【解説】値上げの中で増える負担 “手取り”減った? 社会保険料が上がり… 慢性的な「財源不足」
あらゆるものが値上がりし、少しでも節約したいという中、銀行の振込手数料が500円以上あがるケースも出てきそうです。
●窓口で990円
●手数料抑える方法
●給料の手取り減?
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
三菱UFJ銀行は27日、引き出し手数料ではなく振込手数料を10月2日から引き上げることを発表しました。他行あての振り込みを店頭の窓口で行う時、現在の手数料は3万円未満の場合で594円、3万円以上だと770円となっています。これが、10月からは一律990円に上がります。
窓口での振り込みは人が対応してくれるので安心ということはありますが、990円も取られると思うと尻込みしてしまうかもしれません。ただ値上げは窓口だけではありません。今回、値上げの幅が一番大きかったのが、ATMでの振込手数料です。
現在は現金の場合、3万円未満で374円、3万円以上で550円かかります。10月2日からは、いずれも880円に引き上げられます。現金で3万円未満の場合は、506円の値上がりになるわけです。
ATMからカードで振り込む場合は、現在は手数料が209円(3万円未満)・330円(3万円以上)なのが、一律275円に統一されるということです。同じATMでもカードで振り込めば、打撃は少ないわけです。
一番手数料を抑えられるのは、インターネットバンキングです。現在の手数料は154円(3万円未満)・220円(3万円以上)ですが、これらはそのまま据え置きされるということです。
振り込みの手数料に差をつける最大の狙いは、店舗やATMの「コスト削減」です。
店舗に来る客自体が減っている中、銀行にとっては現金の持ち運びやお金の管理、詐欺などの金融犯罪の対策に多くのコストがかかっています。こうした管理にコストがかかる現金から、より利便性の高いインターネットバンキングの利用を促す狙いがあるとみられています。
では、他の銀行はどうなのでしょうか。
三井住友銀行もみずほ銀行も他行に振り込む場合、3万円以上でそれぞれ770円と880円と店頭窓口での手数料が一番高くなっています。ただ、両行とも現在の振込手数料を変更する予定は、現時点ではないということです。
手数料を抑えるには上手にネットバンキングを利用したり、頻繁に振り込む振込先がある場合は同じ銀行に口座を作って、手数料を少し減らしたりするなどの工夫が必要かもしれません。
一方、今月から知らず知らずのうちに、私たちの家計の収入も厳しくなっているかもしれません。今週、今年度初の給料日を迎えた人も多いと思われますが、実は今月から社会保険料の金額が上がり、手取り金額が減ったという人も多いかもしれないのです。
金額が上がったのは「健康保険料」で、主に中小企業が加入する協会けんぽでは東京都を含む13都府県で引き上げになっています。そして、40歳から64歳が負担する「介護保険料」「雇用保険料」が上がっています。
これでどれだけ手取り額が減ったのでしょうか。例えば、東京在住で給与30万円の人の場合、健康保険料は1万4715円から1万5000円となり285円の負担増、40歳以上が納める介護保険料は2460円から2730円となり270円の負担増、雇用保険料は全国一律で1500円から1800円となり300円の負担増となっています。
つまり、40歳未満の人の社会保険料は月額585円、40歳以上は855円多く給料から差し引かれるということで、年間では40歳未満で7020円、40歳以上は1万260円の負担増となっています。
なぜ社会保険料が上がるのか、社会保険労務士の今泉善雄さんに聞きました。「少子高齢化で医療費が上がっているが、働き手は不足している。慢性的な『財源不足』という構造的な問題がある」ということでした。
一方、新型コロナウイルスの影響についても話していて、雇用保険の金額引き上げは休業補償など助成金を多く出したことで財源が減り、それを補うためではないかといいます。
また、新型コロナが来月8日から5類に移行することになり、将来的にはワクチンや治療費を国費ではなく、健康保険で医療費を使って払うことになります。その財源も賄わなければならないということもあるかもしれないということです。
今後の見通しについては、「少子高齢化の流れは簡単には変わらないので、この先も上がると考えるのが妥当」とした上で、さらに保険料の引き上げだけでなく「医療費の窓口負担の割合を上げていく可能性もある」と話しています。
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日常生活のあらゆる場面で値上げを実感する日々ですが、消費を冷え込ませず経済を回していくには、持続的な賃上げもますます求められています。
(2023年4月27日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)