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新型コロナ第6波 横浜市・山中市長の提言は? 単独インタビュー全編

2022年2月17日 10:00
新型コロナ第6波 横浜市・山中市長の提言は? 単独インタビュー全編

新型コロナウイルス第6波の感染拡大が続いている。神奈川県でも2月に入り、一日に9000人を超える感染者が確認され、連日、過去最多を更新した。こうした中、日本テレビは横浜市の山中竹春市長に単独インタビューをした。

横浜市ではオミクロン株の特性を踏まえ、従来の対応を変えていったという。ワクチン3回目接種の準備、保健所のひっ迫への対応、子ども感染が急増する状況で学校・保育所を、どう維持するかなど、いまの課題を聞いた。また市長は、感染症法上の新型コロナウイルスの現在の位置づけについても、「今、議論が必要だ」と提言。インタビュー全編をお届けする。(取材は2月7日。情報は当時のものです)

■第6波にどう向き合うか…横浜市で感じた課題

――第6波の真っ只中で、横浜市の感染者が4000人を超える状況もありました。今の感染状況をどう捉えていますか。

オミクロン株の感染力が、改めて強いということを認識しています。こういった状況になるということを、沖縄や諸外国の状況を見て1月中旬ぐらいから予想していました。感染者数は広がりますが、インフルエンザと違って濃厚接触者といった概念がありますので、どんどんどんどん行政として対応しなければいけない数というか、人数が多くなってますので、そういったことを予期して、1月中旬からいろいろ策を講じてきたところです。

――第6波で一番、対応を変えなくてはと思われたところは。

現在、感染症法上の2類相当の下に、すべてのステップが行政を介するようになっています。例えば「濃厚接触者」という概念がありますよね。あれはインフルエンザにはありません。他にも、例えば学校も、インフルエンザで学級閉鎖することはあると思いますけども、基本的にはその学年全体を閉鎖するとか、あるいは学校全体を閉鎖するとか、そういったことはインフルエンザでは行いません。

しかしながら(新型コロナは)「濃厚接触者」という概念もありますし、まだまだわかってないところもありますので、学年閉鎖とか学級閉鎖とか、一校丸ごと閉鎖してしまうとか、そういったこともありますので、その度ごとに、やはり行政として保健所も入って対応する必要があります。保育園でも、今いろいろ問題になってると思いますが、感染者が出るとすぐに(保健所が)入り、濃厚接触者を定義して、PCR検査を行う…そういったことを今、全国各地で行われていると思います。

やはり全てのステップが今、2類相当なのでやむを得ないと思いますが、行政が入るってことになってしまって、社会として感染症に、社会として病気に向き合う壁がすごく高くなっているなっていうのは感じます。

■3回目ワクチン接種 どう進める?

――ワクチンの横浜市内での接種の状況、そして計画を伺いたいです。どうスムーズに進めようとされているのでしょうか。

1回目・2回目の接種が昨年に行われたわけなんですけども、主に5月、6月ぐらいですかね、その時には少し全国的に話題になったかもしれないですけど、横浜市としてもいろいろ、予約が取れないという状況になりました。それは対象者、希望者に見合うワクチン供給がなかった段階で、多くの方、市民の方にご予約をいただいたので、電話の窓口もパンクしましたし、そもそもインターネット予約でのシステムがあまりなかったのです。

予約できるクリニックの数も限られていましたので、インターネットでの受け入れ口、あるいは電話応対の受け入れ、そういったものが不十分なまま、またワクチン供給も対象者希望者に見合った数がないまま、予約を開始してしまったので、予約がパンクしてしまいました。市民の方にご迷惑をおかけしてしまったという事情がありました。その反省と経験を踏まえて、今回は混乱がないこと、かつ、できるだけ迅速にワクチンの接種をお届けすること。その2つの両立を実現できるように、今回、予約・接種の計画を設定しました。

――すでに高齢者の予約が始まって1週間くらいだと思いますが、実際の埋まり具合は想定と比べると。

はい。現在、比較的、順調に予約をいただいていると思います。これは私が個人的に聞いただけなので、代表的な意見かちょっとわからないのですが、非常にスムーズな予約ができたというようなことを私の関係者からの声を聞きました。

――2月7日、岸田総理は、1回目・2回目の接種時のように、菅前総理がやったように「1日100万」という目標を立てました。つまり、当時の1回目・2回目と同じぐらいの態勢で頑張らないといけないという状況になると思いますが、そのくらいの態勢は取れていると。

ワクチンに関しては、2回目の接種から6か月以上経過しているという条件のもとで、どれだけ早くワクチン接種をできるかということが重要になってきます。加えて、混乱がないように接種体制をお届けすること、その両立を目指していまして、横浜市は高齢者――1・2回目の接種を終えた65歳以上の高齢者が約86万人います(高齢者全体で約93万人)。この86万人という数は、かなり多いと思うのですが、この一般高齢者の方が2月中に予約の目処が立ち、そういった接種に向けて安心できるような態勢を作ったつもりです。

――教職員、保育士の方に優先的に接種する…1・2回目接種であったようなことは、3回目では考えていますか。

(株式会社)ディー・エヌ・エーさんが、ご自身の職域接種の会場を横浜市の教職員にも開放していただけるというお申し出をいただきまして、ここ全教職員の3割ぐらいのキャパシティで、そういった接種を進める予定です。

また今、そういった教職員含め、エッセンシャルワーカーの方に皆さん…65歳未満の方が多いと思いますので、いかに早く、6か月たち次第すぐに受けていただけるようにするかというところを、さまざま講じているところです。

実際はですね、3月10日、15日ぐらいからは6か月間隔で全部、横浜市は計画しています。ですので、3月上旬ぐらいの方が、例えば7か月とかなってしまっているので、その方々をどうやって短く受けられるようにするかというところを、今、対策を講じているところです。

■保健所ひっ迫への対策は? カギは『重点観察』

――保健所のひっ迫ですが、先日、日本テレビで鶴見区の福祉保健センターを取材し、もう以前と違って重症化リスクの高い方にのみ、電話連絡をしている。ただ、それでも対象者が倍増している状況では、なかなか職員の方にとっては、負担は簡単には減らないと思う。今後、保健所での業務の負担を軽くしていく策としては、どんなことをお考えでしょうか。

今、すでに全国的に対象者を絞り込もうと…リスクの高い方に絞り込もうというようなことが議論されて、神奈川県も1月24日週くらいから適用になっていると思います。沖縄県の状況を見て、「濃厚接触者のフォローアップが、かなりの数に及ぶ。これは確実に保健所の負担になる」と予想していました。多くの方は、リスクを軽症や無症状のままでとどまっていますので、重症リスクの高い方を適切にフォローアップして、早く必要な治療をお届けする。この視点が重要だろうと思います。

というのは今、治療薬にしても抗ウイルス薬にしても中和抗体薬にしても、発症から何日以内に投与しなければいけないという縛りがありますので、何日以内に届けるためには、やはり保健所の方で、重症化リスクの高い方を早く同定して、観察のエフォートをつける必要があると考えました。全国的には早い方だと思いますけれども、横浜は1月中旬から「重点観察対象者」を定義して運用しています。

一方でコロナ対策は、これらの取り決めは都道府県単位で行うことになっております。なので神奈川県の方にも相談をして、必ずこういう状況になるので…こういった保健所業務のひっ迫を軽減する措置が必要となるので、「『重点観察対象者』の運用をお願いします」と申し入れまして、横浜市からの提案を採用していただいて、現在、神奈川県全体でそういった運用をしていただいているかと思います。

(横浜市では)一日3000人とか4000人の感染者が報告されているのですが、だいたい3割から4割が、重点観察すべきという対象になっています。ですので、400人ですと(重点観察者が)1600人ぐらいですか。1000人から150人ぐらいのリスクがある方を同定して、健康観察をしていくということで、今、行っております。

保健所がひっ迫する――何をもってひっ迫すると言うかですけど、必要な治療を早くお届けするという観点から、やはり「ファーストタッチが遅れることがひっ迫」だと思うのです。そのファーストタッチ必要な方に、基本的にはその即日にフォローアップをお届けできているという状況です。

しかしながら今後、今の感染者数がさらに2倍とかになりますと、保健所のマンパワーに限界がありますので、ちょっと厳しくなるかなという予想はしているのですが、現時点では「重点観察対象者」という定義をいち早く取り入れたことによって、なんとか保健所のひっ迫を防ぎ、重症化リスクの高い方のフォローアップに注力をしているところです。

――1月25日に厚生労働省に出した指定都市市長会(全国の政令指定都市の市長会)の声明として、「統一的な基準で重症化リスクのある人をしぼり込み、継続的に観察」というのは(感染者数の)全件報告をこのタイミングでやめるべきというのでしょうか。

少し運用を見直した方がいいのでは、ということです。今やってる重点観察対象者の定義は、一旦届け出をしていただいて、その中で重症化リスクの高い方に絞って保健所が健康観察を行うというスキームです。しかしながら、全部の発生した方(感染者)を登録する必要があるかどうかっていうところも、そろそろ踏み込んで議論しなければいけないと感じまして、指定都市会の市長の皆様にご相談したところ、ご賛同をいただきましたので、指定都市の市長会を代表し、厚生労働省の方にそういった登録に関する運用の見直し――これは今後の将来を見据えて、そろそろそういった運用を見直すべきではないかというようなことを申し入れ、ご要請した次第です。

――リアルタイムで感染者数を今みたいに追いかける、今、神奈川で1万超えた、2万超えたみたいなのを追うことより優先すべきと。

はい。社会的リソースの効率的な配分に向けて、何が必要かという観点から動くべきだろうと思います。冒頭に申し上げた通り、やはり行政で様々な手続きを課していますので、それによって社会として病気に向き合う壁を高くしてしまっていると感じています。やはりその仕組みっていうのは、我々が作っているものですから、きちんとオミクロン株にあった対応をしていくべきではないかと感じています。

――実際、国に要望しましたが、なかなか反応が見えてこない。

国の方も言っていたのは、「問題に関しては十分認識しております」とおっしゃっていました。ただいま、すぐに運用をドラスティックに変えるっていうのは混乱を招く可能性もあると、私は思います。(国は)そういった大都市からの要望として、今後、検討していくということを言われていました。

■学校・保育所守るためには? 目指した『社会機能の維持』

――学校・保育園の維持のために学級閉鎖の基準を変えられました。

現在の新型コロナウイルスは、濃厚接触という概念があります。これはインフルエンザにはない概念で、やはり当初はコロナが発生した当初は、よくわかってない感染症ですし、広がった場合、特にデルタ(株)は、やはり重症化する確率とかも高かった。第5波の時はそうでしたよね。

第3波のときは、そもそもワクチンを打っていませんでしたから、高齢者を中心に重症化する方が増えました。第1波のときは特に感染、ウイルス自体のことがよく分かってなかったので、そういった濃厚接触者という概念を、定義することは自然だったと思うのです。そういったものが、現在もまだ運用されておりまして、小学校も感染をすると、インフルエンザですと、クラスの2割が感染すると学級閉鎖になります。30人学級ですと6人。ところが今、オミクロン株に関しては2人感染した場合で学級閉鎖となっています。

この基準自体は、私は妥当だと思うのですが、それがたとえば一学年に2クラスが出た場合は、その学年ごと全部休みにしてしまう。そういった運用は、各自治体で行われていると思うのです。そういったことがどんどん行われますと、いろいろ学年閉鎖でも全部、休みになってしまう。そういった学年が出てくると、一校丸ごと休校になってしまう。小学校の低学年の親御さんとかは、お子さんのために家に居なければならない。その結果、エッセンシャルワーカーを中心に社会に出られなくなる親御さんが増えている――そういったことがデータからも明らかになりましたので、学級単位で閉鎖をする方が妥当なのではないかと思いまして、先週か先々週から…先々週に、教育委員会と相談をして、そういった運用に切り替えたところでございます。

また保育園の方は、やはり一校、一つの園全体をお休みにする…ということを、できる限り控えたい。それもいろいろ状況を聞いてみますと、保健所がすぐに入れればいいんですけども、どうしても最初は2日、3日と時間が経ってしまうということにもなりかねませんので、保育園と市の方で協力をし、濃厚接触者に相当する方というものを定義して、次のステップに進む。そういったことで早く対応できるようにすることは、社会機能の維持のために必要だと考えまして、その措置をいち早く行った次第です。

――早期の対応を目指したものなのか、保健所の業務ひっ迫を軽減するものなのでしょうか。

両方だと思います。保健所に全て対応を任せるということになりますと、やはり回らなくなって、早期の介入というのができなくなります。その結果、社会維持にも影響が出てきますので、そこはもう、トータルで考えなければいけないことかなと思います。

――実際に学校閉鎖は減ったというデータは出てきましたが、今後、医療従事者の出勤にどう影響するか、フォローしていくのでしょうか。

今後もフォローアップいたしますし、また横浜市は抗原検査キット等を弾力的に活用する予定です。

抗原検査キットの不足が言われていますが、本市は医療者にお届けできる分については確保していますので、感染した医療者の方でも感染してる方は一定期間、隔離が必要だと思うのですけども、例えば濃厚接触者の方、国のガイドラインにもあります通り、濃厚接触者の方に関しては、毎朝ですね、抗原検査をやっていただいて、陰性であればお仕事に従事していただく。そういった運用をすることによって医者や看護師だけではないのですが、医療者はじめ、エッセンシャルワーカーの方々にできる限り勤務を継続していただける…そういったことを思いまして、抗原検査キットを弾力的に活用できる体制が整っています。もちろん抗原検査キットをどういうふうに使うのかっていうのはこれまで自治体の判断でしたので、世田谷区のように無症状の方にお配りするっていうこともありうると思うんですよ。

我々(横浜市)はエッセンシャルワーカー、社会を止めないということを考えてましたので、医師や保育士とか、教員の方々、あとは水道とか救命、そういった方々が勤務を続けられるという目的で購入していたんですけれども、ちょうど1月27日に国の方からも通知が出て、そういった検査のトリアージ的な考え方――検査をトリアージして使うようにというような通知がなされまして、ちょうど横浜市が考えていた方向が国としてもガイドラインの通知の中でお示しいただいたので、そのまま使いやすく、やりやすくなっています。

■“健康観察対象外”の不安感…解消するには?

――さきほど途中で聞くべきことだったのですが…健康観察の対象を絞り込んだ、それで、これは神奈川県の話ですが「自主療養」を導入した。今までであれば、健康観察の対象になっていたが外れる人がたくさん出てくる。その方は「オミクロンなのでリスクは低い」という判断の下だと思いますが、どうしても市民1人1人からすると「ちょっと置き去りにされた」「ちょっと心配なんで、電話をして相談をしたい…という時につながらない」という不安感を持つ――こういうところを、どう救っていくかっていうところが、同時に課題なのかと思いますが。

おっしゃる通りですね。自宅療養の方にも幅があります。重点観察を受けている方、それから、少しリスクが実は高くて、注意してほしい方。例えば、BMI25から30の方っていうのも、リスクは一定程度あるっていうことが分かっています。ただ、例えば25とか26っていうのは、結構、多いわけですよね。そういった方々に「きちんとリスクを持っている」ってことを認識していただいて、我々としても何らか対応しなければいけない。それとかなり無症状の方。いくつか段階に分かれると思います。

ですので、そのさっき話した「真ん中の方々」ですね、実はリスクを持たれていたり、BMIが26とか27だったり、あるいは少し症状が出てきているとか、そういった方々に早くコンタクトをすることが、すごく重要だと思います。といいますのは、やはり今、治療薬が出てきています。ファイザーのお薬ももうすぐ出ます。

それから期待しているのは塩野義(製薬)のお薬で、塩野義の薬はもう、無症状者まで使えますから、すごく期待しているのです。いずれにせよ、今、治療薬が利用可能ですので、必要な治療に早く届けるためには、早く適切なステップを踏まなければならない。それがインフルエンザであれば、例えばお近くのクリニックに行って、お薬を処方してもらうっていうことが可能だったのですが、そこが今、(コロナでは)そういうステップがありません。その代わりに、行政の方で一定程度、任務を負っています。やはりそういったミドルレンジの方に、きちんと早くアクセスをする態勢が何より必要ですし、医師会等とも協力してですね、今後も体制強化をしていかなければいけないと考えています。

■「第6波の先見据え…行政の役割の議論を今」

――お話伺って、行政として、自治体としていろいろ選択を迫られて、わりと自治体による判断で、すごく対応の差も生じるだろうなと思うのです。それは地域性や感染状況によりけりで、自治体別々の対応というのはあってしかるべきだと思うのですが、それでも国の統一的な基準ですね。新たな基準作りとか、先ほども「全件報告するのか」という論点を提起されて、これは議論すべき話だと思うのですが、そういった部分で国に求めたいことはありますか。

地域性によって起こっている問題にも、違いがあると思います。それぞれの地域で起こっていることの違いなどを踏まえていただいて、(国に)早く対応していただきたいというふうに考えております。

先ほどちょっと言いましたけど、ワクチンは、我々としてはもう11月半ばからオミクロン株の話を聞いて、「ブースター接種をさせてほしい」とは言ってたんですよね。12月21日から3回目接種が解禁になりましたので、そこでスタートダッシュと申しますか、どんどん接種を進めたいと思っていたのです。特に高齢者入所施設でクラスターが起こりやすい。クラスターが起こりますと高齢者の方なので重症化しやすい。そうすると病床がひっ迫しやすいということは11月の半ばぐらいから予見していましたので、早くからワクチン接種の許可をいただきたかったのですが、なかなか、そこが出遅れてしまったという事情がございます。

お薬の開発もそうですし、ワクチン接種もそうですし、治療提供体制に関しては、こういった病床のひっ迫とかですね、そういったことも予期できる、予期できた海外の状況を見てますと、とにかく感染の足が非常に速い。感染の足が非常に速い一方で、すべてが行政のステップが入ることになっていますから、やはりこういった社会全体としてのひっ迫っていうのは予想できたことでもありますので、そろそろきちんとそれに向けて動かないといけないのではと思っています。

6月ぐらいまでに今、対応考えるという風に総理もおっしゃっていたかと思うのですが、もう少し早く、そういった議論になるといいのではないかと、現場サイドでは思っております。次の第7波が起こるか、起こらないか、わかりません。ただ起こったときのことも、起こってからいろいろ行動したのでは遅いので、きちんとワクチン接種を進め、かつ、行政がひっ迫しないような感染法上の取り扱いも早期に議論する。こういったことで、社会として病気に打ち勝つことができるのではないかと思っています。

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