性別変更18歳から可能に――それでも残る課題「“パパ”と思ってる人が“母”だった方が混乱」
今月1日からの成人年齢引き下げに伴い、戸籍上の性別が変更できる年齢も20歳から18歳に引き下げられた。女性の体で生まれ、男性として生きるトランスジェンダーで、パートナー女性と2児を育てる杉山文野さんに期待や課題を聞いた。
■性別変更18歳から可能に
民法改正により、今月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられ、親の同意なしにクレジットカードを作ったりローンを組むなど、様々な手続きが18歳でも出来るようになった。
その中には、戸籍上の性別変更も含まれ、「医師による性同一性障害の診断」「性別適合手術」など、法律で定められている複数の要件をクリアして家庭裁判所が認めれば、18歳でも性別変更が可能になった。
今回の年齢引き下げは、生まれた時の体の性と、自認する性の不一致に悩む18歳、19歳にとってどんな意味を持つのか。「元女子高生、パパになる」の著者で、全国初の東京・渋谷区の同性同士のパートナーシップ制度の成立にも尽力した杉山文野さん(40)に話を聞いた。
■年齢要件の引き下げは「ポジティブ」
――性別変更が18歳から可能になることについて、杉山さんの考えを聞かせてください。
杉山文野さん
「今回の改正は、基本ポジティブなんじゃないかなと思います。若い世代のトランスジェンダーをサポートしている方に聞いた限り、問題はないという受け止めです」「性別変更したい人にとっては、早くできるに越したことはないかなと思っています」
<杉山さんは女性として生まれたが、幼少期から自身の性別に違和感を抱き、高校生の時から周囲にカミングアウト。友人男性から精子提供を受け、自身のパートナー女性との間に2児をもうけ、子育てに励んでいる。28歳の時に乳房切除を行ったが、法律上の性別変更の要件である卵巣などの摘出といった性別適合手術は受けておらず、戸籍上は女性のままだ。>
――性別適合手術は受けなかったのは、どのような思いからですか?
杉山文野さん
「胸に関しては自分でも人からも見られるので、すごい苦痛で、乳房切除の手術を受けました。包帯を取った時に自分の体を見て、『元の体に戻った!』と本当に思ったんですよ。ただ子宮と卵巣については、外からも自分からも見えないし、制度に合わせるために摘出するのは違うと思っています」
■性別変更の要件「もっと緩和すべき」
――性別変更を希望する場合、年齢だけでなくクリアすべき要件がいくつもありますが。
杉山文野さん
「もっと要件を緩和すべきだと思っています。『未成年の子供がいたら性別変更できない』というのは世界にはなかなかない要件。
今まで“お父さん”だと思ってた人が、急に“お母さん”になったら子供が混乱するでしょう、ということが指摘されますが、逆に今、僕は子供にとって戸籍上は“養母”なんですよ。子供が“パパ”と思ってる人が、実は“母”だった方が混乱しますよ」
――「性別適合手術」の要件については?
杉山文野さん
「手術をしなくても、戸籍上の性別変更をできるようにすべき。僕の体感からすると、手術をしたくてする人よりも、手術しないと戸籍上の性別変更ができないから、手術に踏み切っている人の方が多い気がします」
■取材後記
「早くから戸籍上の性別を変更したい」と考えている人たちにとっては、前進したと言える今回の法改正。しかし、その先に解決すべき新たな課題にも近づいたと感じる。
制度に合わせて、望まない手術をしなくてもいいように。今回の法改正を契機に、トランスジェンダーの人々がより不自由を感じずに暮らしていけるよう、社会の理解が深まってほしい。
(社会部・城間将太)