「本当に地獄でした」不登校を経て日本最北の高校に“留学”……母子の葛藤の末に見つけた充実

「本当に地獄でしたね」と中学の不登校時代を振り返る高校3年生の掃部暁里(かもん・あさと)さん。今は、日本最北の北海道礼文高校で、充実した高校生活を送る。そのきっかけとなった“新たな学びの選択”とは――。
<取材・文=鈴江奈々(日本テレビアナウンサー)>(前・後編の前編)
■突然おそった“無気力”
「中学2年生の時、急に体に力がはいらなくなって布団から起き上がることが難しくなったんです。いじめでもなく学校が嫌になったわけでもなかった」
暁里さんは不登校のきっかけをこう話す。千葉県内の公立中学校では陸上部の練習、勉強にも励み、積極的に学校生活を送っていた。しかし、突然やってきた無気力な気持ちに心も身体も支配されていったという。そんな状況に本人も家族や周囲も理解に苦しんだ。
「気持ちは学校に行ってみんなと部活して、勉強して、テスト受けて…。思い描く中学生活を送りたいのに、身体がついていかない。何で行けないんだと自分を責める。それに比例してどんどん身体が重くなって。親もなんで学校に行かないんだって怒る。友達からも色々言われるので、あの時は本当に地獄でしたね」
そんな日々が続く中、母親のまゆさんも葛藤していた。
「最初の頃は『学校に行かせないと』という思いが強くて、怒ったり泣いたり。今思えば言わなくていいことを沢山言ってしまった。学校に行かないとどうなるのかなって…」
不安と焦りがあった。布団をかぶって部屋から出てこない息子について、専門の医師に相談。返ってきたメッセージにハッとした。
「これ以上子どもを追い詰めて、果たして来年まで生きていてくれるでしょうか?」
学校に行くか行かないかのレベルの話ではなく、生きていてくれるかどうか――。医師からは「携帯が少し充電できてもすぐに電源がきれてしまうように、フル充電できるまで動かさないこと」とアドバイスされた。
不登校の先にどんな未来があるのか、まゆさんは探し始めた。