新鮮な野菜と食農教育がつなぐ地域のコミュニティ 広島の都市近郊で農業を行う男性の取り組み【アナたにプレゼン・テレビ派】
広島テレビのアナウンサーが気になるテーマを自ら取材してお伝えする『アナたにプレゼン』。地方創生をお伝えする宮脇靖知アナウンサーが、畑も耕し、山も管理し、海も育む男性の取り組みについてお伝えします。
その男性は、比較的町に近い広島市西区井口で農業を営んでいます。この時期は、苗から育てた13種類のサツマイモを栽培しています。
また、自宅近くにある竹林を管理しており、この竹林で育てたタケノコを加工、販売をしています。これは、広島県内でも珍しく、都市近郊ではここだけではないかと言われているそうです。
さらに、井口は海が近いことからワカメも育ています。
この男性は色んなことに取り掛かっており、今では、ベビーリーフも育てています。
美味しい新鮮な野菜を届け、「都市における農業の役割を担っていきます」と話すのが、かじやま農園の鍛冶山直樹(かじやま・なおき)さんです。鍛冶山さんは、家族4人で農業を営んでいます。
鍛冶山さんは広島市西区井口の出身で、大学時代に経済学を学んだことで金融系の仕事を目指します。しかし「ものをつくる仕事に就きたい」とヤンマー農機販売に就職し、その後、農業について学び、北海道の農家での実習などを行い、10年ほど前から農業に従事しています。
鍛冶山さんは、300年続く農家の11代目です。昭和27年ごろの井口は海が近いことから、海苔の栽培もしていました。また、南向きの斜面のため、モモやビワなどの果樹栽培が盛んだったそうです。鍛冶山さんには、小さい頃からこのような環境で生まれ育ったことで、この景色を守っていきたいという思いがあります。
しかし、都市近郊で大きな土地はないことから、どのようにして自分の農業での存在意義を高めていくのかを考えました。そこで目指したのが「都市農業」です。近郊に小さい畑を持ち、多くの種類の野菜を育てています。
かじやま農園で栽培されたニンジンは、噛むとジワっと柿のような甘味が出てきます。これは、フレンチのシェフが評価するほどの甘さで、何もつけずにそのままおいしく食べられます。およそ10種類の中からこのニンジンを選び、研究を重ねてこの土地で育てているからこその味が生まれているそうです。直売所では2~3本入りがおよそ200円で、手に取りたくなる値段で販売されています。都市近郊で作っていることで、消費者に新鮮な野菜を提供できるのが「都市農業の存在意義」と、鍛冶山さんは話しています。
さらなる「存在意義」は、食農教育の取り組みだと鍛冶山さんは話します。町の近くに畑があることで、幼稚園児たちがサツマイモ堀りを体験をすることができます。これまでに、3000人以上の園児が体験に来てくれているそうです。また、広島市西区周辺で親子を対象とした地産地消のイベントを行ったり、学校給食にサツマイモを提供するなどしてます。「地産地消の日」には、かじやま農園の芋を使用したことを子どもたちに伝えていることから、農園を通りかかった子どもたちに「おいしかったよ!」と声を掛けられることもあると言います。
さらに、将来に向けて中学生の職場体験や、栄養士を目指す大学生が研修を行うこともあります。鍛冶山さんによると「小さい頃にここで芋掘り体験などをした」と話す学生もいるとのことです。
今後は「都市農業」をすることによって、地域のコミュニティも作ることで、就職などで地元を離れても、海も山も畑もある井口で子育てをしてもいいと思ってもらえるきっかけとなり、「いつか帰りたくなる場所にしていきたい」と話していました。鍛冶山さんは、自分が生まれ育った原風景を伝えていくことで、これからも都市農業と町を守っていきたいとのことです。