夜の居場所“ヨルキチ”を取材 「行くあてない」「家族感なかった」…事情抱える若者に変化も 代表が語る課題
都内に、夜に特化した若者支援の場があります。月に2回開放されている「ヨルキチ」。さまざまな事情を抱える若者の居場所として利用者は増え、前を向けるようになった利用者もいます。運営するNPO法人の代表に、夜に特化した理由や課題などを聞きました。
「こんばんは~」。夜9時すぎ、東京・豊島区の建物に、若者たちが続々と集まります。若者支援をするNPO法人サンカクシャが運営する「ヨルキチ」です。第2・第4金曜日の夜9時~朝5時まで開放されている、“夜の居場所”です。
サンカクシャの荒井佑介代表
「年齢でいうと、だいたい18歳から25歳くらいまでの子たちです」
利用者の若者(27)は「過去に受けた虐待とか、家族と仲が悪くて実家を出て…。誰かと飯を食いたいと思ってネットで『若者 居場所』って検索したら、ここが出てきた」と言います。
「家に帰れない」「居場所がない」などと事情を抱える若者たち。ヨルキチは無料で利用でき、過ごし方は自由です。ゲームをしたり、おなかがすいたらご飯を作ってみんなで食べたり。
取材中、ある利用者が「作家さんを目指してて…」と明かしていました。スタッフが仕事や必要な支援の相談に乗り、行政の窓口につなぐこともあるといいます。
利用者の若者(18)
「明るくなって鬱(うつ)も少し治った感じはしますね。僕にとっては居場所ですね」
利用者の若者(23)
「家族感。こういう家族感がなかったから」
夜に特化するのには、理由がありました。
サンカクシャ代表の荒井さん
「やっぱ夜不安定だなって思います、みんな。夜さみしいとか、あとちょっと死にたいとか、そういう気持ち抱えてる子も多いので。こうやって誰かと夜の時間帯過ごすとか、行ける場所があるのは思いのほか大事なのかなと思いましたね」
夜中に開いている居場所の支援は全国的にも珍しく、利用する若者は増え続けていると話します。
課題は他にもあります。荒井さんは「18歳超えた子たちの支援がとにかく足りていないのかなと思います。『若者たち働けるだろ』とか、ある種自己責任みたいな形で片付けられてしまうこと多いので…」と言います。
なおきさん(仮名・20)も支援を必要としている1人です。乳児院で育ち、3歳からは里親と暮らしてきました。20歳になるタイミングで児童相談所から、里親を通じて自立を促され、急に家を出ざるを得なくなりました。
「あっさりですね。本当にあっさりですね。行くあてもない、金もない。頼る人もいないんで『さっ、公園だ』みたいな」
通っていた専門学校の卒業が迫る中、住む場所を失ったなおきさん。公園で1か月ほど寝泊まりし、そのまま学校に通うこともありました。途方に暮れていた時に声をかけてくれたのが、荒井さんでした。
今は、NPO法人が支援するシェアハウスで暮らしながら、ヨルキチに通い続けているなおきさん。「自分で抱え込まずに話せるって、けっこう楽。自分の抱え込んじゃうクセも直せるので」と話します。
少しずつ前を向けるようになり、今後は自分が支援をする側に回るのが目標だといいます。
なおきさん
「20、21(歳)になってきて、これから頑張りどきの時に、自分が精神的に参ったりとか、俺みたいに転んで倒れてほしくないなっていうのは自分の中にあって。本当に困った時に助けてくれるであろう人ということで候補に挙がるような人にはなりたいなと」
藤井貴彦キャスター
「夜に特化した若者支援について、他の団体からもやりたいという声が上がっているそうです」
波瑠さん(俳優・『news zero』火曜パートナー)
「夜は気持ちがちょっと不安定になることもありますし、朝までつらい気持ちで過ごすことがないよう、よりどころがあるのはとても良いことだと思います」
藤井キャスター
「『キチ』というネーミングもいいですよね」
波瑠さん
「皆さんにお伝えしたいのは、社会には希望が感じられる居場所をきっと見つけられるよ(ということで)、それに気付いてほしいなと思います。この場所が、皆さんがいろいろな方法で社会に居場所を見つけられるきっかけになればいいかなと思います」
(6月4日『news zero』より)