シリーズ『こどものミライ』幼児期の性教育 子どもを守り自尊心を高める 福岡
福岡市の大濠公園で、幼児を育てる親に性教育についてどう考えるか尋ねました。
■40代女性
「早いほうがいいとは、すごくよく聞くので、お友達に紹介してもらって、子ども向けの性教育の本を家で読んでいます。」
■30代女性
「どういうふうに赤ちゃんができるのとかって、のちのち聞かれると思うんですよ。難しいかなって思いますね。」
福岡市に住むファウルクス章子さん(41)は、子育てをしながら2年前から性教育講師として、幼児から思春期、そして大人までを対象とした性教育を行っています。
特に力を入れているのが、年々依頼が増えているという、幼児期の性教育です。これまで、およそ30の保育園や幼稚園、こども園から依頼を受けています。
幼児向けの性教育で使う教材は、手作りの紙芝居で、タイトルは「みんなのいのち」です。
胸やおしりなどをプライベートパーツと言うこと、そのプライベートパーツを勝手に見たりさわろうとしたりする人がいたら、嫌だと伝えてその場から逃げる、そして、周りの大人に相談することを子どもたちに教える内容です。
■ファウルクス章子さん
「幼児期ではプライベートパーツとNO GO TELLをしっかり子どもたちに定着させることです。自分の身も守る。周りのことも守れる。ひいては、その地域の防犯レベルが上がる。私は1人でも悲しい思いをする子を減らしたい。だからこそ、認知を高めたいと思っています。」
10月、章子さんが訪れたのは、福岡県糸島市のこども園です。こちらの園では2年前から、章子さんに年に1~2回、性教育を依頼しています。紙芝居や保護者向けの講演会など、その時々で依頼する内容を決めています。
■るんびにこどもえん・楢崎雅 園長
「性的な意味合いでの教育ではなく、自分の体の不思議さだったりとか、人の体を大事にするとか、そういった意味合いで性教育っていうのはものすごく重要なことだとずっと捉えていました。」
この日、性教育を受けたのは3歳から6歳の園児です。
■章子さん
「いのちの始まりはパパとママ。赤ちゃんが生まれるにはパパとママの”いのちのもと”が必要なんだよ。みんな、体の中で大切な場所はどこだと思う?」
■子どもたち
「いのち!顔!目!」
■章子さん
「みんなはプライベートパーツってきいたことあるかな?プライベートパーツは自分だけの大切な場所。口、胸、おまた、おちんちん、お尻。見るのも触るのも自分だけ。みんなの前では触らない。」
およそ15分の性教育の間、子どもたちは集中して耳を傾けていました。
こども園の園長先生によりますと、章子さんの性教育を受けてから、”むやみに人の体を見ない、触らないということ”が、子どもたちにより大事な情報として身についたといいます。
もともと幼稚園の先生をしていた章子さんは、海外で幼児教育を学ぼうとニュージーランドに渡りました。そこで目の当たりにしたのが、幼児期の性教育でした。
■章子さん
「例えばトイレを失敗した子がいたら、いけない。はい、脱がすよじゃなくて、相手の体に触ることにちゃんと許可を取ります。自分を大切にしてくれる、こういう1個1個の積み重ねが、自分は尊重される人間なんだっていうことに気づけるんです。」
章子さんは帰国して、性教育を広める活動をスタートしました。いまでは性教育の講師育成にも力を入れており、講座を受ける人が全国にいます。
■自営業で2児の母・原田香奈さん(35)
「きょうが初回の性教育の講座だったのですが、土台の部分がしっかり入っておけば、こちら側が迷ったり不安に感じたりすることも少ない。子どもたちに本当にストレートに正しい知識や情報を自信を持って伝えることができるなというふうに思いました。」
章子さんが見せてくれたのは、幼稚園で保護者向けに開いた講演会の感想文です。「どう伝えていけばいいのか分からなかった”性”について、たくさんの気づきを得ることができました」と記されています。
■章子さん
「本当にびっしり書いていただけて、お母さんたちの熱意が伝わってくるので、これはもう、真摯に受け止めて、次につなげなきゃなっていう成績表ですね。」
子どもから性に関する質問をされた時、どうすればいいのか聞いてみました。
■章子さん
「私、お母さんたちにお伝えするのが、まず”わっ、すごいいい質問だね”って子どもたちに言ってみてくださいって。質問していいっていうフィールドを広げる。その次に聞いてほしいのが、なんでそう思ったの?って。お母さんたちがどうしようっていうことに、あかちゃんってどうやってできるの?って聞かれた時に答えられない。私も自分の母親から、橋の下で拾ってきたって言われたんですね。いきなり1+1=2じゃなくて、どうしてそう思ったのって聞くと、子どもたちって、なになにちゃん家のお母さん、お腹が大きかったのにいま、赤ちゃんを連れてきたんだよねとか、子どもたちがその質問をしようとしたバックグラウンドが必ずあるはずなんです。子どもたちの質問の裏をくみ取る作業をしてほしい。大事なのは子どもたちが質問してきたことに答えることじゃなくて、受け止めることだと思います。」
性教育講師、ファウルクス章子さんが見つめる、“こどものミライ”について聞きました。
■章子さん
「私が思う子育てのゴールが、自分が誰といて、何をしていたら幸せかを知っていて、自分が苦手なものから多少なりとも逃げる勇気を持てる人を作っていく。」
幼児期の性教育は、子どもたちが自分の身を守り、自尊心を高めることにつながります。できることから始めてみませんか?
家でできる性教育として、章子さんがおすすめするのは、子どもが生まれた時のエピソードを話すことだといいます。子どもの自尊心につながるということです。