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【解説】「街路樹」疑惑…店長が「月に1~2回除草剤を…」 市の聞き取りに ビッグモーターに一斉立ち入り検査

2023年7月28日 20:36
【解説】「街路樹」疑惑…店長が「月に1~2回除草剤を…」 市の聞き取りに ビッグモーターに一斉立ち入り検査

中古車販売の大手「ビッグモーター」が、損害保険会社に保険金を不正請求していた問題で28日に大きな動きがありました。

国交省は28日、ビッグモーターの全国34の店舗に一斉に立ち入り検査に入りました。これらの店は外部弁護士による調査報告書で、新たな損傷をつくるなど不適切な行為が行われていた疑いがあると指摘されていた場所で、整備記録などの確認、従業員へのヒアリングなどを行うということです。

ビッグモーターを巡っては、「もう一つの疑惑」についても各地で調べが進んでいます。

◇「街路樹」疑惑…全国店舗で
◇除草剤・伐採で処分は?

以上の2点について詳しくお伝えします。

■専門家“店の前だけ枯れるのは異常なこと”

まず、全国各地にある店舗の前の街路樹や植え込みが不自然に枯れていたことが確認された問題です。

埼玉県所沢市にあるビッグモーターの店舗では、店の前の部分だけ植え込みがなくなり、土がむき出しになっていました。地元に40年以上住んでいる人によると「当初は植え込みが茂っていたのにある日、突然なくなっていた」といいます。

ほかの店舗でも同じような現象がみられていて、大阪では別の店があったときには背の高い街路樹などが生えていましたが、(ビッグモーターに変わった後の)去年にはまるっきりなくなっていました。

そして、愛知の店舗の前でも同じような現象が起きていました。

この問題について、各自治体などが調査を始めています。NNNのまとめ(※28日午後4時時点)によると、16都府県の43店舗で店の前の樹木が不自然に枯れていたり、伐採されていたことが自治体などへの取材で明らかになりました。

小池都知事も会見の中で、東京都内も8店舗で樹木が枯れるなどしていたと発表しました。このうち1か所は作為的に伐採された可能性もあるということです。

日本樹木医会の小林明理事に所沢のケースを聞いてみると、「店舗前だけなど特定の場所だけ枯れているとなると、人為的な可能性が高い」といいます。

人為的というのが除草剤の「オーバーユース(=使いすぎ)」です。もし、当初は雑草だけを選んでまいていたとしても、除草剤をまく量・回数が次第に増えていき、使いすぎてしまった可能性もあるといいます。「ここ(店の前)だけが枯れてしまうことは異常なことだ」と話していました。

■除草剤まいたりしたのは「10年ほど前」…新社長の話と“矛盾”?

25日の会見で和泉新社長は「環境整備の一環で毎朝、雑草やゴミを取り除いていた」と話し、「その中で認識が甘く、緑地帯の街路樹などに除草剤をまいて影響を与えたこともあると思う」とは述べています。ただ、「これは10年ほど前の話で、今はこうした指導をしていない」と強調しました。

ところが、「本部の人が来るとから」という目撃証言は“今年の話”だといいます。和泉新社長の話とは矛盾します。さらにビッグモーターの現役社員からは「雑草が落ちていたり、木の葉が落ちていたりするとアウト。全店舗、除草剤が普通になっている」といった証言が聞かれました。別の現役社員も「環境整備のために毎朝、幹部に店の前の写真を撮って送って、ゴミや雑草が残っていると回収して、終わった後それを撮って送り直し。ちょっとでも草が生えていると降格」と話していました。

さらに、さいたま市の浦和美園店の店長が市の聞き取りに対して「月に1~2回、下草に除草剤をまいた」「木には直接かけていない」と答えていたことがわかりました。

■ストリートビュー 映っていたのは…

実際、ストリートビューの画像にはそのような場面も残されていました。2017年、大阪にある店舗の前では、軍手をつけた人たちが植え込みのあたりを片付けているような様子がカメラにとらえられています。後ろにちりとりや大きなバケツがあり、掃除か何かをしていると思われます。そして、先月に撮られた福島の店舗前のストリートビューには、掃除道具と一緒に大手メーカーの除草剤のケースと見られるものが置かれていました。

そこで2つめのポイントとなる「除草剤・伐採で処分はあるのか?」です。

会社の敷地の外、あるいは公共の場所に勝手に除草剤をまくことが当たり前になっていたのなら大問題です。

実際、群馬県太田市の店舗の前からは、除草剤の成分が検出されたそうです。去年11月に警察に被害届が出ていて、器物損壊の疑いで調べが続いています。

国土交通省は国道沿いの店舗について状況を調べていて、「枯らせた人や企業が特定されれば、損害賠償を請求する必要がある」としています。

   ◇

「木を見て森を見ず」という言葉があります。物事の一部にとらわれ全体が見えなくなってしまうことです。まさに目の前のハードルをクリアすることでいっぱいになってしまって、各地の店舗で社会の常識が働かなくなっていたとすれば、従業員にそこまでさせた“会社のプレッシャー”、すなわち体質が厳しく問われることになります。

(2023年7月28日午後4時半ごろ放送 news every.「知りたいッ!」より)