全国の「空き家」900万戸に……過去最多 「放置空き家」多い地域は? 京都市は全国初の“空き家税”【#みんなのギモン】
そこで今回の#みんなのギモンでは、「空き家900万戸 過去最多」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。
●放置空き家 どうして増える?
●全国初の“空き家税”も
「皆さんの家の近くにも空き家はありませんか? 総務省の4月30日の発表によると、全国に今、空き家が900万戸あります。これは過去最多で、5年前から51万戸増えました。1993年は448万戸だったため、この30年で約2倍になっています」
「900万戸のうち515万戸は、賃貸や売却用で買い手や借り手を待っている、または別荘として使われているものです。着目したいのは残りの385万戸で、誰も住む予定のない『放置空き家』。これが今、全国的に増えていて問題になっています」
小野解説委員
「一昨年に東京・世田谷区の高級住宅街を取材した映像があります。その至る所に空き家が存在していました。世田谷区には約5万戸の空き家があります」
「状況を見ると、ゴミが投げ入れられていたり、樹木が伸び放題で生い茂った木の実を鳥が食べに来て、そのフンに近所の人たちが悩まされたりしていました。さらに、空き家が放火される事件も起きています」
鈴江奈々アナウンサー
「子どもの通学路を一緒に歩いた時に空き家があって、地震とかあった時に崩れてこないかなと心配になるようなものもありました。何とかならないかな、と感じますね」
小野解説委員
「空き家は、倒壊や火災の恐れがある他、ネズミや虫が発生します。災害が起きて倒壊した時に、所有者が分からず解体できないことで復旧の妨げになる恐れもあります。世田谷区で最も多いトラブルは、樹木がはみ出してくることだそうです」
森圭介アナウンサー
「あります! まさに私の家の目の前がかつて空き家だったんですけれども、はみ出し放題で、落ち葉を誰も片付けないので、それを掃除していました」
小野解説委員
「はみ出しているものはこちらで切るわけにもいかない、と思ってしまいますもんね」
小野解説委員
「住宅の総数に占める放置空き家の割合(2023年、総務省調べ)を見てみます。最も高かったのは鹿児島県で13.6%。高知県は12.9%で、徳島県や愛媛県も高いです。西日本がやや高い傾向にあるようです」
「東京都は2.6%、神奈川県は3.2%、大阪府は4.6%ですが、家の絶対数が多いため放置空き家の数自体、とても多くなっています」
小野解説委員
「国土交通省の調べによると、放置空き家の7割以上が一戸建てで、そのほとんどが木造でした。そして放置空き家に限らず、空き家全体で見ると所有者がその空き家を取得した経緯を尋ねると、最も多い約55%が相続でした」
「所有者の3割は、車や電車などで1時間以上の遠い場所に住んでいます。居住地が遠くなるほど、空き家を管理しに行く回数が少なかったと分かりました」
森アナウンサー
「私の両親も少し離れた所に住んでいるので、もしその両親から相続ということになると、まさにこのケースに当てはまります。両親の家どうしようかなと、そろそろ考えなきゃいけないなと思っています」
小野解説委員
「空き家にしておく理由を聞くと、『物置として必要』と言う人や、『更地にしても使い道がない』『解体費用をかけたくない』と言う人もいます」
桐谷美玲キャスター
「そういった理由は全国共通だと思うんですが、空き家率に地域によって差があるのはどうしてなんですか?」
小野解説委員
「確かにそこが気になります。地方と都市部だと何が違うのか。世田谷区の担当者に聞きました。住人が亡くなった後、土地の価値があるからこそ親族が権利を主張し合って相続が進まないケースがあるといいます」
「そして、親族関係が希薄になって知らない親族から遺産相続するのが怖く、相続手続きをしないというケースも。家族がいない持ち主が遺言を残していないため、相続人がいないこともあるようです」
小野解説委員
「地方ではどうでしょうか。鹿児島大学の小山雄資准教授は『特に地方では人口が減少していて、都市部に出て戻らない人がいる。そうした人たちが実家を売ったり貸したりすることができず、そのまま放置して受け継がれることのない空き家が多くある』と言います」
河出奈都美アナウンサー
「今も空き家で困っている方は多くいらっしゃると思いますが、何とかして減らしたり活用したりできる方法はないんでしょうか?」
小野解説委員
「2026年以降ですが、京都市は空き家や別荘など普段人が住んでいない住宅に課税する“空き家税”を導入する予定です。転勤で一時的に不在の場合は除きますが、どのぐらいの期間住んでいないなどは関係なく、居住実態がない家は全て対象になる可能性があります」
鈴江アナウンサー
「別荘に対しても“空き家税”がかかるんですね」
小野解説委員
「京都市には10万戸を超える空き家や別荘があるといいます。税を導入すれば、住宅の所有者は実際に住もうかなと思うかもしれません。売却したり、賃貸に出したりしようかなと思うかもしれません。そういったことを促す目的があるということです」
「京都市によると、空き家の活用を促す新しい税は全国で初めてです」
「鹿児島・指宿市の川尻地区では、空き家の家財道具の処分などを無償で請け負ったり、清掃した空き家を登録して若い世帯の移住者に貸し出すことで橋渡しをしたりしているといいます。これまでに延べ27世帯、72人が移住してきたということです」
桐谷キャスター
「こうした取り組みで空き家が減って、住む人が増えたらいいですよね」
小野解説委員
「小山准教授も『今後も空き家の数が減っていくことは考えにくい。使いたい人がいる場合に、うまくつなげる自治体などの取り組みが大事になってくる』と指摘します」
小野解説委員
「国も対策を強化しています。政府は空き家の放置を防ぐため、去年12月に空家対策特別措置法を改正しました。従来は居住用の建物が建っている土地については、固定資産税が6分の1になる優遇措置がありましたが、この優遇措置を受けにくくするようにしました」
「これまで自治体は、倒壊の恐れなど危険性が高い場合に限って『特定空き家』に指定し、優遇措置を受けられないようにしてきました」
「今回の改正では、窓ガラスが割れている、樹木が伸び放題など放置されている状態でも、自治体が新たに『管理不全空き家』に指定し、自治体の指導に従って改善しなかった場合には、固定資産税の優遇措置を受けられなくなるようにしました」
「固定資産税は更地と同じ扱いになり、これまでの最大6倍払わなければいけなくなるため、空き家を放置しにくくなったということになります」
鈴江アナウンサー
「それぞれ個人が、更地にするなど対応しやすいインセンティブがまさに作られているわけですけれども、更地にするだけじゃなくて、空き家そのものを新たな形に生まれ変わらせる、利活用を進めていく取り組みも期待したいですね」
小野解説委員
「空き家が多いと、まちの活気も失われていきます。ぜひ対策を講じて、放置される空き家を減らしていけるといいですね」
(2024年5月1日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)
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