20代以下女性の半数「抵抗なし」…急増する美容施術で“トラブル”どう防ぐ?厚労省が検討会
■どこからが医療でどこまではエステなのか?“あいまい”だらけの美容医療に専門医も危機感
厚生労働省担当 馬野恵里花記者
「美容医療の施術の幅が広がるとともに、心理的ハードルも低くなって、簡単な施術を受けやすい環境になってきています。しかし、それに伴って相談やトラブルも増えているという現状があって、厚労省が『これは問題だ』ということで、検討会を開くことになりました」
報道局ジェンダー班 庭野めぐみ解説委員
「美容医療は基本的には自由診療ということで、保険がきかないで全額自己負担です。値段もクリニックなどによって違うものだと思うんですけれども」
馬野記者
「そうですね。保険診療だと、例えば『これは本当に保険適用診療なのか』『ちゃんとした施術が行われているのか』というところを国が監視する制度があるんですが、自由診療に関してはそういったものがない現状です」
庭野解説委員
「そもそもどこまでが美容医療なのかということさえも、なかなか難しいと聞いたんですけど」
馬野記者
「まさに検討会ではそういったことも話題に上がって、例えばどこからが医療行為で、どこまではエステでもやってもいい行為なのか。線引きをどこでするかも話し合われました」
庭野解説委員
「お医者さんからも厳しい意見が出たんですよね?」
馬野記者
「検討会に出席した委員の中には美容医療の業界で今働かれている方もいたんですけど、そういった方からも危機感が示されました。例えば、皮膚科の専門医ではなかったのに、皮膚に関する美容施術を取り扱う医院を開設する医師がいたり、最近は経験の少ない若い医師が美容医療の道に直接進んでしまったりということも増えていると言っていました」
庭野解説委員
「経験が必要な分野かもしれないのに、若い人で経験がないという場合は、もしかしたら技術が追いつかないなどあるかもしれないですね」
馬野記者
「病院の勤務と美容医療の業界を比べたときに、給与の差がある場合もあるそうです」
庭野解説委員
「みんなが知っているような大病院の医師を辞めて美容に行く人が結構増えていて、大学病院なんかでも『また若い医師が離職して美容に行ってしまった』とすごく話題になっていると聞きます」
■毛、脂肪、たるみ…つきない美容の悩み解消へ──急増する美容施術でトラブルも
庭野解説委員
「美容医療でのトラブルというのはどんな感じなんでしょう」
馬野記者
「厚労省のデータでは、2022年には全国で370万件を超える美容施術が行われたということで、かなり多いですよね。施術の種類では、多いのは脱毛。そしてセルライト治療、脂肪に関する治療です。あとは、顔などのケミカルピーリングが多いということです」
「施術の中には外科的なものとそうじゃないものがあって、外科的なものでいうと、二重術が一番多いです。そうでないものだと、脱毛やボトックス注射。あとHIFUが多いですね」
庭野解説委員
「HIFUって何ですか?」
馬野記者
「引き締めみたいなものらしくて、あごや体などに照射してきゅっと顔のリフトアップなどができるということなんです」
庭野解説委員
「そういう機器を使うと、いろいろトラブルもある可能性がありますよね」
馬野記者
「なので、脱毛やHIFUといった医療行為が行われるものに関しては、厚労省が『こういった場合にはお医者さんがやってくださいね』という通達みたいなものが6月に出されました」
■20代以下の女性では半数が美容施術に「抵抗がない」…施術を受ける目的は男女共通で──
庭野解説委員
「美容施術って、私なんかの年代よりも若い人には随分身近になっていると思うんですけど、どんな感じで皆さん捉えているんでしょうか」
馬野記者
「ホットペッパービューティーを運営するリクルートの調査によりますと、特に女性は20代以下は美容施術に『抵抗がない』と答えた人が半数以上いて、男性も20代では半数以上が『抵抗がない』と答えているというデータが出ています」
馬野記者
「こういった施術を受けた女性の中で、施術を受けた理由は『コンプレックスの解消』と答える人が一番多かったんですね。その他にも、『自己満足のため』だったり、『手軽にできるようになった』という理由も多いみたいです」
「一方で、男性も美容施術を受ける人が増えていて、同じ質問をしたところ、やっぱり一番『コンプレックスの解消』が多いほか、『モテたい』とかっていう話もあったということです」
庭野解説委員
「随分身近で当たり前のようになっているということなんですね。もちろん皆さん綺麗になりたい気持ちはわかるけれども、例えばヨーロッパの人なんかは脇の処理なんかも女性でもしていなくて、普通にしている方がそれなりにいて、そもそも脱毛というのがどこまで必要なのか…処理して当たり前になっているけれど、どうなのかね?とちょっと思ったりしますよね」
馬野記者
「夏が近づいてきて露出が増える分、毛の処理が気になる人って結構多いと思うんです。私も電車に乗ってもSNSを見ても『脱毛しましょう』という広告が出てきて、『やらなきゃ!』みたいな強迫観念みたいになっているのではとちょっと感じます。本来自分の体のことは自分で決めていいはずなので、『誰かがやっているからやらなきゃ』とか、そういうことはないんじゃないかなと思います」
■トラブルに遭ってしまったら?行政の相談機関や返金の可能性も
庭野解説委員
「手軽になっていて、すごく安く、『最初はタダです』とかありますよね」
馬野記者
「10代の若い人がそういったものにつられて契約をできてしまうということもトラブルの原因の一つになるのではないかと思います」
庭野解説委員
「宣伝やSNSなどで見たら、やっぱりそれがいいものだって思ってしまいますもんね。美容医療でトラブルがあって困った場合には、どこに相談すればいいんでしょうか」
馬野記者
「まずは消費生活センターなど行政の相談機関があります。あとは周りにいる大人や信頼できる人に、恥ずかしいことじゃないので、相談してもらえればいいと思います。もし契約をしてしまった後でも、クーリングオフが適用になる場合もありますので、1度相談するというのが大事だと思います」
庭野解説委員
「厚生労働省の美容医療の検討会は、今後どのような予定になっているんですか」
馬野記者
「美容医療における課題の全容がまだわかっていないところもあるので、どういった課題があるのかというのを順番にあぶり出していって、議論を進めて、年内をめどに取りまとめを行うという予定がされています」
庭野解説委員
「検討会でさえそうなんだから、一般の人が本当に判断したり決めたりするってなかなか難しいところですね」
馬野記者
「最近はSNSでの口コミで『こういった施術がいいよ』『ここのクリニックがいいよ』というものも多いんですが、本当に良かったから紹介している人もいれば、実はステマだったということもあるので、そういったところの見極めも大事になってくるという話がありました」
庭野解説委員
「エステにしても医療にしても、何十万円もかかるから、お金がない人はそこまでお金をかけられず脱毛などで悩んで、お金がある人はどんどん脱毛など美を追求するということにもなります。貧富の格差が美容でも出るのはちょっと困るなあ…なんて思ったりもしますよね」
「美の基準って人それぞれで、周りに無理に合わせることはないけれども、綺麗になりたい気持ちもわかります。何かトラブルとか、お金の請求がどんどん来て困るとなったら、やっぱり早めに相談していただくということが大切ですね」
馬野記者
「そういったことにならないためにも、社会の風潮として美容に対して“こうあるべき”とかっていうのがちょっとでも少なくなればいいのかなと個人的には思います」
日テレ報道局ジェンダー班のメンバーが、ジェンダーに関するニュースを起点に記者やゲストとあれこれ話すPodcastプログラム。MCは、報道一筋35年以上、子育てや健康を専門とする庭野めぐみ解説委員と、カルチャーニュースやnews zeroを担当し、ゲイを公表して働く白川大介プロデューサー。
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