「輪島を伝えていこうと思う…」 救えなかった家族 再出発の日迎えた父 神奈川で飲食店再開
かつて輪島市で飲食店を営んでいた男性が避難先の神奈川県で10日、店を再開させました。男性は地震で妻と娘を亡くしていますが、それでも再出発を決めた思いとは。オープン当日に密着しました。
「おめでとうございます。乾杯!」
10日、神奈川県川崎市にオープンした飲食店「わじまんま」。
わじまんま店主 楠 健二さん:
「嬉しいだろうけどね、本当は。素直には喜べないよね。でも来てくれたから一生懸命出すだけで」
輪島市に住んでいた店主の楠 健二さんは、元日の地震で妻・由香利さんと長女の珠蘭さんを亡くしました。
わじまんま店主 楠 健二さん:
「うちの(妻)とお姉ちゃんどこ行った?って言ったら奥で挟まれてて、脚を切ろうとしたの。最初、娘のね。切れるか?それ?切れてたら助かってたよ。ここから切れば生涯不自由だけど助かってたの。できる?それ?俺はできねえよ。それは。引っぱたいたこともないんだよ。そんなことを自分の娘の脚を切るなんて言ったら。それはできないことでさ」
地震の前に営んでいた輪島の店は倒壊したビルに押しつぶされ、5か月経った今も、当時と変わっていません。それでも楠さんはかつて家族で暮らしていた川崎で再スタートを切ることにしました。
再出発の日は、「6月10日」でした。
わじまんま店主 楠 健二さん:
「輪島のわじまんまが2018年6月10日にオープンした。必ず6月10日にしようって決めてた。何かあるかなと思って、何かがね」
4月末から開店に向けた準備を続けてきた楠さん、メニューはほとんど輪島の店と同じ。日本酒や魚も能登から揃え、食器もがれきの下から救い出してきました。そして、午後5時半。
「いらっしゃいませ!」
「おめでとうございます!」
オープンと同時に続々と訪れるお客さん。
「すごく雰囲気があって行きたくなります。輪島に」
「日本酒との相性ばっちり」
大半が楠さんの再出発を応援しようときた人たちでした。
「(ボランティアで)輪島に行ったときに被災したお店も見ているので尚更応援したいなと思って、輪島の被災したお店のところに再建するまでずっと応援して寄り添っていきたいと思います」
長女・珠蘭さんの担任:
「お父さんの長女さんを(中学時代)3年間担任してて、お父ちゃん頑張ってるぞって…そう伝えたいですね」
わじまんま店主 楠 健二さん:
「先生は見ただけで泣いちゃうよね。全部思い出しちゃうからさ」
看板には「復興中」の文字。
わじまんま店主 楠 健二さん:
「俺も復興しなきゃいけないじゃん。ここでさ、現在進行形なので…より多くの人が輪島をなんでもいいので助けてくれたらいいかなと」
「輪島を伝えていこうと思う。一日でも早くしないとどんどん遅れていっちゃうし、でも戻すには人の力が必要。こっちから少しずつ発信していこうと」
楠さんはこの先も店に立ち続けます。