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コロナ禍での不妊治療 影響は?意識調査

2021年7月16日 16:59
コロナ禍での不妊治療 影響は?意識調査

不妊治療で通院中の患者らに新型コロナウイルスの治療への影響について、去年11月~12月、東京の山王病院が京都、福岡の病院とアンケートを実施。その結果、回答者の56%が新型コロナの「影響はなかった」とする一方で、30%が「感染が心配で通院がしづらかった」ということです。 

■不妊治療は「不要不急」?半年で意識に変化も

このアンケートは、厚生労働科学特別研究事業の一環として行われたもので、去年11月~12月、東京・港区の山王病院と、福岡の高木病院、京都の田村秀子婦人科医院の3病院に不妊治療のために通院中の患者にWEBなどで実施。768人から回答を得たということです。

アンケートでは不妊治療のための通院について聞いたところ、「去年4月、不妊治療への通院は不要不急で控えた方がよいと思いましたか?」という問いに、「はい」と答えた人は20%でした。(いいえ=47%、どちらともいえない=32%、そのような議論は知らないし関心がない=1%)

しかし、新型コロナへの対応がとられ、理解も進んだとされるアンケート実施期間の去年11月~12月の時点で「不妊治療への通院は不要不急で、控えた方がよいと思いますか?」と聞いたところ、「はい」と答えた人は1%にまで減少したということです。(いいえ=81%、どちらともいえない=18%)

※去年4月1日、新型コロナの感染拡大で、日本生殖医学会は、「不妊治療の延期を選択肢として患者に提示することを推奨する」との見解を出しました。その後5月18日、「不妊治療の再開を考慮して下さい」等と変更されました。

■新型コロナ不妊治療にどう影響?

また、「新型コロナの不妊治療・妊娠への影響についてどう感じましたか?」という質問には、「非常に怖いので、治療を中断していた」が10%で、「怖いとは思うが、中断するつもりはない」が72%を占めました。(気をつけていれば大丈夫だと思う=16%、自分とは関係ない=0%、よくわからない=2%)

不妊治療は87%が継続、13%が中断し、継続した人に、理由を聞いたところ、79%が「年齢が心配」でした。コロナ禍での不妊治療への考え方についても聞いています。「子供を持つことはやめよう、やめたいと思った」は1%、「より子供がほしいと思った」は9%。「変化なし」が83%でした。(わからない=6%、その他=1%)

また、不妊治療の通院について聞いたところ、「感染が心配で通院がしづらかった」が30%。「勤務状態の変化により通院が容易になった」が11%。一方、「影響はなかった」が56%を占めました。(別の理由で影響がありました=3%)

■調査した医師は「適切な情報提供、通院支援等環境作りに取り組む」

このアンケートを行った、山王病院リプロダクション・婦人科内視鏡治療部門の堤治部門長は、アンケート結果について「去年4月コロナ禍にあって不妊治療は不要不急で控えるべきという提起がなされ、妊娠や妊活に対する不安も増大したことがアンケートから読み取れました。しかし、治療を延期することのデメリットの重さを感じ、適切な対処による予防などで対応できると判断された方が多かったと思います。その判断に主治医とのコミュニケーションが大きな役割を果たしたことに不妊治療専門医としてうれしく、誇らしく感じます」

「コロナ感染の社会への影響は大きく、まだまだ続くと思います。そんな中ですが、不妊治療への助成は今年1月から強化され治療件数の増加傾向も見られます。学会や主治医レベルで適切な情報提供はもちろん、社会的な通院支援やメンタル面のサポート等安心して治療を受けられる環境作りができるよう取り組んでまいります。コロナウイルスの感染症は妊娠中に悪化し胎児に影響を与えることが報告されています。妊娠中の接種で特に悪い副反応は見られておらず、妊活中でもワクチン接種は前向きに考えて下さい」とコメントしています。

写真:堤治リプロダクション・婦人科内視鏡治療部門長(山王病院提供)