都内アパート暮らしから「木更津移住」…都心を離れても報道記者を続ける…新しい働き方とは?『every.特集』
日本テレビ報道局で働いている記者の目を通して、東京で働きながら離れた土地へ移住という新しいスタイルが見えました。結婚を機に持ち家や子どもなど将来の生活を考え、通勤手段を模索しながら一念発起して移住した社会部・赤坂記者のリポートです。
2023年12月。私、赤坂啓人は妻と一緒に、引っ越しの準備に追われていました。
そんな私の仕事は…
(中継の記者)
「私は今、2時間ほどここで取材をしているんですけども…こちらの地面を触ってみると、とても熱いんですね」
岐阜県で生まれ、3年前、日本テレビのグループ会社への就職を機に上京しました。日本テレビ報道局の社会部記者として働く中、2023年2月、同じく地方出身の妻と結婚。東京・板橋区の賃貸アパートで暮らしていましたが、日に日に、ある思いが強くなっていきました。
赤坂記者
「今後、子どもができたときとか、マイホームとかを建てたいってなったときのために、貯金をしたい」
都心の中古マンションの価格の高騰は続き、2017年から約45%も高騰。私たちは、都心で暮らし続ける未来を思い浮かべられませんでした。
東京を離れ、自然の多い場所で暮らしたい、という思いは膨らみますが、そこには大きな壁が。
赤坂記者
「記者ってなると事件とか事故とか、あんまりにも遠すぎると(現場に)向かうのに時間がかかる」
1分1秒を争う、報道の現場。テレビの記者が、東京以外に住んで働くことが可能なのか。
葛藤はありましたが、やはり自然豊かな環境で家庭を築く未来を諦められず、記者を続けながら暮らせる場所への引っ越しを決意しました。
半年間探して、見つけた場所は…
東京湾を挟んだ向かいの街、千葉県・木更津市。海に面していて、山もあり自然豊か。大型の商業施設もあり、観光地としても人気の街です。
ここに移住を決めたポイントは2つ。
1つは通勤時間。板橋の自宅から日本テレビのある新橋までは1時間ほどでしたが、東京湾アクアラインを渡る高速バスを使うと、なんと東京駅まで最短40分!会社までドアトゥードアで1時間あまりと、これまでとほとんど変わりません。
もし、アクアラインが渋滞・通行止めの時は、時間は掛かりますが、電車という手もあります。
2つ目は地価の安さ。東京駅から40km近い他の町と比べると1㎡当たり(駅周辺の住宅地)の土地の価格が安く、家が持ちやすいことでも人気です。
私の場合、東京と同じ広さの2LDKの賃貸アパートを探していたのですが、なんと8万円も安い!改めて、東京との違いを痛感しました。
しかし、増える生活費もあります。高速バスの定期代は、会社支給の通勤費を超えるため月1万3000円ほどが自己負担。
また、木更津で暮らすとなると、東京では持っていなかった、車が不可欠。車を購入すると、ローンと維持費で月々4万6000円の出費。それでも全体で見ると、ひと月あたり2万1000円、生活費を節約できる計算です。
――(この移住は)いいことばかり?
赤坂記者
「そうですね…」
妻
「デメリットもあるよ。実際住んでみないと分からない」
都心で仕事をしながら、住まいは東京から離れることに不安は尽きませんでした。しかし、2023年12月、引っ越しに踏みきりました。
赤坂記者
「木更津の街が見えてきました…さらば東京」
こちらが木更津の新居。妻が特に、気に入っていたのが…
妻
「憧れのカウンターキッチン!ここから全部見えるのがいい。ワクワクする新生活!」
翌朝、木更津からの初出勤。
赤坂記者
「バスターミナル東京八重洲行き。これに乗っていきます」
「海の上を走っているのがいいですね。これが新しい出勤風景です」
都内の電車通勤では見られない爽快な景色。必ず座れるのも高速バスならでは。予定通り約40分で東京駅に到着。
赤坂記者
「意外と快適で、すぐ着いたっていう印象でした」
不安だったバス通勤ですが、滑り出しは思いのほか順調でした。
休みの日には、車で出かけることが増えました。
妻
「2週に1回、多くて週に1回くらい出かけてない?待って、めっちゃ海きれい!」
東京での休日は家でゴロゴロして終わってしまうことが多かったので、これは大きな変化。
妻
「とても昼起きたとは思えない充実ぶり」
さらに…
妻
「最近、夜寝るときにカエルの音が聞こえる」
赤坂記者
「こっち来てから季節の移り変わりを感じるようになってきた」
妻
「それはそう。本当に」
ふるさとにも似た雰囲気に癒やされます。
食費にも嬉しい変化が。憧れのカウンターキッチンで妻が腕を振るうことで、東京にいたときより外食が減りました。
引っ越したことで減った生活費2万1000円と食費1万3000円の節約で月3万4000円節約ができる月も。
いいことばかりと思いきや、恐れていた事態も…
赤坂記者
「アクアラインが結構混んでいるようなので、今日は安全をとって電車で行きます」
この日の出勤は、午後6時の遅番。渋滞を事前に察知し引っ越しして初めての電車通勤に切り替えました。
しかし…
赤坂記者
「まさかのホームを間違えて電車に乗り遅れました。次の電車は30分後なので遅刻確定です」
初めての電車通勤で、ホームの場所を勘違い。
赤坂記者
「やばい。遅刻してしまった。やらかしたー」
30分遅れで会社に到着。引っ越し後、初めて遅刻をしてしまいました。
赤坂記者
「まだ間に合うなって思って次の電車調べて、まさか30分後と思っていなかったので」
「(東京に住んでいたときは)こんなに大きい遅刻はなかったですね。今後気をつけます。すみませんでした」
さらに4月には、事故渋滞に巻きこまれ、1時間半という遅刻をしてしまいました。より一層、出勤前の渋滞チェックや余裕を持った出社を徹底しています。
木更津への移住について上司はどう思っているのか。直接、聞いてみました。
勝田 社会部長
「社会部の記者って何かあったらすぐ駆けつけるために、本社とか記者クラブの近くに住むというのが当たり前でしたし、僕もそうでした」
勝田部長
「だけど、社会部ってカバーしているエリアは広いし、それぞれのライフプランに合わせて住む場所も決めると、そうしていきたいなと思っています」
勝田部長
「例えば本当に千葉とか房総エリアで、やっぱり大きな事件とか災害とかが起きたときにすぐに駆けつけて取材をしてもらいたい」
移住で職場に迷惑はかけられない。課題は残りますが、妻と選んだ新たな暮らしのかたちを守るために、なんとか工夫して答えを見つけたいと思っています。
妻
「キャンプとかでしか得られないものもあるやん。楽しいよね」
赤坂記者
「子どもとか、家とか、将来の話がマジで増えたなって思う」
妻
「自分がここに住んでいるなって思う。ずっと先まで住んでいる未来が見える」
赤坂記者
「あー確かに」
(9月25日『news every.』16時特集より)