「残る5万円」原則クーポン? 現金は?
現金にするか、クーポンにするか―。18歳以下への10万円給付をめぐり、5万円分の扱いが焦点となる中、現金給付を求める声が、自治体や野党、保護者らから強まっています。低所得の世帯やひとり親に対し、独自の支援策を加える自治体もあります。
■ベビー用品店、給付に「大変期待」
9日、都内のベビー用品専門店。生後10か月の女の子を抱えた家族が、「バリエーションを増やしたくて」と、初めて試すベビーフードを手に取っていました。
18歳以下の子どもへの10万円給付について、母親は「相当助かりますよね。おむつとかお尻ふきとか、そういう日用品は本当にあっという間になくなるので」と歓迎します。
他の親からも期待する声が上がります。
5か月の子どもの父親
「これからのことを考えて、知育にいいおもちゃとか…」
別の2児の母
「(この子が)2人目なんですけど、全部上の子のお下がりばかりになっているので、新しい服とか…」
副店長は「クリスマスや年末年始を控えておりますので、そういった期待は大変持っております」と話します。
ただ、5か月の子どもの母親からは「最初は『おお!』と思ったんですけど、全部現金じゃないと使いづらい」という声も漏れました。
10万円のうち、5万円は現金ですが、残る5万円は現金なのか、クーポンなのか―。
■クーポン期待も…印刷会社「潤わず」
9日に訪ねた都内の印刷工場は、クーポンに期待しています。
印刷会社社長
「トリックインキという名前の(特殊な)インキを使った印刷などを、偽造防止技術として加えた印刷物を作っています」
こうした技術などがあるため、クーポンの準備を考える自治体から見積もりの依頼が来ているといいます。
印刷会社社長
「『どれぐらいの金額になるんですか』とか、『おたくでやってもらえますか』とか。(新型)コロナ(ウイルスの影響)で仕事は減っていますし、ご発注いただければ喜んで一生懸命作りたいと思っていますが、特需で会社が潤うなんてことは全くないですね」
「(クーポン)券がいいとか、デジタルがいいとか、現金給付がいいとか、いろいろ選択肢があると思うので、私どもは黙って待つだけだと思っています」
■自治体も「現金」要望 独自支援策も
一方、自治体からは現金給付を求める声が相次ぎます。
愛知・犬山市の山田市長
「いろんな事務経費であったり、業務量も現金(給付)の方が少なくてすみますから」
沖縄・石垣市の中山市長
「クーポンではなく、現金給付が一番市民にとって有用であると(考えます)」
国の給付に加えて、独自の支援に乗り出す自治体もあります。千葉・市川市では、政府が住民税の非課税世帯に現金10万円を給付するのに合わせ、課税世帯でも所得200万円以下であれば、同じ10万円を独自に給付する方針です。対象は約4万世帯といいます。
この独自給付の対象外という市川市民に聞きました。
50代
「働いても今、なかなか給与が上がっていかない世の中なので、まとまって10万円というのは本当に助かると思います」
30代
「本当に困っていると思うので、その方々に対して、こうやって市が取り組んでくれるというのは、すごく魅力的だなと思います」
また埼玉・蕨市も、児童扶養手当を受け取っているひとり親家庭の子どもに、1人あたり2万円を追加給付するといいます。対象は約300世帯の約400人です。
■「全額現金」基準は予算案成立後
国会では9日も、10万円給付をめぐって野党が追及しました。
衆院代表質問で日本維新の会の馬場共同代表は「最たる愚策は、18歳以下に対する10万円相当の給付です。(事務経費の約)970億円を投じてまでクーポンの支給に固執される理由が理解できません」とただしました。
岸田首相は、「まずはクーポン給付を原則としながらも、地方自治体の実情に応じて、現金での給付も可能とする運用といたします」と答えました。
国民民主党の玉木代表は「やはり10万円は全額現金で給付すべきです。なぜなら、一番使い勝手の良いクーポン券は日本銀行券、現金だからです」と訴えました。
「地方自治体の意見を伺いながら、柔軟な制度設計を進めてまいります」と防戦に回った岸田首相。現金給付も可能だとしながら、原則はクーポンだと答弁しました。
全額現金給付ができる基準について、政府は9日、12月に補正予算案が成立した後に示すことを明らかにしました。
■「一括給付」断念で…松井市長は
年内に10万円を現金で一括給付する方針を示していた大阪市の松井市長は9日、会見で「残念で仕方がないね」と表情を曇らせました。
「非常に申し訳ないけれども、(12月)27日には5万円しか届きません。市民の皆さんに。僕はこの年末、なんとか10万円届けたかったけどね…」
現金一括給付を断念すると表明した松井市長。国への恨み節は止まりませんでした。
会見の席にいた報道陣に「クーポンの方がいいと思う人、手上げて」と呼びかけ、反応がないのを確かめると、こう語気を強めました。
「おらんやん! 誰もおらんのよ! みんなに聞いてるんよ、いろんな人に。全員現金でした。100%。だからニーズはもう…」
(12月9日『news zero』より)