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カメラが見た捜査本部 壁一面の捜査カレンダーに警視庁の執念が… “ルフィ事件”の舞台裏

2024年6月15日 8:02
カメラが見た捜査本部 壁一面の捜査カレンダーに警視庁の執念が… “ルフィ事件”の舞台裏

日本を震撼させた指示役「ルフィ」らによる連続強盗事件。SNS、闇バイト、そしてフィリピンからの指示。首謀者らが姿を見せずに犯罪集団を裏で操り、犯行に及んだこの事件は警察へのかつてない挑戦だった。全国8つの事件で指示役などとして4人の男が逮捕・起訴されたが初公判のメドはまだ立っていない。警視庁が威信をかけてつくった異例の捜査態勢。捜査員およそ50人が執念の捜査を繰り広げた捜査本部の内部の取材が初めて許された。(日本テレビ警視庁クラブ)

■担当の壁を越えて…前例のない捜査本部を設置

2022年から2023年にかけて全国で相次いだ強盗事件。実行役が次々と逮捕されてもなお、事件は止まることはなかった。そして、2023年1月19日。最悪の事態が起きた。東京・狛江市で90歳の女性が死亡した強盗事件が発生。一連の強盗事件で初めての死者が出た。

実行役らへの捜査で指示役の名前として出てきたのは「ルフィ」「キム」といったハンドルネーム。SNSで闇バイトとして実行役らを募り、強盗事件を起こす首謀者たちの存在。実行役らは「ルフィ」が誰なのかその正体を知る者はいなかった。

捜査で浮上したのはフィリピンの収容所にいた特殊詐欺グループの幹部・渡辺優樹被告ら4人の存在。警視庁は部署の垣根を越えた前例のない「総合捜査本部」を設置。警視庁刑事部で殺人や強盗などを扱う捜査一課、詐欺などを扱う捜査二課、窃盗などを扱う捜査三課で合同チームを結成した。さらに全国から捜査員が加わり約50人態勢で捜査が行われた。

そして、およそ1年かけて警視庁は全国8つの事件で指示役を特定し逮捕。4人全員が一連の強盗事件の指示役などとして起訴された。

■捜査員の執念を「映像で伝えたい」

日本テレビ警視庁クラブも総力で取材し連日報道した“ルフィ事件”。フィリピンにいた男たちを強盗事件の指示役として逮捕するというのは並大抵のことではないと感じていた。そして、「狛江事件」で指示役を特定し逮捕に至った時、捜査員が捜査幹部に涙しながら報告に行ったという話を聞き、この大きな事件の裏側に捜査員の熱意と執念の捜査があったことを絶対に伝えたいという思いが強まった。テレビ報道だからこそできる「映像で伝える」ことにこだわりたかった。

■「特命チーム」 捜査本部に日本テレビのカメラが…

2024年1月。警視庁の総合庁舎の中にある捜査本部に日本テレビのカメラが初めて入った。その部屋には、この事件の捜査にあたるため招集された捜査一課、二課、三課の捜査員たちの姿があった。

まず目につくのは部屋の一番前に掲げられた渡辺優樹被告、今村磨人被告、藤田聖也被告、小島智信被告4人の写真。フィリピンの入管施設に収容されていた特殊詐欺グループの幹部たち4人を「強盗の指示役として挙げる」という気持ちを込めて捜査本部設置の日に壁に貼ったという。写真の横には4人が使っていた「ルフィ」「ミツハシ」などの異名も記されていた。

4人の写真の横に大きく貼られていたカレンダー。そこには捜査のスケジュールが事細かく記されていた。逮捕から起訴、捜査員の出張予定などが赤い文字でぎっしりと書き込まれていた。

そして、今回の捜査でカギを握った「スマートフォンの解析」。捜査本部の中には実行役らから押収したものやフィリピンで押収されたもの含め、70台以上のスマホやタブレット端末の解析にあたった部屋もあった。中でも捜査本部が着目したのはリーダー格・渡辺被告のスマホ。誤ったパスコードを入力すると開けられなくなる恐れがあり、一度の入力にかけることに。6桁のパスコードの組み合わせは100万通り。捜査本部は渡辺被告に関するすべての資料やデータなどを洗い出し、泊まり込みの作業が続いた。

そして、たどり着いた数字を入力し、スマホが開いた。スマホからは事件現場や被害者の写真など重要な証拠が出てきて、渡辺被告を立件する突破口となった。

■“解散”の日 捜査本部で語られた言葉

2024年1月31日。総合捜査本部、解散の日。

警視庁の重松弘教刑事部長は解散式で集まった捜査員に向けてこう語った。

「指示役の特定・検挙は相当困難という見方が広がる中、この難局を乗り切るためには刑事部の総力を結集しないといけない。そして必ずできると固く信じて、そこに疑問を差し挟む余地は一切なかった」「再び大きな難事件があったらここにいる全員を再度招集する。そして一緒にまた汗と涙を流したい」

難事件を解決するために前例のない捜査本部を立ち上げたリーダーの決断。仲間を信じて共に戦った1年間。そして、それに応えた捜査員たち。

チームを引っ張ってきた捜査一課の堀田明係長が1年共に戦ったチームへの感謝と共に語った言葉は。

「最初は雲をつかむような話だったけれども被害者の気持ちに少しでも応えることができたんじゃないか、これが刑事の仕事の一番の役割なんじゃないか」

この気持ちこそが、このチームが難事件の壁を打ち破る大きな力となった。SNSを利用した犯罪はこれからもなくなることはない。“ルフィ事件”はそうした犯罪も決して見逃さない、というメッセージでもあり、SNS時代の犯罪捜査に新たなフェーズを切り開いたと感じた。

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