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“性加害問題”で国連が報告──「ほど遠い」「救済への道のり遠い」 “4つの問題点”指摘 SMILE-UP.や東山社長の反応は?【#みんなのギモン】

2024年6月28日 10:20
“性加害問題”で国連が報告──「ほど遠い」「救済への道のり遠い」 “4つの問題点”指摘 SMILE-UP.や東山社長の反応は?【#みんなのギモン】
旧ジャニーズ事務所の性加害問題をめぐり、国連人権理事会の会合で調査内容が報告されました。報告では厳しい指摘が並びましたが、SMILE-UP.はそれに対する回答を示し、東山紀之社長のコメントも発表。元ジャニーズJr.に受け止めを聞きました。

そこで今回の#みんなのギモンでは、「“性加害問題”国連報告…内容は?」をテーマに、次の2つのポイントを中心に解説します。

●国連で報告 「補償」問題点は?
●「ほど遠い」指摘に東山社長は?

■「ビジネスと人権作業部会」で報告

近野宏明・日本テレビ解説委員
「スイスのジュネーブで開かれていた国連の人権理事会の会合で、旧ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による性加害問題について、調査内容が報告されました」

「同理事会は、世界の至る所で人権が順守されているかを監視し、人権侵害から人々を守るための機関です。報告したのは、その中の『ビジネスと人権作業部会』、企業と人権の問題を調査する専門家たち(の組織)です」

「報告では、性加害問題とその補償を行うSMILE-UP.社の対応について『所属していた数百人に対し救済が行き渡っていない状態が続いている』という厳しい指摘がなされました」

■会合では元ジャニーズJr.が訴え

近野解説委員
「ジュネーブでの会合では、被害を訴えた元ジャニーズJr.の二本樹顕理さんが出席しました」

「関連イベントでは英語で、『ジャニー喜多川氏は非常な社会的地位を有していた人物です。当時の私たちは子供であったため、そうした人物から受けた性被害を周囲に訴えることはとても困難でした』などと、被害の実態を訴えました」

「二本樹さんは取材に対して、次のように語りました」

二本樹さん
「この問題に光を当ててくれたのは、やはり国連人権理事会の作業部会であったり、海外のメディアであると私たちは感じておりまして、今までこの問題を日本は社会問題としてすら扱ってくれなかった」

「この問題を国際社会の場にもってくることによって光を当て、より大きな取り組みになっていってくれるとうれしいと思っています」

■人権理事会で行われた報告の中身

近野解説委員
「問題があった時にしっかりと追及できる社会になってほしいと、世界に向けて二本樹さんは訴えました」

山崎誠アナウンサー
「『この問題に光を当ててくれたのは作業部会であり、海外のメディア』という言葉もありました。今回の報告は私たち国内メディアに向けられたものであるということは、重く受け止めていかないといけないですね」

桐谷美玲キャスター
「実際に国連ではどういった報告がされたのでしょうか?」

近野解説委員
「人権理事会で行われた報告を見てみます。去年7月から日本で調査を行った作業部会は、『旧ジャニーズ事務所と契約した数百人のタレントをめぐる性的搾取と虐待の疑惑について深く憂慮している』としています」

「さらに『日本のメディア企業は何十年もの間、このようなスキャンダルの隠ぺいに関与してきた』と厳しく指摘しています」

■SMILE-UP.による救済・補償の問題点

近野解説委員
「現在SMILE-UP.が行っている被害者の救済や補償については、大きく4つの問題点を指摘しています」

「まず被害補償の進ちょくです。作業部会が報告書にした今年2月15日時点で、SMILE-UP.に被害と補償を申し出た人は957人で、そのうち同社が補償額を通知したのは282人。『救済を求めている被害者のニーズを満たすにはほど遠い』と指摘しました」

「次に、心のケア相談窓口について。被害者から『メンタル・ケアの支援を求めることが困難である』という報告を定期的に受けている、と懸念を示しています」

「3点目は弁護士らの同席です。SMILE-UP.は、被害者と面談する際に弁護士や臨床心理士を同席させてもいいとしていますが、作業部会が調査した被害者は『このような申し出は受けていない』としています」

「4点目は弁護士費用。SMILE-UP.の金銭補償には弁護士費用が含まれておらず、被害者は自己負担に苦しんでいるため、『この事実は受け入れがたい』と指摘しています」

「報告書ではSMILE-UP.の一連の対応について『努力は認められる』とした一方で、『被害者救済への道のりは遠い』と指摘しています」

■東山紀之社長がコメントを発表

刈川くるみキャスター
「こうした問題点が挙げられた中で、SMILE-UP.側はどのような回答をしているのでしょうか?」

近野解説委員
「27日午前、SMILE-UP.の東山紀之社長が次のようなコメントを発表しました」

東山社長
「ビジネスと人権作業部会からは、被害者救済に関する様々な取り組みに関し、その努力を認めるとして、一定のご理解をいただいたものと受け止めております」

「引き続き、被害者救済に向けて、金銭補償のみならず、被害にあわれた皆様の心のケアや誹謗(ひぼう)中傷対策への取り組みも含めて、お一人お一人に寄り添いながら全力で取り組んでまいります」

「報告書にある各ご指摘事項を真摯(しんし)に受け止め、改善や徹底に誠心誠意努めてまいります」

■国連の指摘事項に対して一つ一つ回答

近野解説委員
「さらに、東山社長とSMILE-UP.は、国連で指摘があった4つの問題点についても回答しました」

「まず被害補償の進ちょくについて。国連の報告書に書かれた2月時点では、SMILE-UP.から被害者へ補償を申し出た人数は282人でしたが、直近の6月14日時点では499人になったとしています」

「また、被害を申し出た人は合計で996人になったものの、そのうち207人からは連絡をしても返信がなく、今補償の手続きをしている人は145人ということです」

「次に心のケアの相談窓口について。利用しづらいという申し出に対しては、安心して窓口を利用してもらえるように運用体制を見直してきた、と説明しています」

「弁護士らの同席については、補償の手続きの中で弁護士または臨床心理士の同席が認められており、『案内がされなかった』という指摘を踏まえて被害者への案内を徹底していくということです」

「4点目の弁護士費用について。被害者に提示している補償額の中に弁護士費用なども含まれている、といいます。その額の算定にあたっては、被害者の方々の精神的・財産的な損害も慰謝料として総合的に考慮している、と回答しています」

■受け止めは? 元ジャニーズJr.に聞く

山崎アナウンサー
「旧ジャニーズ事務所のこれまでの会見でも、『真摯に取り組んでいく』という話もありました。これからもSMILE-UP.は被害者の皆さんに寄り添って、誠意を見せていくことが大切だと思いますが、当事者の方はどう受け止めているのでしょうか?」

近野解説委員
「13歳の時に性被害を受けたという、元ジャニーズJr.の橋田康さんに27日、お話を聞きました」

橋田さん
「SMILE-UP.も『それくらいしか言えないのかな』という内容ではあるんですけど、国連が関わってここまで言っていることの意味を、もう少しメディアもしっかり取り上げて、SMILE-UP.もしっかり答えて、という仕組みがしっかり循環するといいなと思いますね」

「SMILE-UP.だけが苦しんで、SMILE-UP.だけが悩んで非難されてというのも僕は違うと思うんですよね。世界での話になってきているわけだから、日本人として全体がそこに向かわなきゃいけないと思います」

近野解説委員
「社会の一人一人みんなが問われている問題だ、という指摘です」

桐谷キャスター
「被害者の皆さんの補償やケアが進むのはもちろんですし、絶対に性被害を起こさないように、社会全体で私たちも取り組んでいかなきゃいけないなと思いますね」

■誹謗中傷対策も課題…メディアの責任も

忽滑谷こころアナウンサー
「被害者の皆さんの誹謗中傷も大きな問題だと気になります」

近野解説委員
「国連の会合に出席した二本樹さんは『被害者は絶え間ない誹謗中傷や嫌がらせにさらされています』と話し、誹謗中傷や嫌がらせをなくすための対策が必要だと訴えています」

「SMILE-UP.も引き続き、被害者救済に向けて金銭補償だけでなく、心のケアや誹謗中傷対策にも全力で取り組んでいくとしています」

山崎アナウンサー
「旧ジャニーズ事務所も果たしていく責任はあると思いますが、改めて私たちメディアもそうした責任があることは考えていかなければいけません。近野さんもそういった思いはありますよね?」

近野解説委員
「メディアに対する指摘は繰り返し受けてきました。被害を訴える皆さんは、『メディアが動かないと社会は変わらない』とおっしゃっています」

「この間、『メディアの沈黙』と厳しく批判された私たちには、関連する動きを伝え続ける責任があります。今後も丁寧にしっかりと報じてまいります」

(2024年6月27日午後4時半ごろ放送 news every.「#みんなのギモン」より)

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