ダウン症の人が集うアトリエ 感性輝く作品が企業コラボで反響相次ぐ 夢は“ダウン症の人たちと一緒に暮らす街”の実現 「知ってもらうことで、みんな一緒に生きていけたら」
ダウン症の人たちが描いた作品がアパレルや化粧品とコラボ
伊勢市・おはらい町の土産物店「伊勢美人本舗」でひときわ目を引く、棚一面に並べられたハンドクリーム。その色鮮やかなパッケージを、特別な思いで見つめる女性がいました。
志摩市に住む上田布三子さん。「コーラス」と名付けられた絵は、娘の幸絵さんが描いたものです。
上田布三子さん:
「うれしいの一言に尽きます。娘は亡くなったので…」
2023年12月に44歳で亡くなった幸絵さんは、ダウン症でした。
幸絵さんが遺した作品が多くの人の目に触れるきっかけを作ったのが、三重県志摩市でアトリエを構える佐藤よし子さんです。
佐藤よし子さん:
「(ダウン症の)みんなの作品がまだまだ知られていないので、きれいな作品を眠らせておくのはもったいない」
パッケージに使われているイラストは、佐藤さんと交友のあるダウン症の人たちが描いたものなのです。
感性輝く作品が生まれる ダウン症の人が集うアトリエ
魅力的な作品が生み出されている小さなアトリエ。佐藤さんは、ここで夫の寛厚さんとともに、作品が生まれる瞬間を見守っています。
この日、画用紙に向かっていたのは、さちかちゃん(10)とえいとくん(10)。2人ともダウン症の小学生です。
カラフルな魚の絵を描くさちかちゃんの向かいで、画用紙の端に絵の具を塗り始めたえいとくん。さちかちゃんの紙にはみ出しそうになりますが…佐藤さんが止めることはありません。
絵のテーマも、描き方も、子どもたちの発想を妨げないのが、このアトリエのルールです。
すると、どんどんと塗り進めていたえいとくんが、黄色の隣に紫色を塗りました。対照的な色を組み合わせて際立たせる「補色」というテクニックです。ダウン症の人たちが誰に教わるでもなく持っているという色彩感覚。その感性が発揮された作品に、佐藤さんは魅了されました。
佐藤よし子さん:
「絶対すごいのが出てくるんだろうなと見てるから、いつもワクワクしながら見せてもらうんです」
ダウン症の人たちとの出会いは、画家の両親がアトリエを構えたことがきっかけでした。
そこに通っていたひとりが幸絵さんだったのです。小学校のころから大の仲良しだった2人。佐藤さんにとって、ダウン症の人たちは一緒にいるのが当たり前の存在でした。
しかし、成長するにつれて、ある思いが…。
佐藤よし子さん:
「みんなは高校とかに一緒に行かないんだとか、大学に一緒に行く選択肢が彼らにはないんだと思ったときに、ものすごく落ち込んで」
そこで立ち上げたのが、「ダウンズタウンプロジェクト」。芸術を中心に、ダウン症の人たちと一緒に暮らす街を目指しています。
その活動の一環が、大手アパレルブランド「Soffitto」のスウェットや、人気コスメブランド「LUSH」のギフトボックス、「金虎酒造」の日本酒など、多種多様な企業とのコラボ。自由な発想で描かれた作品を起用した商品は、相次いで反響を呼んでいます。
佐藤さんは、商品を手にした人がダウン症のことを知るきっかけになることを願っています。
佐藤よし子さん:
「こんなにすてきな感性を持った人たちなんだとか、こんなに優しいんだとか知ってもらうことで、みんな一緒に生きていけたらいいなって思うんです」
ダウン症の人たちが自分らしく生きられるように、今日も仲間たちと夢を描きます。