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手取り逆転も……「年収の壁」打ち破れる? 8割が「もっと働きたい」でもセーブ 具体案は…新たな“不公平感”も

2023年2月2日 10:34
手取り逆転も……「年収の壁」打ち破れる? 8割が「もっと働きたい」でもセーブ 具体案は…新たな“不公平感”も

多く働いても手取りが少なくなり「働き損」が生じるため、年収セーブにつながるという「年収の壁」。長年指摘されてきましたが、岸田首相が1日、見直す考えを示しました。年収によって手取りの逆転が起こる背景や働く人の本音、具体策の課題を考えます。

■年収で手取りが逆転…ナゼ?

有働由美子キャスター
「(働き方と手取り収入について)モヤモヤしながら働いているという方も多いと思います。会社員の夫の年収が同じ、2つの家庭を比べます。パートタイムのAさんは年収100万円、パートのBさんは106万円です」

「(年収は)Bさんの方が多いですが、世帯の手取りを野村総合研究所のデータを基に計算すると、Aさん一家は513万円、Bさん一家は489万円と、逆転が起こってしまいます」

「この背景にあるのが『年収の壁』と言われるもので、岸田首相は1日、これを見直す考えを示しました」

小栗泉・日本テレビ解説委員
「なぜBさんの家庭の方が手取りが少なくなるのかを確認します。この試算によると、パートのBさんの年収が100万円を超えるため住民税が課税され、会社の規模によりますが、社会保険料の支払いが生じます。さらに、会社からの家族手当ももらえません」

■6割が「働く時間や日数を調整」

小栗委員
「こうしたことで、Aさんの家庭よりも手取りの収入が少なくなります。BさんとしてはAさんよりも働いているのに、働き損になってしまいます。とすれば、Aさんと同じで『年収をセーブして働いた方がいいのでは』となります。これが年収の壁と言われる問題です」

「野村総研のアンケートでは年収の壁を超えないよう、働く時間や日数を調整しているという人が6割以上でした。また年収の壁がなくなり、働き損にならないのであれば今よりもっと働きたいという人が、『とても思う』『まあそう思う』合わせて約8割でした」

■手取り減少分を「時限的に給付」案

有働キャスター
「この年収の壁の問題は長く言われてきましたが、今回、岸田首相が動き出すということです。具体的にどうなりそうですか?」

小栗委員
「1日に国会で自民党の平議員が提案したのは、抜本的な制度改正はするが時間がかかってしまうので、それまでの間、年収の壁を超えて手取りで減った分を時限的に給付してはどうか、というものです」

有働キャスター
「この案を中心に議論が進められていくのでしょうか?」

小栗委員
「この案は自民党の萩生田政調会長も提案していますが、最大の問題点は、不公平が生まれる可能性があるということです」

「先ほどの例のBさんは給付金をもらえますが、例えば独身のCさんは同じ収入状況でも扶養に入っておらず給付をもらえないとしたら、新たな不公平が起きかねません。岸田首相もこの点を1日に指摘した上で、今後幅広く対応策を検討していくと述べています」

■辻さん「制度のアップデートを」

辻愛沙子・クリエイティブディレクター(「news zero」パートナー)
「大黒柱が稼いでその家族は扶養に、という家族観や働き方の価値観を前提にした制度なので、共働きも約7割になった今の時代、アップデートしていくのが自然だと思います」

「そもそも、性別問わず『働きたい』『頑張りたい』という人が仕事をセーブせざるを得ない制度は問題があるように思います。頑張りたい人が頑張れる土壌であってほしいです」

有働キャスター
「今回ほど、少子化や働き方が注目されている国会もありません。この問題もようやく動き出したか、という感があります。きちんと道筋を立てて、壁を打ち破るところまで貫いてほしいと思います」

(2月1日『news zero』より)