「特別職」の給与を引き上げ…国会で審議入り 首相も年46万円アップか…自主返納で調整も 【#みんなのギモン】
9日のギモンは「“給与アップ” 首相ら返納?」です。
首相や閣僚など「特別職」と呼ばれる国家公務員の給与を引き上げる、給与法改正案が国会で審議に入りました。
国民の給与は物価高に追いつかず苦しんでいる中、首相はアップするのか、そしてそれを返納するとはどういうことなのか。
◇“46万円”増額 なぜ今?
◇国民の理解を得られる?
まずはこちらからです。
今、首相たちがどれくらいの給与をもらっているのか。年間で首相は4015万円、閣僚は2929万円、副大臣は2809万円もらっています。これが給与法改正後は、首相は年間で46万円アップ、閣僚や副大臣は年間で32万円アップします。法律が成立すれば、今年の4月分の給与からさかのぼって差額が支払われるということです。
どうしてこのようにアップするのかというと、これは人事院が8月に「一般職の国家公務員の給与を引き上げるように」と勧告したことに合わせたものです。国家公務員(の給与)というのは、民間の給与水準などと比較して、公平になるように人事院という機関が勧告することで決まります。
特別職もそれに準じた形で、これまで給与の引き上げは行われて来ました。首相や大臣などの特別職は、かなりの重い責任を負う仕事で仕事内容も特殊、それに見合った額を支払わないと人材も確保できない。そういう点からも、一般職の給与が上がれば特別職の給与も上がるべきだと考えて運用されてきたということです。
野党からは「国民が物価高に苦しむ中で首相の賃金を上げることは、国民の理解を得られない」などと批判の声もあがっています。
立憲民主党は、特別職の中で国会議員が任命された首相や閣僚などについては当分の間、月給やボーナスを引き上げないという修正案を提出する考えを示しています。
さらに、野党だけではなく、自民党の高木国対委員長も「今の状況を考えると、首相や大臣などの給与を上げるということは、やはり少し厳しい」と身内からも引き上げないよう求める声が出ています。
こうした中、岸田首相は自らの給与の「引き上げ分」を「自主返納」する方向で調整に入りました。つまり46万円増えたら、その46万円を国に返すというわけです。また政府として、閣僚などの引き上げ分も返納する方向だということです。
さらに、政府はこのようにも説明しています。
松野官房長官
「首相や国務大臣等の給与については、内閣として行財政改革を引き続き推進する観点から、首相3割、大臣・副大臣2割、政務官1割の国庫返納を申し合わせ実施している。今般の法案を巡っては様々なご意見をいただいているところであり、政府としてどのように対応するかについては検討中であります。国民の不信を招くことがないよう努力を続けていきます」
実は、すでに2014年から首相は年収の3割、その他の閣僚は2割、自主的に返納をしてきていました。ですので、たとえ給与アップしても首相なら年額1218万円、大臣も592万円を返納することになります。
政府は、国民が望む賃上げの流れを止めないためにも首相らの給与アップは必要だとしています。しかし、物価高対策に取り組む中、首相の「引き上げ分」は自主返納することが適切だということで、松野官房長官の記者会見でも増額分は全て国庫に返納する旨を申し合わせることを発表しています。
今回の件に関して言うと、ルールに基づく運用ではあるわけです。大変な緊張感をもつ仕事の人々が適正な給与をもらう、それによって国民を幸せにする責任を果たす、これはおかしなことではないと思います。しかし、批判を受けたから返納してしまおうというのは、職責を果たしている説明がないままで残念だと思います。なので、こういったことがパフォーマンスと逆にとられかねない部分もあると思います。
実際、金額としても国の予算全体からすればそこまで大きな額になるわけではありません。ただ、国民からしますと、当然気になる金額でもあります。
ここでもう一つのギモン「国民の理解を得られる?」をみていきます。
納税者である国民の感覚からみたらどうなのか。今、岸田首相の給与は年額4015万円です。
たとえばG7(=主要7か国会議)のトップたちは幾らもらっているのかというと、アメリカ大統領は日本円で約6000万円、イギリスの首相は約2950万円をもらっています(9日時点の為替レートで計算)。
アメリカの大統領の年収は40万ドルと法律で決まっていて、今はかなりの円安ですから、1ドル150円換算で約6000万円となります。1ドル100円の時代の為替レートで換算すると4000万円ぐらいになるので、日本の首相とさほど変わらないとうことになります。
物価の変動を考慮した実質賃金(OECD.Statより作成)。日本も今年の春闘ではかなりの企業が大きく賃上げをしていますが、2022年までの調査分なので、今回の賃上げ分はまだ反映されていないものではあります。
1991年を100として、2022年までにG7、主な経済力をもつ国の賃金がどうなったかというのを比べています。各国が去年まで上がっている中、日本は30年ずっと伸び悩んでいます。
それに加えて、G7ではないですが、お隣韓国はというと、賃金はほぼ倍になっている。もちろん、韓国は元々の物価が低いですが、そういうことがあるにしろ、伸びているという状況です。
また、最新の数字をみても、賃上げが物価の上昇に追いついておらず、今年の9月まで、日本の実質賃金は18か月連続で前の年を下回っていて苦しい状況が続いています。
◇
日本の企業がしっかり利益を上げて、それを国民に賃金の上昇という形でもたらしていく経済政策、これを実行してほしいというのが、税金を納め、国民の代表として政治家を選んで託している納税者の気持ちだと思います。
(2023年11月9日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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