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「本当に地獄でした」不登校を経て日本最北の高校に“留学”……母子の葛藤の末に見つけた充実

2022年10月26日 7:00
「本当に地獄でした」不登校を経て日本最北の高校に“留学”……母子の葛藤の末に見つけた充実

「本当に地獄でしたね」と中学の不登校時代を振り返る高校3年生の掃部暁里(かもん・あさと)さん。今は、日本最北の北海道礼文高校で、充実した高校生活を送る。そのきっかけとなった“新たな学びの選択”とは――。
<取材・文=鈴江奈々(日本テレビアナウンサー)>(前・後編の前編)

「中学2年生の時、急に体に力がはいらなくなって布団から起き上がることが難しくなったんです。いじめでもなく学校が嫌になったわけでもなかった」

暁里さんは不登校のきっかけをこう話す。千葉県内の公立中学校では陸上部の練習、勉強にも励み、積極的に学校生活を送っていた。しかし、突然やってきた無気力な気持ちに心も身体も支配されていったという。そんな状況に本人も家族や周囲も理解に苦しんだ。

「気持ちは学校に行ってみんなと部活して、勉強して、テスト受けて…。思い描く中学生活を送りたいのに、身体がついていかない。何で行けないんだと自分を責める。それに比例してどんどん身体が重くなって。親もなんで学校に行かないんだって怒る。友達からも色々言われるので、あの時は本当に地獄でしたね」

そんな日々が続く中、母親のまゆさんも葛藤していた。

「最初の頃は『学校に行かせないと』という思いが強くて、怒ったり泣いたり。今思えば言わなくていいことを沢山言ってしまった。学校に行かないとどうなるのかなって…」

不安と焦りがあった。布団をかぶって部屋から出てこない息子について、専門の医師に相談。返ってきたメッセージにハッとした。

「これ以上子どもを追い詰めて、果たして来年まで生きていてくれるでしょうか?」

学校に行くか行かないかのレベルの話ではなく、生きていてくれるかどうか――。医師からは「携帯が少し充電できてもすぐに電源がきれてしまうように、フル充電できるまで動かさないこと」とアドバイスされた。

不登校の先にどんな未来があるのか、まゆさんは探し始めた。

「中学生だと情報が沢山入ってくるわけではないので、不登校だとどうなるのか、本人も不安になっていたんです。でも、調べてみると『不登校を経験して、今こんな仕事しています』と言う人が沢山いるんですよね。『不登校で高校に行けなかったら終わりだ…』なんてことはない。そのことを意識して見せるようにしました」

ただ、まゆさんが色々調べても、暁里さんの反応がなかったり、拒否されたり。悲しくなることもあったが「受け取るかどうかは本人の事」と思って「色々なボールを投げ続けた」という。

■見つけた“新たな学びの選択肢”

その中でまゆさんが見つけたのが全国の公立高校に越境して進学できる制度「地域みらい留学」だった。受け入れを開始した2018年度は全国で34校だったが、今では100校(2022年10月現在)に。この5年で3倍近くまで増加した。地域に根差した授業や地域との交流、都会にはない豊かな自然などが特色だ。

地元の学校には行きたくないと思っていた暁里さんが関心を寄せ、母と説明会に足を運んだ。会場には各地の高校のブースが並び10校ほど見て回った。そこで一校のパンフレットが目に留まる。日本最北の高校「北海道礼文高校」だった。

「初めて礼文高校のパンフレットを見た時の最後のページにあった自然に惹かれました。その後、現地に見学へ行ったら『パンフレット以上の場所がある!』と思って。帰宅後すぐに『礼文高校へ行きます』と親に言いました」

礼文高校を受験し、進学した暁里さん。寮で暮らしながらの高校生活がスタートした。

「中学時代は教室の隅っこでずっと本を読んでいたので、自分から何かをすることがめったになかったんです。地元なら自分のことを知っている人がいるけど、誰も知らない所に来た。自分がどういう人間なのか、積極的にアピールしないといけない。1年生の時は頑張って自己アピールしました。間違えたかな、と思うことも。それでも僕が最初にクラスメイトに不登校だったと言ったとき『不登校だったんだ、大変だったね』と。全部受け入れてくれた」

大きな一歩を踏み出すことができた暁里さん。現在、礼文高校の生徒会長をつとめる。将来の夢は「声を使う仕事」。夢に向けて朗読大会に出場したり、学校行事の町内放送をまかされたり、充実した高校生活を送っている。中学時代、部屋から一歩も踏み出せなかった暁里さんは、どのように自分らしく輝けるようになったのか。礼文島で取材を進めると、小規模校ならではの学びの場の可能性が見えてきた。

(後編へ続く)

<連載企画>『子どもたちが、生きやすく』

少子化が進む一方で、子どもたちを取り巻く環境は複雑さを増し、社会の課題は山積しています。今、子どもたちの周りで何が起きているのでしょうか。日本テレビ系列のニュース番組『news every.』は「ミンナが、生きやすく」が番組コンセプト。この連載では「子どもたちが、生きやすく」、そのヒントを取材します。