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仕事続ける支えが… ベビーシッター利用の割引券 10月なのに“今年度分は発行終了?”

2023年10月5日 20:12
仕事続ける支えが… ベビーシッター利用の割引券 10月なのに“今年度分は発行終了?”

企業の従業員などにベビーシッターの利用割引券を配布する国の支援事業で、今月2日、今年度分の割引券の新規発行が停止された。年度のちょうど折り返し時期にあたるが、発行枚数が予算の上限に達したためだという。詳細を取材した。

■シッター代…ひと月最大5万2800円分の補助

この制度は2016年に内閣府が開始したもので、今年度からこども家庭庁が引き継いだ「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」によるものである。割引券を使うと1枚で2200円の補助が受けられ、こども1人につき1日に最大2枚(4400円分)、1家庭で月24枚まで使用でき、つまり最大でひと月5万2800円分の補助が受けられる仕組みだ。

利用にあたっては、まず制度を利用する企業などが「全国保育サービス協会」(こども家庭庁が事業の実施をこの協会に委託している)に申し込み、企業などが労働者数に応じて、一枚につき70円から180円の手数料を払って割引券の発行を受け、ベビーシッターを利用する従業員らに配布する。従業員らはサービスを受けた際にベビーシッターに割引券と料金を支払う。そして、ベビーシッターを派遣する事業者が、受け取った割引券分の料金の請求を行い、全国保育サービス協会からそれが事業者に支払われるという流れだ。

割引券の原資は、政府が企業から徴収した「子ども・子育て拠出金」だ。この制度をめぐっては、昨年度も、年度途中に当初予算の6億3000万円分が底をつき、補正予算で3億1000万円を計上し、合計で39万枚分の予算を確保した経緯がある。こども家庭庁によると、昨年度は最終的には予算の約9割にあたる計35万枚分が利用された。こども家庭庁は、今年度は最初から39万枚分で運用していたが、年度途中の10月2日時点で、39万枚すべてが企業などに配布されたため、今後の配布が中止された。

制度では一部の企業に使用が集中しないよう、従業員数に応じた申し込み上限も設けられていた。さらに、全国保育サービス協会によると、今年度からは利用実績に応じた配布につなげるため、企業側の申し込みは1回あたり年間の配布上限の12分の1までとし、かつ、その企業に直近に配布された割引券の8割が使用されるまで、新たな申請もできないようになっていたという。年度はじめに、企業が多めに申し込み、予め大量に確保しておくといったことはできない仕組みだということだ。

■コロナ収束…“出社”増が一因か

こども家庭庁の担当者は、発行上限に達した背景には、新型コロナウイルス流行の収束に伴い、在宅でのテレワークから出社を求める企業が増えたことなどでベビーシッターを利用する従業員が増えたのに加え、割引券を申し込む企業などが、この1年半で約1500社増え、4000社を超えるほどにのぼったことが考えられるとしている。

加藤鮎子こども政策担当相は、今月3日の会見で、現時点で使用済みの割引券は39万枚のうち20万枚弱であるとし、残り約19万枚の割引券について、「事業者の皆さまに使用見込みを確認するなどして、対応策を至急検討する」と述べた。

一方、追加の発行については言及を控えた。なお割引券は、各家庭が使って初めて予算(財源は企業から集めた「子ども・子育て拠出金」)が使われる形で、最終的にどれだけ予算が必要か、見込むのが難しいが、昨年度は発行枚数の9割が使われたということで、仮に、今後、追加で券を発行する場合、当初よりも使用が増えると想定し、追加の予算を用意することが必要となる。

■当初と“見込み”違い? 一部企業で「滞留」の可能性も

では、未使用の割引券はどこにあるのか。

今年度から制度を導入したある企業に聞いたところ、割引券は確保できていて、不足が懸念される状況にはないとし、まだ社内で制度の周知を図って、使用を促している段階だと話す。つまり、企業の中には、従業員のシッター使用を見込んで、年度はじめに割引券を確保したものの、実際にはあまり使用されず、確保した券が余っているところもあるようだ。

前述したように、ある企業で券の使用が進まない場合、割引券を大量に余らせたまま、さらに申請することはできない仕組みだが、一部の企業などで、年度はじめの見込みと実態があわず、そこに一定数の割引券が「滞留」している可能性がある。

ただ、政府関係者からは、一度企業に発行した割引券を戻してもらって、足りない企業に配るといった「再分配」は難しいのではないかという声も聞かれる。

■SNSでは「裏切られた気分」「かなり困る」

前述の全国保育サービス協会は、発行停止の報道後、戸惑いの声などが電話で寄せられているものの、今のところ、企業からは新規発行を求める声はなく、混乱した状況にはないと話す。しかし、実際に利用している家庭で割引券がなくなれば状況が変わる可能性がある。

SNS上では「この制度に助けられて、せっかく仕事を続けてこられたのに、とても裏切られた気分」「これ無くなったらかなり困る」といった投稿も見られ、不安が広がり、こども家庭庁の動きに注目が集まっている。

■「利用できる場面が限定」改善の要望も

こうした状況に、子育て領域に関わる課題解決に取り組む認定NPO法人フローレンスの赤坂緑代表理事は、需要増への対応を求める要望書を提出すると述べた。

また、企業ごとに、直近に確保した割引券の8割が使用されるまで、新たに申請できないという仕組みについては、「一定数の社員がこどもの緊急時に備えて、割引券を使いきらずに、手元に残すなどすると、新たに、券を希望するほかの従業員分が足りなくなる」として、「改善が必要だ」としたほか、「割引券を利用できる場面が限定されていて、習い事の送迎などに利用できない点が特に使いづらい」とし、改善の要望を出すとしている。

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