「県はうそを重ねている」公益通報者が指摘 音声データには何が
熊本県の旅行支援事業をめぐる不適切受給問題で、第三者による調査委員会が設置されて、5日で2か月となりました。この問題を代理人を通じて外部通報した「公益通報者」は、調査委員会に県庁内で行われたやりとりを記録したとされる音声データを提出しています。このたびKKTの取材に応じ、「県民にうそのない行政になってほしい」と訴えました。
■公益通報者
「何度か内部で声を上げたんですけれども、ことごとく潰されてきて。最後は外部通報しかないのかなっていうふうに思って通報しました」
こう語るのは、今年9月、「公益通報者保護法」に基づき、代理人弁護士を通じて報道機関に外部通報した“公益通報者”です。匿名を条件にKKTの取材に応じました。
問題となっているのは、新型コロナウイルスの経済対策として、県が旅行業者を対象に行った支援事業です。外部通報では、テレビ熊本の関連会社「TKUヒューマン」が販売したタクシー券を使った旅行商品で、補助金の不適切な受給の疑いがあると指摘。さらに、県の幹部が担当課にこの疑いを見逃すよう指示した結果、見逃した不適切な受給額は約2000万円にのぼるとしています。
外部通報を受けて、熊本県の蒲島郁夫知事は。
■蒲島郁夫知事
「補助事業の適法性などについて公益通報制度による指摘を受けた以上、その指摘に対し、誠実に対応する必要があると考えました」
第三者による調査委員会の設置を表明しました。
10月5日に弁護士による第三者の調査委員会が初会合を開かれ、今も非公表での調査が続いています。
調査を見守っていた公益通報者。設置から1か月以上たっても、通報者である自分への聞き取りの打診がなかったことから、自ら申し入れ、11月13日に3時間半にわたりヒアリングを受けたことを明らかにしました。
■公益通報者
「代理人弁護士を通して提出していた証拠ですね、音声とか、音声をテープ起こしした紙媒体ですとかを改めてご説明した。委員から質問いただく機会もありましたので、その質問にお答えしました」
KKTは、公益通報者が調査委員会に提出した音声データを入手。そこには、今年2月県庁での打ち合わせで、県の幹部による見逃しの指示を担当課に伝えたとされるやりとりが記録されていました。
【音声データ 今年2月県庁での打ち合わせ】
■担当課の上司(当時)
「どこまで厳密に1ミリの誤りもなくするかどうかっていうのか、そこまでするべきかっていうのは、(県幹部が)だいぶ言われてらっしゃいましたね」
■担当課の職員(当時)
「え、だいぶ言われてたって、(*県幹部)からですか?」
■担当課の上司(当時)
「うん、まぁ」
さらに。
【音声データ 今年2月県庁での打ち合わせ】
■担当課の職員(当時)
「今まで私たちが、その事業者さんたちに対して指導してきたものとは違う解釈をもって、これをなかったことにするってことですか?」
■担当課の上司(当時)
「そこをうまくやって」
別の打ち合わせを記録した音声データには、不適切な受給かどうか調べることに後ろ向きとも取れる同じ上司の発言が。
【音声データ 今年2月県庁での打ち合わせ】
■担当課の上司(当時)
「後追いの調査が深堀りしていくと、やばいけん。収まる形にせなんとだろうね」
これらの音声内容について、当時の上司はKKTの取材に対し、「第三者調査委員会で尋ねられれば、分かる範囲で答える」と話しています。
公益通報者は、このやりとりは県庁で自ら聞いたものだと明らかにしました。
■公益通報者
「上層部の指示をそのまま現場に伝えたというふうに思っています。見逃しの指示があったから、(実際に)見逃したというふうに考えています」
こうした一連の県の対応について、公益通報者は「軌道修正をはかるチャンスがあったにも関わらず、逆に隠ぺいし、うそを重ねてしまっている」と指摘。外部通報に踏み切った理由について、こう述べました。
■公益通報者
「県民にうそのない行政とか法令順守ができる行政、そういう組織になってほしいと思っています」
県は、調査がまとまれば結果を公表する方針ですが、その時期は未定としています。