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【#みんなのギモン】“動物虐待”か? 炎上する伝統行事 当事者の本音は… 

2023年8月24日 18:47
【#みんなのギモン】“動物虐待”か? 炎上する伝統行事 当事者の本音は… 
過去の「上げ馬神事」の様子

「馬が地面に叩きつけられている」、「神事の名において暴力が行われている」などと批判が高まり、三重県桑名市の700年の伝統行事『上げ馬神事』が近く改善策を示すことになりました。今、動物を扱う各地の伝統行事にも「虐待ではないか」との厳しい目が向けられています。
当の地元の人たちはどう思っているのでしょうか。話を聞くと、「一概に否定しないで…」切実な思いも。
(報道局 調査報道班 小野高弘)

■SNSで広がった批判 馬が神事で骨折し殺処分に…

「祭りが中心の町で馬は大事な存在です。虐待だと考えたことは正直なかったです」

そう話すのは、上げ馬神事に30年以上参加してきた石川信介さん(45)。今年5月、石川さんが共同馬主として育ててきた馬が神事で転倒し骨折、殺処分になりました。

「本当に悲しいです。愛情をかけてきましたから」

ところが皮肉なことに、石川さんの馬が殺処分となったことが祭りへの批判に火をつけ一気に広がりました。

SNSの力です。

けがをした馬の脚の写真や、馬が転倒したり激しく叩かれ興奮させられたりする過去の動画が次々にアップされ、「動物虐待」という言葉とともに拡散されていきました。「#上げ馬反対」などのキャンペーンが展開され、廃止を求めるネットでの署名は3万1000筆以上が集まりました。かねてから獣医師などからも「馬を興奮状態に追い込んで壁を越えさせる虐待行為だ」との批判がありましたが、5月以降だけで三重県には3000件の苦情などが寄せられています。
批判は石川さんの元にも寄せられるといいます。

「批判されるのは当然だと思います。ただ、町が過疎だと言われる中で、若者たちが町にとどまっているのは祭りがあるおかげなんです。私自身、この町に育ててもらった恩返しで馬を育ててもきました。それで虐待だと言われたら、私らが無知だったということだと思います」

神事を行う多度大社は今、改善策を検討しています。

■「伝統はいったん失うと…」「根付いたものを一概に否定しないで…」

沖縄県糸満市の伝統の祭り「糸満ハーレー」では、海に放たれたアヒルを素手で捕まえる催し「アヒル取り競争」に2011年、県側が「首や脚を強くつかむのは不適切」だとして改善勧告を出しました。動物虐待だと中止を求める声は今もあがっています。

行事委員長の東恩納博さんは、批判を受けながらも催しを継続してきました。

「海の神様に漁の無事故と豊漁を感謝する祭りですよ。食用のアヒルを海の神様にお供えする意味で放って捕獲するんです。アヒル汁は沖縄の食文化でもありますから」

会場では、首や羽などを強く握らないよう呼びかけられてもいますが、アヒルを追いかけ回す行為自体にも疑問が寄せられています。東恩納さんは…

「アヒルは泳ぎが達者なんですから…。それを人間がいかに捕まえるのか、アヒルと人間の知恵比べの意味があるんです。首をつかんでも、陸にあがったらアヒルはピンピンしていますよ。毎回、アヒルに怪我がなかったかなど警察にも報告していますが、少なくともこの7年、アヒルが死んだことは、ありません」

その上で記者は聞いてみました。
「おもちゃのアヒルに変えてはどうかとの意見もありますが」

小さくため息をついた後、東恩納さんはこう続けました。
「伝統は、いったん失うと戻りません。この糸満に根付いたものを一概に否定しないでほしいです。やさしく見守ってほしいです」

■「牛が輝く場所」 愛情をかけた牛を闘わせるワケ

動物同士を闘わせることもこれまで問題視され、闘犬や闘鶏などの多くが姿を消していく中、新潟県小千谷市では、約400年の伝統を持つとされる行事「牛の角突き」が動物愛護に配慮しながら存続しています。牛がぶつかり合う闘牛の一種です。

「牛は家族の一員」。そう話すのは小千谷市の篠田隼人さん(30)。家で飼っているのは9歳になる牡牛、名は金龍です。金龍は年に7回ある「牛の角突き」に出場しています。

「東京の大学を中退して小千谷に戻ってきた時、町の人から牛を飼ってみたらどうかと勧められたんです」

錦鯉の養殖が本業の篠田さんですが、朝7時と夜7時に金龍にエサを与え、牛舎を掃除し、近所に散歩にも連れ出します。町では同じように牛を散歩させる人と打ち解けます。牛とともにある暮らしは6年以上続いています。愛情をかけた牛を闘わせるのはどういう意味があるのでしょうか?

「輝く場所です。生命を感じる時です。牛同士がぶつかり合うので生半可なものではありませんよ。牛が嫌がるそぶりはありません。嫌がったらわかります」
「一方がひとつ攻めたら他方も盛り返して引き分け、それが角突きです。角があたればどうしてもかすり傷はありますが、牛もアドレナリンが出ています」

中には優しい性格の牛もいて、そうした牛は出場させないといいます。さらに近年、会場に獣医師を常駐させ、牛が負傷した際の適切な保護ができるようにしました。篠田さんは、誰もが楽しめるのが「角突き」だと言います。

「角突きは夏の小千谷を盛り上げてくれるものです。強くなったなあ、とか、惜しかったなあとか、いろんな人がいろんな目線で見てくれるんです。業界の中だけというのでなく、子供たちも観光で来てくれる人も、誰もが応援してくれるのが嬉しいんです」

動物同士を闘わせることの是非が問われていることを篠田さんに尋ねると…。

「あまり耳にしたくないというか…、牛を闘わせている1点だけを見て否定されても困るんです。私が牛を飼っている過程も含めてすべて見てほしいです」 

■伝統行事も「ちょっとずつアップデートを…」専門家

50年前、今の動物愛護法が作られた当初から、伝統行事が動物虐待にあたるかどうかの議論はありましたが、特に2010年代になり、法律で「みだりに酷使し、衰弱させること」「みだりに身体に外傷を与えるおそれのある行為をさせること」が動物虐待にあたると定められたのを根拠に、地域の伝統行事にも厳しい目が向けられているのが実情です。

ところでフランスの刑法では、動物虐待に厳しい処罰を定める一方、こんな条文があります。

「伝統が途切れることなく続いている地方の闘牛や闘鶏には、虐待の罪は適用されない」

闘牛を禁止する政府の通達に対し、「慣習を傷つけるな」と南フランス地方が猛反発した結果、60年にわたり存続が法的に認められているのです。

伝統行事のあり方について北海道大学の岡本亮輔教授は「あまりに社会や時代の一般的感覚から離れると、結果的にその祭りは受け継がれていかない。ちょっとずつ形をかえてアップデートしていくことは避けられないだろう」と話します。

何を残し、何を変えていくのかを考えることは、その伝統行事の最も大事な精神や、込められた思いに改めて深く思いを致す機会になるはずです。

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#みんなのギモン
https://www.ntv.co.jp/provideinformation/houdou.html