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学校の先生“時給200円”も?…部活顧問の勤務実態は【#みんなのギモン】

2024年10月19日 13:48
学校の先生“時給200円”も?…部活顧問の勤務実態は【#みんなのギモン】
日テレの情報提供サイトに、現役の中学校の先生から「部活動の顧問がたいへんな負担になっている」という投稿がありました。全国の公立の教職員を対象にした調査からも、その実態が浮かび上がってきました。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「学校の先生“時給200円”も?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●1か月に“休み2日”自腹も当たり前…
●負担減らすには?プロに委託も

■学校の先生にのしかかる負担

小野高弘・日本テレビ解説委員
「学校の先生が “時給200円”。働かされ放題で手当も出なくて、時給200円になるときもある。こんなのおかしいと言っている先生がいる。先生たちが疲弊すると、子どもたちの学びに影響が出かねません。この問題について考えたいと思います」

小野解説委員
「関東の公立中学校の現役の教員Aさんから、日テレの情報提供サイトに投稿をいただきました。『部活動で泣いている教員を救ってもらいたい。中学の教員は人間らしい生活が送れていない人が多い』とおっしゃっている。ふだん、ある教科の担任だが、テニス部の顧問も任されている。部活動がたいへんな負担になっているというのです」

鈴江奈々アナウンサー
「子をもつ親として…人間らしい生活が送れていない状況ってどうなっているんだろうと心配になりますね」

小野解説委員
「まず1つめのポイント。『1か月に“休み2日” 自腹も当たり前…』どのような実態なのか。記者がAさんに会って話を聞いてきました」

■着任時には「自動的にどこかの部に名前が…」

関東の公立中学校 教員Aさん
「(毎年)4月1日に着任したときにはもう、自動的にどこかの部に名前が入っているという状態です。『ああ、やっぱりやらなくちゃいけないんだ』という気持ち。断れないのが実態です」

小野解説委員
「断れずに始めた部活…Aさんの平日のほぼ毎日のスケジュールです。朝7時ごろに学校に出勤します。なぜなら部活の朝練があるから。この学校では、部活に必ず立ちあわなければいけないルールがある」

「午前8時45分から午後3時40分まで授業。午後4時からまた部活。終わるのは午後6時ごろ。これで終われない。その後も学校に残ってやることが山のようにある。残業です。プリントの採点、翌日の授業の準備、学校行事の運営に関する作業など多くの仕事を抱えているといいます」

小野解説委員
「帰宅できるのは午後9時ごろ。夕食や風呂を済ませた後、学校でできなくて家に持ち帰った授業の準備や採点をやるそうです」

山﨑誠アナウンサー
「充分な睡眠時間がとれていないということと、プライベートの時間がまったくないですね」

小野解説委員
「休日も部活の試合があるんです。遠方で試合がある場合、午前4時半に家を出て、帰宅が午後8時ということもあるそうです」

「土曜日の試合が雨で延期した場合、翌日が予備日に設定されているため、日曜日に自分の予定を入れることができない。今月の休みは、たった2日」

■「定額働かせ放題」

小野解説委員
「さらに追い打ちをかけるのが、一部の保護者の声。週末、部活を休みにすると、『土日も部活をやってくれないと強くなれない』『部活をやってくれないと親が家にいないといけない。土日も学校で子どもを見てほしい』と言われたといいます」

「さらに、Aさんの指導方法に批判的な言葉をかける保護者もいて、気持ち的にも休めなくなりますよね」

忽滑谷こころアナウンサー
「さまざまな考え、さまざまな事情がある家庭、それぞれだと思いますが、そのしわ寄せが先生にきているというのが、つらいですよね」

小野解説委員
「Aさんは次のようにも話していました」

関東の公立中学校 教員Aさん
「10時間やろうが(休日手当は)3時間分しか出ないので、時給に換算すると下手すると“200円”。もう定額働かせ放題ですよね」

■時間外労働の実態は…部活動の有無で勤務時間に差

小野解説委員
「全国の公立の教職員を対象にした調査で、1か月の時間外労働の実態が見えてきました。部活顧問をしてない先生方でも88時間ある。それが、部活の顧問をしていて対外試合などがある先生方はさらに多い。100時間超えている」

「調査に答えた多くの先生方が『部活の指導の時間を減らしたい』と言っている。全国的な傾向になるんですよね」

刈川くるみアナウンサー
「私は中学の頃バスケ部で、朝6時から練習をしていて、先生が付き添ってくれていた。そのときは、私は成長できたと思っていましたが…このデータを見ると大変な中、付き合ってくれていたんだなと、今になってようやくわかります」

小野解説委員
「申し訳ないというか、ありがたいというか」

■部活顧問の負担は時間だけではない…

小野解説委員
「そして先生方の負担と言えば、お金の自腹もあります。さきほどの教員Aさんによると遠方、たとえば県をまたいで試合がある場合、時間に間に合わせるため、高速道路を使わざるを得ない場合がある。でも高速代は出ない。だから自腹なんです」

「また、交通費は支給されるが、1キロあたり10円ほどと(学校のルールで)決まっていて、結局それでは足りなくて自腹を強いられてしまう」

「また顧問になると、審判の資格を取得するのにお金がかかる。自分のラケットやテニスウエア、こうしたものに学校からお金は出ないので自腹だという」

■学校教員『自腹の経験あり』約8割

小野解説委員
「こんな調査も。全国の小中学校の教員の自腹の実情を専門家が調査しました(2022年度 1034人回答)」

「2022年度の1年間で、8割近くの教員が『自腹の経験』があるそうです。どんな時に自腹だったか、5人に1人は部活動で自腹をきった…」

「調査した千葉工業大学教育センターの福嶋尚子准教授は『多くの学校で教員が部活動に参加することが当たり前になっている。教員が自腹をきらなければいけない理由は、授業と違って、部活動には学校側からほとんどお金がでない。望まない経済的負担が起こっているのが現状』ということです」

鈴江アナウンサー
「子どもたちがいろんな意味で育まれる素晴らしい部活動ですが、先生たちの犠牲の上に成り立っているというのが大きな課題ですよね」

小野解説委員
「どうすればいいか。2つめのポイント『負担減らすには?プロに委託も』。先生の負担を軽くしようと、外部の人材に部活動の指導を委託する動きが出ています。その学校を訪ねてみました」

  ◇

小野解説委員
「訪ねたのは東京・杉並区の区立小中一貫の学校です。体育館では、バスケットボール部が練習中でした。バスケ部の生徒の数多い。人気なんです。指導していたのは1人の女性」

コーチ
「いくよー!ディフェンス見てよー!」

小野解説委員
「女性はバスケットボール部コーチです。実は元プロのプレーヤーで、引退して今コーチとしていろいろな学校などで指導しています。区の予算で業者に部活動の管理を委託しています。業者と契約した外部コーチが学校に派遣される。学校側は業者、コーチとしっかり情報共有をしながら安全管理や試合の引率も、基本的に委託している」

バスケ部員
「ドリブル1つ1つ無駄がなくて、見るだけでお手本になる」

元プロバスケ選手 森本由樹 外部コーチ
「子どもたちの良さも引き出しつつ、ベース(基礎)のところはしっかりと伝えてあげたいなと思います」

小野解説委員
「一方で、学校側のバスケ部の顧問の教員はその頃、教室にいました」

小野解説委員
「今は何をしている?」

バスケ部顧問 伊庭義人 指導教諭
「あしたの国語と数学の教材の準備をしています」

小野解説委員
「以前部活に立ち会っていた時と比べて、今は何が変わっていますか?」

バスケ部顧問 伊庭義人 指導教諭
「(以前、帰宅時間が)午後9時の時もありました。現在は午後4時45分定時で帰れる日もありまして、自分の趣味にあてたり家庭のことをやったりする時間に使えています」

  ◇

小野解説委員
「外部委託の制度には、自治体側が国に申請すればお金の補助は出るが、ごくわずかしか出ない。そのぶん自治体が負担しなければいけない。お金のない自治体が多いなかで部活の外部委託は、全国ではほとんど進んでいないというのが現状です」

小野解説委員
「根底にあるのは、教員不足。来年度には教員の数、およそ7700人増やすことを文科省は目標にしているが、それだけのなり手が本当に確保できるのか。教員の待遇改善、必要です」

(10月18日『news every.』#みんなのギモンより)

【みんなのギモン】

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