年金制度は維持されるが、約30年後年金額は今より18%減
厚生労働省は、3日開催の年金部会で、将来の年金額を推計する、5年に1度の「財政検証」の結果を公表しました。出生率が多少改善し、経済成長率が過去30年と同じ程度の場合は、今の32歳の人が受け取る年金額は、現在よりも18%程度目減りするということです。ただし、むこう100年間の年金額は、法律で定めた水準よりは高く、厚労省は制度の持続性は確認されたとしています。
「年金財政検証」は年金制度の5年に1度の定期健診と言われるものです、出生率や労働者の数、経済状況について、良くなる場合、悪化する場合など4種類の前提を置いて、今後およそ100年間の年金額を推計します。その結果、出生率が多少改善して経済成長がデフレの続いた過去30年と同程度と仮定した場合、今年32歳の人が2057年度に受給を始める際の年金額は、現在の高齢者の年金額よりも18%目減りするとの結果が出ました。
実は法律で、年金額については、現役世代の手取り収入の50%を上回らなければならないと定めています。厚労省によりますと、今回の検証の結果、上記のように経済成長が低い場合でも、今後100年間、この数値が50%を上回るという結果が出たということで、年金制度は持続可能だとしています。そして、将来の年金水準は5年前の検証結果より改善されたということです。厚労省は、改善の理由について、この5年間で働く高齢者や女性が増え、保険料を納める人が増え、年金財政がより安定したと説明しています。
ただし、出生率が下がり続けたり、経済が非常に悪化した場合には今回の試算よりも、さらに将来の年金額が下がる可能性があります。
将来の年金額が下がるのは、現役世代の保険料負担を抑えるために、物価が上昇しても、年金額の増加を物価上昇率よりは低く抑える「マクロ経済スライド」という仕組みがあるためで、この仕組みのあり方などについて、今後、年金部会で議論し、年内に方向性を示すことになっています。