“盗撮”は処罰の対象に “子どもの相撲大会”は撮影OK? 13日から「撮影罪」施行で何がNG行為に? 抑止効果にも期待
隠し撮りからさらにエスカレートした「盗撮」について、13日から新たな法律が施行され「撮影罪」として処罰されることになります。どんな行為が撮影罪にあたるのか、いくつかケースを見ていきます。
① 航空機の中で、客室乗務員のスカートの中を撮影
② “盗撮”画像を他人に渡す目的でパソコンなどに保存
③ 子どもの相撲大会で上半身裸の子どもの姿を撮影
④ スポーツの大会でアスリートの胸などを撮影
これらのうち、どの行為が犯罪にあたるのでしょうか?
●これまで…泣き寝入り“6割”
●アスリート“不安”も
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
これまで「盗撮行為」を取り締まるには一定の“高いハードル”がありました。実際の事例では2012年、航空機内で客室乗務員のスカートの中を盗撮したとして男性が逮捕されたことがありました。しかしこの男性は起訴されず、釈放されました。
このとき問題になったのは、盗撮行為が行われたときに「何県の上空にいたのか?」ということでした。どの県の上空にいても「盗撮は盗撮」と思うかもしれません。しかし、実はこれまで全国一律で盗撮を取り締まる法律はなく、各都道府県の「迷惑防止条例」などで取り締まってきました。そのためこの事例では「どの県の上空にいて撮影されたのか」を特定する必要がありました。これは“高いハードル”といえます。
2022年、航空連合が客室乗務員に行ったアンケートでは、回答者1573人のうち実に7割もの人が「盗撮」や「無断撮影」をされた経験があると回答しました。しかも、これに対し「特に対処ができなかった」つまり「泣き寝入りした」と答えた人が、6割近くもいました。
羽田空港などにも、13日から「撮影罪」によって、全国一律で機内での「盗撮行為」を取り締まるなどと書かれたポスターが貼り出されます。
この法律の定義ですが「盗撮とは、正当な理由なく、ひそかに、胸・おしり・下着などを撮影すること」です。3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科せられます。「正当な理由」が焦点になってきます。
従って、①の「航空機の中で、客室乗務員のスカートの中を撮影」はNG行為で「×(バツ)」です。これからは、飛行中の航空機内で盗撮する行為がどの都道府県の上空で行われても、犯罪として取り締まることができます。
それでは②の「“盗撮”画像を誰かに渡す目的でパソコンなどに保存」することは、どうでしょうか? 実は、今回の法律の施行により処罰の対象になる行為は“盗撮そのもの”だけではありません。「提供罪」と「保管罪」も問われることになります。
「提供罪」では、盗撮画像や動画を他人に渡すことが処罰対象であることに加え、ネット上にアップするなどして“不特定多数の人に見られるようにする”と、さらに厳しく処罰されます。
「保管罪」では、自分のものか他人のものかを問わず、盗撮画像を誰かに渡す目的で持っていただけで、犯罪となる可能性があります
一方で、そもそも「盗撮」にならないケースもあります。
今回の「撮影罪」では「正当な理由がないのに」盗撮することを禁じています。では「盗撮にあたらない正当な理由」とは…?
◇医療行為として「意識不明の患者を医師がルールに従い撮影」
◇成長の記録として「庭で水遊びをする子どもたちを親が撮影」
◇相撲大会で「子どもの取組を撮影」
このようなケースは「正当な理由」なので、NG行為ではなく「○(マル)」です。誰もが納得する理由といえます。従って、③の「子どもの相撲大会」は大丈夫です。
では、④の「スポーツの大会でアスリートの胸などを撮影」はどうでしょうか。実は「△(サンカク)」で、グレーゾーンです。いったいなぜでしょうか?
今回の「撮影罪」で取り締まりの対象となるのは「裸や下着」まで。「ユニホーム」は処罰の対象になっていません。
その理由について、盗撮の問題に取り組んで来た上谷さくら弁護士は「ユニホームの上からの撮影は、性的な盗撮と、通常の撮影の線引きが困難」だからだといいます。
現状について上谷弁護士によると、大会主催者が個別の「ルール」で撮影を制限しているケースがあるといいます。とはいえ、地方の小さな大会などでは監視するスタッフも少なく、「ルール」を作ったとしても、性的な盗撮を防ぐことは非常に難しいといいます。
◇
これからはより厳しく、盗撮関連の犯罪を取り締まることになります。それはつまり、これまで声を上げられなかった被害者たちが救われるということです。違法になることで、盗撮の抑止につながることを期待します。
(2023年7月12日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)