犯罪に巻き込まれる警固界隈(けごかいわい)の若者たち 信じられる大人の存在が支えに 福岡
いわゆる“警固界隈(けごかいわい)”のように居場所をなくしてさまよう若者たちは、事件の加害者だけでなく、被害者になる恐れもあります。そんな若者たちの声に耳を傾け、20年以上支援を続ける男性は、家庭や学校以外にも相談できる存在が必要だと訴えます。
福岡市・天神のど真ん中、夜の警固公園では、若者たちが思い思いに過ごしています。ここにSNSを通じ、3年ほど前から集うようになったとされるのが、“警固界隈”です。
1年前は毎日のように訪れ、元“警固界隈”だったと自称する19歳の女性に聞きました。
■♪元“警固界隈”の女性(19)
「ここに来る子たちが大体、親と仲悪かったり、居場所がなかったりするから、ここだけが居場所みたいな感じ。居場所を求めて来る。」
ここに来れば、誰かとつながる。そんな若者の心の隙につけこむ大人たちがいます。
1月末、福岡市の歓楽街・中洲にある無許可のホストクラブが警察に摘発されました。客として訪れた15歳の少女に、未成年と知りながら酒やたばこを提供した疑いが持たれています。
店から押収された物の中には、客の恋愛感情を利用するよう指南する接客マニュアルもありました。摘発のきっかけは、警固公園での補導でした。少女は居場所を求めてさまよう“警固界隈”だったのです。
「ホストクラブは、現実逃避ができる楽しくなれる場所。援助交際の回数を増やして金を用意した」と少女は話しました。
警固公園周辺では去年、深夜徘徊を理由に20歳未満の少年・少女およそ380人が補導されました。
生きづらさを抱える若者たちに寄り添ってきた福岡市のNPO法人があります。
代表の小野本道治さん(57)はこの日、のんびり過ごしてもらおうと、福岡市西区の古民家に若者や支援者を集めていました。警固公園でも月に1回、腕相撲大会を開くなど、“居場所”づくりに取り組んでいます。
■NPO法人SDF21JAPAN・小野本道治さん(57)
「イチゴ食べてみて。」
■少女
「チョコですよね。イチゴもらっていいですか。やったね。」
17歳の少女は去年の秋、警固公園の腕相撲大会で小野本さんと出会いました。交際相手に浮気されたことで、食事がのどを通らないほど悩んでいました。
■少女
「自分がめっちゃ汚い存在みたいな。(気分が)落ちまくってて。」
■小野本さん
「まあ、トクホでも飲んで元気になりなさい。」
小野本さんは同じ目線の高さで少女の声に耳を傾けます。
■少女
「小学生の時から保育士になりたかったけど。」
■小野本さん
「合ってるかもしれんよ。」
■少女
「でも諦めました。」
■小野本さん
「なんで?まだ17じゃん。」
語り合ううち、少女は少しずつ落ち着きを取り戻していました。
■少女
「好きですね。こういう、みんなが話したりしてるの好き。大人の人って否定から入ることが多い気がするけど、小野本さんから悪いところ言われたことない気がする。」
小野本さんは20年以上支援活動を続け、延べ1万人以上と向き合ってきました。
■小野本さん
「一番多いのは将来の不安。ちょっと先が見えない。やっぱり相談してほしい。何とかなる。相談する場所って親や学校だけじゃない。相談してもらう。それが大事。」
ホッと一息つける“居場所”に。信じられる大人の存在が、さまよう若者たちの支えになります。