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開発進むコロナ“発症予防薬”や飲む治療薬

2021年11月5日 22:41
開発進むコロナ“発症予防薬”や飲む治療薬

緊急事態宣言の解除から1か月以上が経過しましたが、感染状況はいまのところ全国的に落ち着きを見せています。ただ、この冬に向けて第6波を懸念する声もある中、新たな予防薬や治療薬をめぐる動きが活発化しています。

   ◇◇◇

■日本初、新型コロナウイルス“発症予防薬”とは?

まず、先ほど特例承認されたのが日本で初めてとなる新型コロナの“発症予防薬”です。

中外製薬のロナプリーブという薬で、現在は新型コロナの治療薬として使われています。

「抗体カクテル療法」という治療法を聞いたことある人も多いと思いますが、それに使われている薬です。

これまでは“感染した人”の重症化を防ぐための治療薬として、そうしたリスクのある軽症・中等症の患者に対して「点滴」で投与していました。今後は感染していない人や無症状の感染者も発症予防をするために使えるようになります。
ただし、その対象はかなり限定されています。

原則として、「重症化リスクがある人」、さらに患者と同居する家族など「一緒に生活をしている濃厚接触者」。濃厚接触者にあたらなくても「陽性で無症状な人」。なおかつ、ワクチン未接種、もしくは接種していても「効果が不十分」と考えられる人、これら全てに当てはまる人に限られます。

その最後の「ワクチン効果が不十分」というのは、どういう人のことかというと、例えば、がんの治療などをしているとワクチンを接種しても免疫が不十分と考えられるケースがあるということです。

そして、投与の方法ですが、基本的には点滴で、点滴が難しいケースなどでは、皮下注射も可能になります。その場合は、腹部、太もも、上腕のいずれか4か所に注射をする必要があるということです。

また、投与の対象は、あくまで感染者と同居している人や施設などで共同生活している人で、飲み会や職場での濃厚接触者は対象にはなりません。中外製薬によりますと、臨床試験では、家庭内の濃厚接触者のうち検査で陰性だった人の発症リスクは81%減ったということです。ただ、臨床試験は健康な人に対しては行われていないので、予防薬は医師が本当に必要と判断した場合の極めて限定的な使い方になるとしています。

厚生労働省は、予防の基本はあくまでもワクチンだと強調しています。ただ、ワクチンでは不十分と考えられる人などにも発症予防の選択肢を提供できるようになるという意味では、安心材料が一つ増えた形です。

■世界初、新型コロナの「飲む治療薬」が承認されたイギリス

こうした中、イギリスでは世界初となる新型コロナの「飲む治療薬」が承認されました。アメリカの製薬大手メルクなどが開発した「モルヌピラビル」です。

イギリスの医薬品規制当局は4日、安全性や有効性などを検証した結果、「軽度から中程度の患者が入院したり死亡したりするリスクを50%減少させる効果が確認された」と発表しました。感染の初期段階で服用すると最も効果的だということで、症状が出てから5日以内にできるだけ早く使用することが推奨されています。

ただ、症状が出た人なら誰でも飲めるというわけではありません。モルヌピラビルの服用が認められているのは、軽症から中等症の患者で、さらに、肥満、高齢(60歳以上)、糖尿病、心臓病などの重症化リスク要因が少なくとも一つ以上ある人に限られます。ロナプリーブと同様、誰もが対象となるわけではありません。ただ、対象者となれば、自宅で服用できるので、重症化する人を減らし、医療機関の負担軽減にもつながると期待されています。

イギリスのジャビド保健大臣は「画期的な治療法だ。できるだけ早く患者に投与できるよう計画を立てている」と話しています。日本でも現在、承認申請の準備中ということです。

■飲む治療薬の開発は日本でも進められている

そして、日本でも飲む治療薬の開発が進められています。塩野義製薬は9月から錠剤の飲み薬について、国内での最終段階の臨床試験を行っています。この治療薬は、主に無症状や軽症者向けで1日1回、5日間服用します。

臨床試験では無症状または軽症の患者およそ2100人を対象に、投与した人と投与しない人を比較することにしていますが、国内の感染者が大幅に減っていて、治験を受ける患者の数が足りなくなる可能性があるということです。

そこで10日頃から、シンガポールと韓国にも対象を広げ臨床試験をするとしています。

この試験でのデータをもとに年内には承認申請したいとしていて、実用化の見通しが立てば、来年3月までに100万人分を用意したいとしています。

日本ではワクチン接種率が7割を超えて、重症者数などもかなり減少してきましたが、海外では再び感染が急拡大している地域もあります。今のうちに新たな予防薬や飲み薬などの活用にしっかり道筋をつけて、冬に向けて少しでもリバウンドを抑制できる態勢を整えてほしいと思います。

(2021年11月5日午後4時ごろ放送 news every.「ナゼナニっ?」より)

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