熱海土石流から1か月「災害情報薄れ残念」
静岡県熱海市で発生した大規模な土石流災害からきょうで1か月です。県内で東京オリンピックの聖火リレーに参加した男性も、自宅が被災。今の思いを取材しました。
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雨が降る中、熱海市では、土石流の犠牲者への祈りがささげられました。
行方不明の状態が続いていた瀬下陽子さん(77)は、土石流発生からおよそ3週間後に死亡が確認されました。母親の帰りを待ち続けていた長男は─。
瀬下陽子さんの長男
「時間がとまっていたような感じでして、正直まだまだ心の整理がつかない状況ではあります。痛かったでしょうし、つらかった苦しかったでしょうし、そんな中でもよく頑張ってかえってきてくれたなと」
1か月前、熱海市伊豆山地区を襲った土石流は、次々と建物などを押し流し、街の姿は一変しました。熱海市によりますと、これまでに22人が死亡、5人が行方不明となっています。
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土石流から8日後には─。
「お弁当持ってきました」
「シャワー浴びちゃったから」
「そっかそっか、食べないと大変だからね。お茶も一緒に飲んでくださいね」
地元の人たちが、ボランティアに汗を流していました。そのひとり、石井裕隆さんは、自宅も被災していました。
石井裕隆さん(36)
「まるまる2階建ての建物だったんですけど、1階部分が全部埋まっているっていうような」
さらに、災害発生直後には、安否不明者リストに、一時氏名がのる事態になりました。
石井裕隆さん(36)
「(Q発災当時は何を?)市内の旅館に行っていました。聖火ランナーをやることになっておりましたので」
実は土石流の8日前、石井さんは東京オリンピックの聖火ランナーとして県内を走っていました。聖火リレーで使ったトーチを飾るため市内の旅館を訪れていた、まさにそのとき、土石流が発生したのです。
石井裕隆さん(36)
「妻から家が大変なことになってるよと電話を受けて、すぐ家に戻った」
妻、そして愛犬2匹は避難して無事でしたが、そこには変わり果てた自宅の姿がありました。
先週末、被災地では、災害ボランティアによる活動が本格化しました。通行止めになっていた国道の規制も解除され、少しずつ復旧が進んでいました。石井さんに案内され、進んでいくと─。
石井裕隆さん(36)
「ここが家の跡地です」
土台のみが残された自宅は、倒壊の恐れがあるため、被災直後に解体されたといいます。
石井裕隆さん(36)
「その区切られたところが、居間であったり、キッチンであったり、お風呂トイレっていうスペースになっていて」
元の間取りがかろうじてわかるだけの状態になっていました。
石井裕隆さん(36)
「道は普通なのに家はないっていうその現実に、ちょっと状況がのみこめていないっていうのが正直な気持ちです」
石井さんは、現在、知り合いから借りた仮住まいで暮らしています。
石井裕隆さん(36)
「聖火ランナーやらせてもらってたんで、オリンピックやるんであれば応援したいなって」
一方で、複雑な思いもありました。
石井裕隆さん(36)
「熱海の災害情報が少しずつ薄れてきてしまっているのは、非常に残念に思うところですね」
「朝起きてベッドから降りて、歯磨いて仕事に行って、それが全部 急に引っ剥がされた形で土砂にもっていかれちゃってるんで」
被災から1か月がたち、日常が奪われた悲しみをあらためて感じるといいます。
石井裕隆さん(36)
「当たり前が当たり前に過ごせている日々に戻れたらいいな、と思います」
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被災地では、残る行方不明者の捜索が、3日も続けられていました。