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【"揺れたら高台へ"「東日本大震災」以降叫ばれた意識浸透するも…】揺れ・津波・液状化の複合災害で逃げられない<能登半島地震が浮き彫りにした課題とは>

2024年3月12日 20:45
【"揺れたら高台へ"「東日本大震災」以降叫ばれた意識浸透するも…】揺れ・津波・液状化の複合災害で逃げられない<能登半島地震が浮き彫りにした課題とは>
能登半島地震」では、「東日本大震災」以来となる大津波警報が発表され、実際4mを超える津波に襲われた。

その時、能登の人たちは津波とどう向き合い、どんな課題が残ったのか。2月、現地を訪ねた。

能登半島の東に位置する、石川県能登町。
元日の地震で「震度6強」の揺れに見舞われ、石川県内で最も高い「4.7m」の津波に襲われた。

柳瀬キャスターリポート
「津波の被害が大きかった能登町白丸地区に来ています。
船や車が砂に埋まっているし、住宅は引き波でしょうか、海の方に引きずり出されてしまっています。
東日本大震災直後に沿岸部を歩いてみた被害と酷似しているように感じます」

海から30メートルほどの位置にある白い平屋、 宮本千鶴雄さんの住宅だ。

柳瀬キャスター「これはたいへんですね」
宮本さん「これでも少しは片付いたんですけどね」

宮本さんは近くの避難所で生活しながら、片付けのために自宅に通う毎日だ。

柳瀬キャスター「器は全部…これは地震の揺れですか」
宮本さん「いや津波です」
柳瀬キャスター「津波ですか。津波の高さはどれくらいまで来ましたか」
宮本さん「私のみぞおちくらいですね」
柳瀬キャスター「この辺に跡が…ここまで来たんですね」

地震発生後、宮本さんは同居していた高齢の母親を連れて、すぐさま高台を目指した。

宮本さん
「大きな地震が来たら津波がくるものだと思って誰を差し置いても逃げなきゃいけないと。で、ここから上がった」

避難した高台から見えた故郷は、すでに津波にのまれていたという。

宮本さん「うわぁ、これはえらいことになったなと、それしかないですね」
柳瀬キャスター「東日本大震災の教訓がどの程度知られていて生かされたのか知りたくて…」
宮本さん「私は生きましたね、 結果的には。何とかして逃げておかなきゃいけないと思ったのは間違いないです」

能登半島の先端が震源となった今回の地震。

東北大学・災害科学国際研究所の解析によると、海底の活断層に沿って発生した津波は半島を回り込み、能登町や珠洲市など、特に半島の東側に大きな被害をもたらした。

津波工学の第一人者・東北大学の今村文彦教授はこう分析している。

東北大学・災害科学国際研究所 今村文彦教授
「珠洲に向かう波がこの直線です。今はこの向きです。浅瀬の影響をうけて、こちら側が浅くてこちら側が深いので」

能登半島先端の海底には、飯田海脚と言われる浅瀬があり、その外側が深くなっている。
断層が動いたことで発生した今回の津波。
波は浅いところを通るとスピードが落ち、逆に深いところでは速くなる性質があり、そのスピードの差によって波の方向が変わったという。

東北大学・災害科学国際研究所 今村文彦教授
「深いところを速く伝播するのでこのように曲がってくるんです。曲がった方向が、直、半島の東側に向かったと□今村先生・顔戻り0647「海底地形で浅い効果で(波の)方向が決まって
湾という地形で中心部に集中してしまったということです」

2月、今村教授は被害の大きかった場所の一つ、石川県珠洲市の海沿いの町(宝立町)を訪れていた。

東北大学・災害科学国際研究所 今村文彦教授
「これだけ建物が壊れると、本当に中から脱出するのが難しいです」

現地を目の当たりにした今村教授が指摘したのは、強い揺れと津波。
そして、液状化という、複数の要素が重なったときの避難の難しさだ。

柳瀬キャスター
「今回避難に関してはどんな印象ですか」
東北大学・災害科学国際研究所 今村文彦教授
「この周辺の皆さんはハザードマップをもとに訓練をしていて、特に課題は複合災害でこれだけの揺れと到達が早いとどうやって命を守るか大きな課題です」

この地区は、重い瓦が乗った家屋が立ち並ぶ街並みだった。

柳瀬キャスターリポート
「ここは港から一本入った道なんですが、揺れと津波で住宅はほとんどが1階部分がなくなってしまっています。これはマンホールで1m以上隆起してしまっています」

地震の直後、この地区の住民は。

寺山さん
「津波で亡くなったのは何人かしかいないだろう。殆どが圧死だから、潰れて」
柳瀬キャスター
「津波から逃げる間もなく家から出られなくなった?」
寺山さん
「津波は、家が崩れて埋まってしまってから。
ここにいるからと言われても、道具も何もないから救助もできない」

さらに取材を進めると、過酷な当時の状況が浮かび上がってくる。

石川・珠洲市の住民
「この下に下敷きになっているし、ここも1人下敷きになっている」
柳瀬キャスター
「亡くなられたのですか?下敷きというのは」
石川・珠洲市の住民
「そう、亡くなっている。私の姪っ子、38歳」

液状化でマンホールが隆起して道を塞がれたことで、救助も妨げられ姪を家屋の外に運び出せたのは3日後だったという。

柳瀬キャスター
「津波が来る前にもう逃げられなかったんですか?下敷きになったら、手遅れですよね?」
石川・珠洲市の住民
「揺れがあって1回目で全部(潰れた)、昭和の家は…」

石川県によると、遺族が公表に同意した138人のうち、その8割以上にあたる114人が「家屋倒壊」で亡くなっていて「津波」による犠牲者は2人だ。

東北大学・災害科学国際研究所 今村文彦教授
「発災後の避難はいわば「自助」。意識や行動を素早くすることで対応できるが耐震化や強いまちづくりをするということはやはり「共助」・「公助」の支援が必要になります。これは全体で考えて対応しなければいけない」

"揺れたら高台へ"。「東日本大震災」以降叫ばれたこの意識が浸透していても、逃げることすらできない
複合災害にどう備えるか、課題が浮き彫りになっていた。

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