「我が子の尊厳守りたかった」いじめ調査訴えた両親の思い 調査委が「学校の初期対応に誤り」
阿蘇地域の小学生が不登校となり、2022年、いじめの疑いがある「重大事態」と認定されました。今年3月、調査委員会は「いじめが不登校に影響した可能性が高い」とする報告書をまとめました。「我が子の尊厳を守りたかった」…児童の両親が思いを語りました。
■児童の母親
「ここまでがとても長かった」
3日、自宅で私たちのカメラの前でこう語ったいじめを受けていた児童の母親。メールで届いたばかりの調査報告書を読み込んでいました。「子どもはいじめを受けているのではないか」と初めて学校に訴えてから約2年3か月。ようやく、その訴えが認められました。
阿蘇地域の小学校に通っている児童は、低学年だった2022年10月中旬から学校に行けなくなりました。欠席日数が「いじめ防止対策推進法」で目安とされる30日以上になったことから、学校がいじめの疑いがあるとして「重大事態」と認定。去年3月、管轄する教育委員会がいじめの有無や不登校との因果関係を調べる第三者委員会を設置しました。
委員会は、去年11月までにのべ47人から聞き取りを行い、今年3月、調査報告書をまとめました。報告書では、児童が複数の同級生から、授業後に押し倒されて
2人の児童が馬乗りになった行為、児童の容姿や名前をからかう行為などのいじめがあったと認定。「いじめが不登校に影響を及ぼした可能性が高い」と結論付けました。
さらに。
■いじめ問題対策委員会 吉田道雄委員長
「危機管理上の初期対応に誤りがあったと認識している」
両親は、2021年12月学校に「いじめではないか」と申し出、児童が不登校になるまで複数回、相談していました。しかし報告書では、学校の「いじめ対策委員会」が検討を行わず、教員同士の引き継ぎもないなど学校の初期対応に「誤りがあった」と指摘しました。
報告書の受け取りから一夜明けた4日、両親が記者会見を開きました。
■児童の母親
「まずは我が子の尊厳を守りたかったのが一つ。言葉では言い表せない苦労ときつさがあった。加害を受けた者にしか分からない苦しみがあった」
この間、両親はいじめや不登校について書かれた書籍を読むなど知識を得て、同じような境遇の子どもたちがたくさんいることを知りました。今回の報告書が、子どものSOSに気付ける大人や学校に変わるきっかけにしてほしいと願っています。
■児童の父親
「家族もこれからがスタート。子どもに対してどう接していくか、元気を与えるか。保護者もそうだし、学校もそう。周りの大人がSOSを感じて対応していくのが前に進める一歩」
【スタジオ】
(緒方太郎キャスター)
今回の報告書では、「相談窓口のワンストップ化」について提言しています。
様々な分野の専門家が登録する「バーチャル窓口」を設け、相談内容に応じた人がリモートなどの手段で対応しようというものです。調査委員会の吉田委員長は、熊本県や市町村だけでなく、「国が法律的・財政的に支援する必要がある」と話しています。
(平井友莉キャスター)
学校や教育委員会が、必ずしもいじめ対応のプロというわけではないので、こうした専門家と連携して保護者や子どもたちが安心して学校生活を送れる体制を整備することも大切なことだと思います。