接種証明で特典 東京都が“アプリ”導入
全国的に新型コロナウイルスの感染が落ち着いてきている中、ワクチンの接種証明を活用しようという動きが加速化しています。
11月1日、東京都の新規感染者はついに1ケタの9人となりました。
1日の感染者が1ケタになったのは、去年5月31日以来、およそ1年5か月ぶりのことです。感染者のピークは8月13日の5908人なので、単純計算で「600分の1以下」になりました。
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■「TOKYOワクションアプリ」特典は?
こうした中、1日に東京都がリリースしたのが、「TOKYOワクションアプリ」です。ワクチン接種済みの人が、スマートフォンでこれに登録すると、協賛する施設や店などでさまざまな特典が受けられる、というものです。
今は「東京都民限定」ですが、年内には東京で働く人や買い物に来る人など「東京都外の人」にも拡大していく予定で準備しているということです。
具体的に、どのような特典があるのでしょうか?例えば、東京・葛飾区のもんじゃ焼き・お好み焼きの店「嵯峨野」では──。
店長
「これ提示していただけると、ドリンクが1杯サービスという形でやっていますので」
ソフトドリンク(Sサイズ)が1杯無料になります。
東京都内の飲食店「PRONTO」でも、今月15日以降、夜のドリンク1杯が無料になるクーポンの抽選申し込みを始めます(一部店舗を除く)。
広報担当者
「ワクションアプリを利用する方が増えれば、お客さまも従業員も安心して飲食できる環境になっていくのではないかなと期待」
ほかにも、東京・江東区の複合施設「有明ガーデン」では、今月15日から平日1日1回、先着100人が、「飲食店どこでもドリンク1杯無料」になるということです。
また、「イオングループ」、「豊洲市場協会」、「資生堂」など、すでに110の企業や店が協賛を決めているということです(特典については検討中)。
■「TOKYOワクションアプリ」登録方法は?
「ワクションアプリ」を登録するには、まず、「LINE」が使えるスマートフォンが必要です。最初に「LINE」を立ち上げて、「TOKYOワクション」の公式アカウントを検索し、「友だち登録」してください。
次に必要になるのは、運転免許証や健康保険証などの「本人確認書類」、そしてワクチン接種を完了したあとに自治体などからもらった「接種記録」です。
画面上の「登録する」というボタンを押して、上記の書類を写真に撮ってアップロードし、確認作業が終わると、「登録済み」の画面が表示され、登録完了となります。
この画面を見せることで、さまざまな特典が受けられるようになります。
番組スタッフが実際にやってみたところ、LINEやスマートフォンの操作に慣れている人なら、写真の送信まで15分もあればできるという印象でした。
ただ、その後、事務局が写真を確認する作業があるため、すぐに登録済みになるわけではなく、写真を送ってから原則として「24時間以内」にLINEから通知が来て、初めて登録済みとなります。
しかし、実は現在、最大27人が“人力”で、しかも目視で確認しているということなので、今後、送信が集中した場合は時間がかかる可能性があります。
東京都としては、協賛する飲食店に「紙の接種記録」や「紙の陰性証明」でも同じように特典を提供するよう依頼しているということですが、アプリでしか受けられない特典もあり、注意が必要です。
■“デジタル証明”先行の群馬では「条件でなくインセンティブ」
同じようなデジタル接種証明は、群馬県が全国に先駆けてスタートしています。
先月13日から始まったのが、「ぐんまワクチン手帳」というものです。県の担当者に聞いたところ、2日午前9時時点で22万1160人が登録しているということです。
これは、県民向けの宿泊費割引キャンペーンなどにひも付いていて、「1泊5000円割引」になるということで、草津の温泉宿など709の施設が参加しています。
実は、接種が完了していない県民も「1泊3000円割引」になるキャンペーンなので、この“ワクチン手帳”があれば、割引がさらに2000円上乗せになるということになります。
背景には、導入にあたって県議会で「ワクチン未接種者への差別につながる」と心配の声が上がったことがあります。山本一太知事は「接種証明は条件ではなくインセンティブ」だとして、ワクチン接種を促す動機付けだと強調しています。
また、名称も当初は「ワクチンパス」としていましたが、「パス」というのが“条件”のようで、行動制限をイメージするので、お薬手帳のように「手帳」という名前にしたと説明しています。
■国も“接種アプリ”準備 海外渡航の証明書にも
国、政府でもスマートフォンなどでのワクチン接種証明の準備が進んでいます。
まず、「接種証明」のスマートフォンアプリをダウンロードし、最初に登録する際に、マイナンバーカードの読み取りや、4ケタの暗証番号を入力する必要があります。そして、登録すると、2次元コードの接種証明書が発行できるというもので、飲食店やイベント会場などで提示することが見込まれています。
このシステムは12月中にはスタートさせて、海外へ渡航する際の証明書としても使えるようにする予定です。
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今回、デジタル接種証明について取材しましたが、ワクチン接種した人たちにとっては“得する”ことが増える一方、自治体独自のものと国が進めるものがすでに乱立気味で、使い道もさまざまです。アプリごとに登録作業が毎回必要ということもあり、ユーザー目線に立った使い勝手の良さを、国も自治体も考えてほしいところです。
(2021年11月2日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)