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【民事裁判IT化】裁判も「リモート」に―法廷行かずに判決

2022年2月19日 13:00
【民事裁判IT化】裁判も「リモート」に―法廷行かずに判決
IT化の波は裁判所にもー「リモート」裁判でどう変わる?

民事裁判が転換期を迎えます。書面や対面でのやりとりが基本とされてきた民事裁判の手続きを、全てオンライン上で完結させるための法改正に向け、法務省が動き出しました。諸外国と比較して遅れが指摘されてきた日本の裁判のIT化。どう変わっていくのでしょうか。

■書類提出、法廷へ出廷ー現状の“アナログ”裁判

そもそも現在の民事裁判の仕組みはどのようになっているのでしょうか。

民事裁判は金銭の貸し借りなど、個人の間のトラブルについて裁判所が判断し、解決するための手続きです。

原告(訴えた側)が「訴状」と呼ばれる書類を裁判所に提出して始まり、その後、原告、被告(訴えられた側)が法廷を訪れ意見を述べたり、証拠となる書類を提出したりするなどして裁判が進んでいき、和解するか、最後に判決が言い渡されるのが一般的な流れです。

現状、民事裁判では訴状などの書類は郵送か持参によって提出することが求められる上、原告側、被告側は必ず一度は裁判所を訪れる必要があります。

書類の提出や出廷など、アナログなやりとりが中心となっている民事裁判。

この仕組みを全面的にオンライン化するため、法務省が法改正に向けて動き出しました。

■訴状はオンライン提出に

これまで、裁判所に提出する訴状やそれぞれの言い分などを書いた書面は、裁判所に紙で提出されていました。

しかし、法改正が実現すれば、紙で提出していた訴状などはオンラインで提出することになります。

このため、場合によっては合計数百枚にも及んでいた大量の書類の印刷が不要になり、業務の効率化やコスト削減にもつながることが期待されます。

■一度も法廷に行かず判決

また、法廷の様子も変わることになります。

これまで意見などを述べる手続きである「口頭弁論」では、原告側、被告側ともに裁判所に出向く必要がありました。

そのため、例えば北海道に住んでいる人が沖縄の裁判所で訴えを起こされた場合、被告側は時間がかかっても裁判所に行くことが必要でした。

しかし、法改正が実現すれば、裁判所が認めた場合にはウェブ会議形式で裁判に参加することが可能になるのです。

さらに、関係者に法廷に来てもらう証人尋問についても、これまでよりも幅広くウェブ会議形式での参加が認められることになります。

裁判は公開の法廷で行うという原則があるので、裁判はこれまで通り法廷で行われ、傍聴もすることも可能ですが、一定の条件を満たせば、原告側、被告側、証人が一度も法廷を訪れることなく、判決を迎えることができるようになるのです。

全面的なオンライン化の議論が進められてきたのには、理由があります。

大きな理由の1つが国際的に見て、日本の遅れが指摘されてきたことでした。

アメリカ、シンガポール、韓国などでは民事裁判の手続きのIT化が広く普及している一方、日本には厳しい評価がされてきました。

そのため日本企業がトラブルに巻き込まれた場合、裁判に膨大な手間や時間がかかることから、企業活動に影響が出て、国際的な競争力が落ちるという指摘がされてきたのです。

長年の課題となってきた民事裁判のIT化。

法務省は法改正に向けて今国会で法案を提出し、2025年度までの実現を目指しています。

アナログな民事裁判の姿は、IT化で幅広く利用しやすい制度となっていくのでしょうか。