【解説】接種後に死亡「アナフィラキシーの可能性」 全国の会場で「体制に問題」 打つ時に注意すべきことは…
今月、愛知県の女性が新型コロナワクチンを接種した直後に容体が急変し死亡した問題で、17日に検証結果が発表されました。
・“最重症型”アナフィラキシー
・アドレナリン注射とは
・体制に問題
以上のポイントを中心に詳しく解説します。
亡くなったのは、愛知・愛西市の飯岡綾乃さん(42)です。愛知県医師会によると、高血圧や糖尿病などの基礎疾患があったということです。飯岡さんは今月5日、集団接種会場でオミクロン株「BA.5」対応ワクチンを接種し、その後の推移は次のようになっています。
【11月5日午後2時18分 接種】
7分後 せき症状が出始め看護師と救護室へ移動
11分後 医師の初診では顔面蒼白(そうはく)・呼吸難
12分後 泡状の血タンを大量に吐く
16分後 呼吸停止・心停止
37分後 搬送開始
そして、接種から1時間40分後に死亡が確認されたということです。
ワクチン接種との因果関係はまだわかっていませんが、重大事案として検証を進めてきた愛知県医師会は17日の会見で、「“最重症型”アナフィラキシーの可能性は高い」と話していました。
会見を受け、綾乃さんの夫、飯岡英治さん(45)も会見を開き、次のように話しています。
飯岡英治さん(45)
「もう怒りしかないですね。『アナフィラキシーじゃないか』ということは言っているんですが、そうだという判断はないですし、全てがあやふやな会見だったと思います」
アナフィラキシーとは、人によって食べ物やワクチンの影響で、急速に現れる「重いアレルギー症状」のことです。一般的には、じんましんなどの「皮膚症状」や「粘膜の症状」に加えて、呼吸困難などの「呼吸器症状」、血圧低下などの「循環器症状」、腹痛や嘔吐などの「消化器症状」などが出た場合、「アナフィラキシーが積極的に疑われる」ということです。
実際、新型コロナのワクチン接種では、10万回に1回ほどの割合でアナフィラキシーが報告されています。
愛知県医師会も「大変まれではあるが迅速な対応をとる必要がある」と話していました。日本救急医学会によると、アナフィラキシーが疑われる場合は、ためらわずに「アドレナリン」を筋肉注射し、即座に救急車を呼ぶことになっています。接種会場には、太ももにアドレナリンを筋肉注射する「エピペン」が備えられています。食物アレルギーがある人もアナフィラキシーが出た時に打つものです。
一方で、最初に医師の診察を受けた時点では、アナフィラキシーとは判断されませんでした。
もう一度、経緯を確認します。女性が医師の初診を受けるまで、せきの症状が出始めてから4分かかりました。女性が看護師と救護室まで移動すると、そこに駆けつけたのは接種業務を行っていた別の医師だったということです。この時、女性には呼吸の苦しさはありましたが、アナフィラキシーで見られるとされる皮膚症状や消化器症状は見られなかったといいます。そのため、「アドレナリンは結果的に打たれることはなく、その後、心肺停止となってしまった」と説明されました。
この対応について、愛知県医師会は「ワクチン接種後であったことからアナフィラキシーが強く疑われた。ちゅうちょすることなくアドレナリンを注射すべきだった」としています。そして、救護室に移動させず、体調変化に気づいた時点で注射できるようにするなど、今回の会場を含む全国の集団接種会場の「体制に問題があった」と話しています。
また、愛知県医師会は、「今回はアナフィラキシーかどうか判断する間もなく容体が急変したため、救命救急措置を優先することになったと思われる」とし、また「仮に女性は初診の時点でアドレナリンが投与されたとしても、“最重症型”だった可能性があるので、救命できなかった可能性が高い」との見解も示しています。
こうした事態を防ぐためには、どうしたらいいのでしょうか。
厚生労働省は、女性が死亡した後の今月10日、アナフィラキシー症状が出た場合の対応を適切にできるように、改めて全国の自治体に通知を出しました。
また、11日の新型コロナワクチンの副反応部会では、「準備はできていても、起きた場合の対応は行き届いていない可能性がある。起きた直後は周囲も医師も動転するので、対応を再確認する必要がある」との発言もありました。
私たちが接種を受ける時の注意点について、大阪大学の忽那賢志医師に聞きました。
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医師の話では「基本的にどの会場でも適切な処置ができるよう準備されている」といいます。安心を手にするためにワクチンを接種しにいくわけですから、その会場でもし安心できない要素があるとすれば、一刻も早くなくしてもらいたいです。
(2022年11月18日午後4時半ごろ放送 news every. 「知りたいッ!」より)