【働き方改革】ICTの活用で先生の業務を効率化!子供たちの学力も向上!鹿児島県桜島の先進校
鹿児島県の桜島に“ICT活用”の先進校が!
(中西沙綾アナウンサー)
「文部科学省が2022年度に行った調査によりますと1週間の在校時間が60時間以上、ひと月の時間外勤務に換算すると過労死ラインの80時間を超える公立学校の教職員の割合が小学校で14.2%、中学校で36.6%となっています。そんな中、鹿児島県の桜島に学校の働き方改革を進め、子どもたちの学力アップも実現した小学校があります」
桜島にある全校児童25人の桜峰小学校。朝7時半ごろから子どもたちが元気に登校します。先生も続々と学校へ。3、4年生の複式学級を受け持つ教諭の肝付 寛人さん(24)。去年春に着任したばかりです。教室に入ると、すぐにパソコンやタブレットを確認します。
(肝付寛人教諭)
「学校に来たらすぐメールを確認しますね」
桜峰小学校が取り組む働き方改革。それはICTを活用した業務の効率化です。職員会議など先生同士の情報共有のためにビジネスチャットを導入し、集まる手間を省くことで
時間を有効活用できるようにしています。
キーワードは“予習型”ICTを活用し学力も向上
授業にも工夫があります。1年生の算数の授業をのぞいてみると…。
(先生)
「図に書いてね。というのが予習でした。それを説明してね」
(児童)
「みかんはりんごより4個多いです。6+4=10なので答えは10個です」
子どもたちが発表しているのは、前日に予習」したもの。桜峰小の授業の特徴は「予習型」です。
一般的な授業は、その日の学習のめあてを決める「導入」で始まり、問題を解いたり授業の理解度を高める「展開」。最後にまとめを行うのが典型的な流れです。
桜峰小は2019年から予習型授業を導入。子どもたちに出される宿題は翌日の授業の予習です。自宅でタブレット端末を使って予習をして、その内容を先生に送信します。授業の始まりは、予習内容の発表や答え合わせをして後半は一人一人の理解度を高めるためAI機能を搭載したドリル問題を解く時間にあてています。
(先生)
「予習をただやってくるだけじゃなくて、どうやって説明したらいいのかなというのを考えないといけない。その辺を子どもたちが学んでいる」
(児童)
「勉強が早く進むからいい。友達と考えを深めるところが楽しい」
先生が翌日の授業の準備をする時間が削減されたことに加え、子どもたちの学力は向上し、昨年度の「全国学力・学習状況調査」では国語、算数、理科の点数が全国平均を大きく上回るなどの結果が出ました。
先生の“研究授業”の変化で授業の質も向上
この日は1年生の教室に複数のカメラが。授業の質を向上させるため先生の間で公開される研究授業が行われました。先生たちが授業を直接見に行くのが一般的ですが、桜峰小では授業の様子を動画で記録し、先生同士で見られる専用のサイトにアップするのでいつでも確認できるといいます。先生たちにも好評です。
(先生)
「すごくいいです。移動のフェリーや家で見られる。気になったところを見返したりできるのもいい」
(先生)
「業務連絡1つにしてもICTの利活用が進んでいるので細かな連絡の時間とか削減できて、子どものことに関する業務にあてられる」
(桜峰小学校・大迫 誠校長)
「最初は手探りだったと思う。コロナ禍で集まって授業を見る、研究授業をするというのができなかったという話もあったので画期的。業務改善の中でしっかりできていると思う」
こうした取り組みを数年続け、先生の時間外勤務が少なくなる結果が出ているということです。
精神的不調で休職した教員 過去最多の6539人 専門家も警鐘
全国的に学校の働き方改革は道半ばです。昨年度、精神的な不調などで休職した公立学校の教員は過去最多の6539人。鹿児島県内でも142人に上っています。今月14日からは中央教育審議会の特別部会で公立学校の教職員に残業代が支払われない、いわゆる”給特法”の見直しに向けた議論も始まるなど課題が山積しています。
労働法に詳しい神奈川総合法律事務所の嶋﨑弁護士は…。
(嶋﨑 量 弁護士)
「時間外勤務が過労死ラインを超える先生方がたくさんいる。通常であれば長時間働けばその分残業代が出る。あるいは働かせ過ぎてはいけないと規制が入るのに、公立学校の先生方については規制が入らない。規制を負わせるだけで大きく改善の兆しは出るのかなと思います」
全国的に見て学校の働き方改革の進捗は…。
(嶋﨑 量 弁護士)
「全国的な話でいけば、まだまだ。どんなにやりがいがあっても持続的に働けない教員という仕事を選ばない。日本社会全体にとって支え、支えていく子どもたちのためにもっと予算をけちらず入れて欲しいと思います」
「学校の先生たちの処遇の改善は、未来の子どもたちのために繋がるもの」と嶋﨑弁護士は話していました。
学校現場の努力だけでなく、法律の改正などについても私たち一人一人が関心を持たなければならない問題です。(news every.かごしま 2024年2月21日放送)