日本最古の人骨化石「牛川人骨」はクマの骨だと判明 関係者は急な対応を迫られる状況に 愛知・豊橋市
「牛川人骨」とクマ骨の比較(東京大学総合研究博物館人類先史部門提供)
愛知県豊橋市牛川町で1957年に発見され、日本最古の人骨化石とされていた「牛川人骨」について、クマの骨であるという研究成果が12月1日、東京大学総合研究博物館の諏訪元特任教授らの研究グループから発表されました。
今回の発表を受け、これまで市民の注目を集めてきた存在である牛川人骨の扱いを大きく変えざるを得ない状況に、関係者は急な対応を迫られています。
研究グループは、牛川人骨の断面画像の3次元モデルをクマの骨と形状比較し解析を進めた結果、これまで人骨の一部とされてきたのはクマの前腕と大腿部の骨だと結論しました。
また、形態的な特徴のほか、当時の本州に生息していた哺乳類の構成を考えると、今から約2万年前のヒグマの骨である可能性が高いとわかりました。
牛川人骨は豊橋市牛川町の採石場から発見された当時、約10万年前の旧石器時代を生きた人類の骨と鑑定され、大きな話題を呼びました。その2年後に実施された発掘調査でも、異なる部分の骨が見つかり、国内最古の人骨として高校の歴史の教科書にも掲載されました。
ところが2001年になると、大きさと形状からナウマンゾウの骨なのではないかとの疑いが浮上。当時は疑いを明確に払拭する論考などはなく、牛川人骨の扱いの変更は見送られてきました。
一方、現豊橋市長である長坂尚登氏が豊橋市議だった18年9月、「市美術博物館のサイトでは、現在も『現存する化石人骨では日本最古』と記されている」と指摘し、「子どもたちが時代にふさわしくない認識を持ったまま大人になってしまう」として市の牛川人骨の扱いに疑問を投げかけました。
その際、市側は「少なくとも両論併記し、市民に学術的な評価を示していく必要がある」と回答しました。
その後、市は牛川人骨の説明文に、動物の骨の可能性もある旨の併記を決定。市民館や博物館で展示用レプリカに添えていた説明文中の「牛川人骨」を「牛川人骨とされる化石骨」と差し替えていました。
市民館や博物館での説明変更に合わせて、地元関係者が発掘地に設置している案内板についても、「牛川原人之碑」から「牛川洞穴遺跡」に書き換えるように勧めていましたが、これまで変更されることはなかったといいます。
しかし、今回判明した事実により、現在の日本最古の人骨化石は静岡県浜松市浜名区の根堅遺跡で発見された『浜北人』となり、豊橋市は牛川人骨に関して決定的な対応を迫られることになりました。
担当者によりますと、今後、市内の各施設の考えを反映した上で準備が整い次第、牛川人骨に関連した説明文を修正する対応を進めていくといいます。
担当者は「牛川人骨は日本の化石人骨研究進展のきっかけとなった重要な資料です。地域の歴史を語る上で、依然として貴重な資料という部分は変わりません」と話しています。
最終更新日:2024年12月3日 18:43