事例から楽しむ、地球にやさしいオシャレ
Update the world #7のテーマ「地球にやさしいファッション」を日常的に取り入れるためには、どのような方法があるのだろうか。番組では、様々な切り口で環境負荷を軽減する取り組みを紹介した。
■捨てずに新しい価値を付与「アップサイクル」
使わなくなったものを捨てずに新しいものに生まれ変わらせて活用する「アップサイクル」。様々な製品が作られているが、番組では一風変わった特徴的なものを紹介した。
1つ目は、首都高の横断道を活用したバッグ。工事などを知らせる高速道路の横断幕は、年間800枚ほど使用されているという。ドライバーに注意を促す横断幕ならではの、大きな日本語表記と頑丈な生地が特徴のバッグ。実際に使われた横断幕がアップサイクルされているため、同じものは2つとなく、1点モノのデザインも好評だという。
お笑い芸人・オズワルドの伊藤俊介さんは、「原宿とかで販売したら、外国人観光客に飛ぶように売れそうですね」とコメント。そのデザイン性の高さを評価する。
続いて紹介されたのは、メカジキのツノ(正確には「吻(ふん)」と呼ばれる部分)を活用したデニム。オーガニックコットンにツノの粉末を混ぜて特製の糸を制作。全体の35%がツノの粉末なのでコットンの削減につながっている。作っているのは、メカジキの水揚げ日本一の宮城県気仙沼市にあるデニムメーカー。大量に捨てられているメカジキのツノの存在を知り、何かに活用できないかと目をつけて製品化された。
これまでは、場合によってはコストをかけてゴミとして捨てられていたものが、販売できる商品に生まれ変わる。アップサイクルは、環境と経済を両立できる可能性を秘めている。
■動物性の代わりを活用「ヴィーガン」
続いては「ヴィーガン」にまつわる製品が紹介された。ヴィーガンと聞くと、動物性のものを食べない食生活のイメージを持つ方が多いかもしれないが、ファッションの世界にも広がりつつある考え方だ。
例えば、皮革会社ニチモウは、リンゴの芯や皮で作ったレザーを販売する。見た目は動物性の材料で作られたレザーと同じ様だが、廃棄されるリンゴを粉末状に加工して「水性ポリウレタン樹脂」で固めるなどして、レザー調に仕上げられている。動物に優しいだけでなく、軽くて摩擦に強いなど実用性にも優れているのが特徴だ。
また、カポックノットというブランドは、羽毛の代わりに木の実を使ったダウンジャケットを作っている。ダウンジャケット一着には水鳥30匹分の羽根が使われるといわれており、その羽根の収集方法は動物に優しくないと指摘されている。カポックという木からとれるコットンを活用することで、水鳥を一切使わない。また、湿気を吸って暖かくなる繊維の性質をいかして、少ない量でも暖かくて軽いダウンが作れるという。
ヴィーガンの衣服は、生物多様性の保護という観点、動物の生育に関わる環境負荷を減らすという観点でサステナブルなものといえる。
■素材自体を作り変える「ケミカルリサイクル」
最後に紹介されたのは、従来難しいと言われていた、ポリエステルの服を原料まで分解して、新たなポリエステルに作り変える仕組みについて。BRINGというプロジェクトで、「無印良品」や「ZARA」など130の企業が参加し、店頭にある回収箱に集まったTシャツなどから、もう一度洋服が作られる。
石油を使って年間5200万トン生産されているポリエステルを再生させることで、採掘する石油の削減を目指す。また、回収された洋服のポリエステル以外の原料も可能な限り資源に再生しているという。さらに、再生されて作られる服は、性別にかかわらず着られるデザインとなっている。以前、性別を分けて製造することで売れ残り在庫が増えたことがあり、余剰在庫を減らすために全ての性別向けに作っているという。
よれよれになるまで着た服でも、原料から蘇らせる技術として、注目されている。
■大切なのは「安いから、新しく買えばいいや」の認識をアップデートすること
環境とファッション。一見するとその繋がりは分かりづらいかもしれないが、様々な面で繋がっている。まずは、興味があることから一つずつ自分ごと化してくことが大切なのかもしれない。
環境負荷を考慮した取り組みが増える中、一般社団法人「unisteps」共同代表の鎌田安里紗さんは「消費のスピードを変える」ことを訴える。
「地球にやさしいオシャレということで、最近少しずつエコのアイテムも店頭に並ぶようになってきました。そういう商品をできるだけ選ぶのは大事なことですが、気をつけた方がいいと思うこともあります。それは、エコだったらいっぱい買っていいと思ってしまうこと。消費のスピードが変わらなかったら、結局環境への負担がかかってしまうので、長く着るとか、人に渡すとか、一つのものを長く使うことを意識しつつ、買うときは地球にやさしいものを選択するのが大事なのかなと、あらためて思いました」
最後に、番組コンダクターの辻愛沙子さんは、選択肢を持って楽しむことを強調する。
「私も服が大好きで、毎回、新しいコレクションがどうなんだろうとか思ってしまいますが、それ自体はきっと悪いことじゃなくて。例えば、レンタルという選択肢もあれば、買ったものを次に誰かに譲るという選択肢や、染め直してまた楽しめるみたいな選択肢、買う時にエシカルなものかどうかを判断するという選択肢もある。できることの中から、今回はどれをしようと楽しみを見つけるのが大事と思いました」
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この記事は、2021年7月30日に配信された「Update the world #7 地球にやさしいオシャレ」をもとに制作しました。
■「Update the world」とは日本テレビ「news zero」が取り組むオンライン配信番組。SDGsを羅針盤に、社会の価値観をアップデートするキッカケを、みなさんとともに考えていきます。
次回のテーマは「地球はどこまで暑くなるの?」
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