部、“イチケイ”は凶悪事件を扱う裁判員裁判などを担当しています。
光武さん「裁判長の冨田裁判長と右陪席の水越さん。で、私が左陪席でここにいます」
裁判は、裁判官が1人で担当する“単独”か、3人1組で担当する“合議体”で行われます。
合議体では、中央に座るベテランを“裁判長”。右側に座る中堅を“右陪席”。左側に座る若手を“左陪席”と呼びます。この日、裁判員裁判の初公判が、始まろうとしていました。裁判員が評議する際、司会進行などを行うのが、光武さんの役割です。
光武さん「被告人がどういうことをしたかというのと、何で、こういうことをしちゃったのかという、そういった大きな2つの柱があって、それをしっかりと理解してもらった上で、裁判員の方がしっかりと考えられるようにうまく評議を進行できるようにというのを一番、意識してやっています」
裁判を前にロッカーから取り出したのは“黒い法服”。
ディレクター「なぜ(法服は)黒いのか?」
光武さん「何者にも染まらないために真っ黒だとよく言われていますね」
今回の裁判員裁判は、検察と弁護側それぞれの冒頭陳述や被告人質問など、3日間の日程で行われました。1週間後、判決の日。被告は、有罪となりました。光武さんは、人を裁く時、何を思うのか?
光武さん「判決が被告に響いているか、そうでないか、被告の様子をじっと見ている」
裁判長「お疲れさまでした。じゃあ気を付けてお帰りください」
3年ほどで転勤を繰り返す裁判官。光武さんは新たな任地、福岡地方裁判所へ異動が決まりました。
そして、新たな家族も。
妻「2人目です」
光武さん「また男の子が」
裁判官も“普通の人”。でも、人が人を、裁く重い仕事。光武さんは、今日も法廷に向かいます。
光武さん「そんな大それたことができるわけでもないのかもしれないけれど、自分が関与してる裁判に関わった人たちに1つでも良い影響が与えられるような判決を書きたいな」
2021年6月放送 NNNドキュメント’21『イチケイの見習い裁判官 密着500日…人を裁くシゴト』(広島テレビ制作)をリメイクしました。