相次ぐ市街地でのクマの目撃情報… クマの生息地拡大の要因と注意点 【アナたにプレゼン・テレビ派】
広島テレビのアナウンサーが気になるテーマを自ら取材してお伝えする『アナたにプレゼン』。宮脇靖知アナウンサーが、目撃が相次いでいるクマについてをお伝えします。
広島県廿日市市内のお寺の防犯カメラの映像です。5月28日の午前5時ごろ、体長1メートルほどのクマが姿を現しました。お寺の敷地内で周りを確認しながら歩いたり、墓地を徘徊する様子が見られました。これを受けて、翌29日に周辺の小学校では、地元の猟友会による見守りの中で登校したり、30日、31日は臨時休校する学校もありました。
最初にクマが確認されたのは、廿日市駅から直線距離でおよそ300mにあるお寺で、この日の午前5時から午前7時の間に相次いで目撃情報があったそうです。6月2日も、この場所から直線距離で10km以上離れたところで目撃されました。この時目撃されたクマは、体長1mほどの一頭で、最初に目撃されたクマと同じと言われています。5月29日午後6時半頃に山に帰っていったと見られています。さらに、また6月2日には、廿日市市玖島でもクマが目撃されました。目撃者の情報によると、体長2mぐらいだったと話しており、最初のクマとは別ではないかと思われているということです。
広島県は、クマがどのような場所に生息しているのかを調べており、西中国山地一帯に生息していると思われます。生息地は、どんぐりなどの餌が多かったり、山が連なっている場所です。調べによると、以前に比べて徐々に生息地が広がってきており、人が生活する場所に近づいてきています。
野生動物に関する研究をしている広島修道大学人間環境学部の奥田圭教授に、生息地が拡大している要因について話を聞きました。クマは、どんぐりなどの餌不足により、食べ物を求めて都市に出てきます。最近の都市は、耕作放棄地のように手入れがされていない場所に柿の実がなっていたり、草村になっています。クマにとっては、身を隠しやすく人に見つかることもなく、果物を食べることができる場所です。そこで、美味しい餌を食べることができるので、山に帰らず周辺で冬眠をするため、春になると人と出会う可能性や回数も高くなっているそうです。冬眠明けに餌を求めて行動を起こすので、冬眠前の秋と同様に6月にも多くの目撃情報があります。2024年は、4月に広島県内で21件の目撃情報があり、2023年より倍近い数字になっています。夏になると木の実などがないので、一旦活動が収まりますが、これから秋にかけて増えてくる可能性もあるということです。
クマによる人的被害を受けた人数は、2023年度で219人で、過去最多の数字です。これを受けて政府は、2024年4月にクマを『指定管理鳥獣』に指定しました。『指定管理鳥獣』とは、生息数が著しく増加し、生活や農作物などに被害を及ぼすため、管理をする必要がある野生動物のことです。これまで、繁殖力が非常に高いことからニホンジカとイノシシの2種類が指定されていました。これまでは、被害が出ると捕獲の対象になっていましたが、指定されることで被害が出る前に捕獲し、個体制限を管理でき、減らしていくこともできます。さらに、国から補助金が出ることで、積極的に財政支援を受けて対策がしやすくなります。これまでも猟友会による見守り活動や餌となる木の伐採など地方自治体が賄ってきた費用を申請できるかもしれないとし、広島県は、周辺の山口県や島根県と一緒に取り組んでいきたいと話しています。
クマを目撃した際の注意事項について奥田教授は、まず「大声で叫ぶ」ことは、クマに危機感を感じる刺激を与えてしまい、攻撃に転じる可能性があると言います。基本的に、クマは人間が怖いそうで近寄ることはありませんので、なるべく冷静に大きな声を出さないようにするのがベストだということです。また「小さなクマに近寄らない」ようにします。親クマが必ずいるので、子グマを守ろうとして襲いかかってくる可能性があるといいます。常日頃から注意事項を頭に入れておき、普段から冷静に対応することを心がけておきましょう。