【過去にも大地震】“豊後水道”と“南海トラフ” 「可能性の高まり」は否定 “境界”でなく“プレート内部”で発生
17日夜、豊後水道を震源とするM6.6の地震があり、四国地方で震度6弱の激しい揺れを観測しました。この地震は「南海トラフ巨大地震」の想定震源域内で発生しましたが、想定されるメカニズムと異なるなどのため、気象庁は、巨大地震の可能性が高まったとは考えていないといいます。ただ、このエリアでは、2023年5月にもM4.5の地震が発生。M7クラスの大地震が度々発生しています。(※2023年5月23日「週刊地震ニュース」より)
2023年5月19日にも、豊後水道を震源とする地震は発生しました。「南海トラフ巨大地震」の想定震源域の中で起きたものです。仮に、想定震源域内でマグニチュード6.8以上の地震が発生した場合、有識者が集まって巨大地震の可能性や関連性を話し合い評価する検討会を開催します。ただ、気象庁によりますと、このときの豊後水道の地震は、マグニチュード4.5と地震の規模が小さいことから、巨大地震への直接的な影響は少ないということです。
■1年間に数センチずつ沈む「フィリピン海プレート」
「南海トラフ」は、陸のプレートの下に、海のプレートである「フィリピン海プレート」が沈み込んでいる部分をさします。「フィリピン海プレート」は、1年間に数センチずつ沈み込んでいます。
2023年5月の震度4の地震の震央である、豊後水道付近は、「陸のプレート」と「フィリピン海プレート」の境界付近の深さが30キロほどにあると推定されています。ただ、このときの地震は、プレート境界よりさらに深い、深さ46キロの場所で発生したため、「プレートの内部」で発生した地震でした。
過去に南海トラフ周辺で、繰り返し発生している大規模地震は「陸のプレート」と「フィリピン海プレート」がぶつかり合う「プレート境界」で発生しています。2023年5月の豊後水道の地震は「プレートの内部」で起きた地震。「プレート境界」でおきる地震とはメカニズムが異なります。ただ、プレート境界であっても、プレート内部であっても、規模の大きな地震が発生する可能性があるため注意が必要とされました
「安芸灘~伊予灘~豊後水道」のエリアでは、1997年10月から、これまでにマグニチュード2.0以上の地震が、およそ3000個発生しています。また、マグニチュード7.0以上の大地震も時々発生していて最近では、2001年にマグニチュード6.7の大きな地震がありました。
この地震が発生したのは、2001年3月24日午後3時28分ごろです。震源は安芸灘でマグニチュードは6.7、震源の深さは46キロでした。この地震、「2001年芸予地震」と呼ばれています。広島県で最大震度6弱を観測、愛媛県と山口県で震度5強となりました。また中部地方から九州全域で震度1以上の揺れとなっています。震源付近の広島県と愛媛県で被害が大きく、2人の死者が出ました。また、家屋の倒壊、火災も発生し、広島市などでは液状化現象が確認されました。このエリアでは、「陸のプレート」の下に太平洋側から沈み込む「フィリピン海プレート」の内部、深さ40キロから60キロ付近でマグニチュード7前後の被害を伴う大きな地震が起きることがあります。
■「安芸灘~伊予灘~豊後水道」の今後30年以内の地震発生確率は?
政府の地震調査委員会は、当時、マグニチュード6.7から7.4程度の規模の地震が、今後30年以内に発生する確率は40%程度と評価していました。
■「南海トラフ巨大地震」“プレート境界地震”だけではなく、様々なタイプの地震にも注意を
地震の専門家で、環境防災総合政策研究機構の草野富二雄さんは、「プレートが沈み込んだ深い場所で発生する地震というと、被害が小さいと思われますが、プレート内部の地震でも規模が大きければ死傷者や建物被害などを伴う地震となるおそれがある」と話していました。