【気候変動と漁業】深刻化する“海の温暖化”に苦しむハマが活路を見いだす「陸上養殖」 期待と課題は?
特集は「気候変動と漁業」です。
海面水温の極端な高温が続く現象「海洋熱波」が去年東北近海にまで達し、以来「海の温暖化」が深刻になっています。
旬の時期に旬の魚がとれない状況に全国有数の水産都市である八戸市では「陸上養殖」に活路を見いだす動きが注目されています。
おとといの八戸港、第2魚市場。
午前5時を過ぎて前沖で操業した定置網漁の漁船が水揚げしています。
いつもの年は秋のうちに最盛期を終えるサバがいま網にかかる一方で、この時期最盛期となるはずの沿岸のサケはわずか。
かつては1日で1隻千匹以上あったサケの水揚げは今は100匹に満たない日もあります。
★定置網漁船 清和丸 石井駿吾さん
「漁は少ないですね 全体的な量が全然ダメですね」
「(サケは)去年に比べて半分以下ですね」
「日によって入る魚が変わってくるので、そこは毎日魚を見ながら考えながらという感じですね」
要因は異常な高水温にあると考えられています。
気象庁が公表している月平均の海面水温を見ると、東北沖は2014年の夏は平年差が1度から2度高い程度でしたが去年は3度から4度も高くなりました。
濃い赤の範囲は極端な高温が続く「海洋熱波」が発生した可能性があるとされ、これまでに例がない状況が今年も続いています。
原因として考えられるのは、暖流の黒潮の北上傾向が強くなっているということです。
八戸市に研究拠点をもつ水産研究・教育機構によりますと、高水温が及ぼす影響として魚種によって漁場ができにくくなったり成長の悪化が懸念されるということです。
★八戸市水産事務所 茨島隆所長
「タチウオやブリなどこれまで八戸で取れなかった魚が取れるようになってきたという声もあるので気候変動の影響は大きいと思います」
魚のとれる時期がこれまでの「旬」とは大きく変わっていくなかで、八戸市は関係機関と連携し海洋環境の変化に左右されにくい養殖の方法を模索してきました。
今年2月 福島県浪江町で先進的な「陸上養殖」のプラントを構築した、かもめミライ水産から講師を招き勉強会を開きました。
かもめミライ水産は海からおよそ2キロ離れた場所で人工海水を浄化して再利用する完全閉鎖型の養殖施設でサバを育てています。
海洋環境の変化に左右されず海を汚さない未来の漁業に期待の声が上がりました。
そして同じ閉鎖型の陸上養殖をめざして8月、八戸市の嶋脇漁業が手を上げました。
ヒラメと高級カレイ「マツカワ」の陸上養殖に挑戦します。
★嶋脇漁業養殖責任者 吉田徳光共同代表
「自社の船の魚が年々取れるものが取れないというのを見て、会社的にもこれから先漁船漁業というところがちょっと不安なところもあって」
1951年から沖合底引き網やサンマ漁などを行ってきた嶋脇漁業が初めて養殖に挑戦するのは、長期化する不漁に対する強い危機感からです。
★嶋脇漁業養殖責任者 吉田徳光共同代表
「やっぱりこの地球環境の変化がここ数年激しくなってきているので天然の魚を待っているだけでは…」
人工海水をろ過・循環させる「閉鎖循環型」の養殖は菌や寄生虫の混入するリスクが低くなります。
吉田さんはヒラメのミニプラントで養殖方法を確認しながら種苗の受け入れに備えています。
★嶋脇漁業養殖責任者 吉田徳光共同代表
「天然の魚が揚がるのを待っているのではなくこういう陸上養殖で自分で魚をつくる」
「これから5年10年経ったらこういう陸上養殖というのが必ずどんどん増えていくのは間違いないと自分は思っています」
陸上養殖の課題は水の管理と大きな初期投資、それにエサ代や電気料などのランニングコスト。
八戸市は嶋脇漁業の挑戦をつくり育てる漁業推進のモデル事業に採用し、産学官金で連携協定を結んで課題解決をはかります。
★八戸市水産事務所 茨島隆所長
「どんどん変わっていく海の環境にどのように対応できるかどこまで対応できるかが八戸のハマの今後のカギになると思います」
八戸港の去年1年間の水揚げ高は3万7千トン過去最高だった1988年の81万トンを大きく下回るなか、気候変動に適応する「新しいハマ」の構築に向けて産学官金が手を携えた挑戦が始まりました。
海面水温の極端な高温が続く現象「海洋熱波」が去年東北近海にまで達し、以来「海の温暖化」が深刻になっています。
旬の時期に旬の魚がとれない状況に全国有数の水産都市である八戸市では「陸上養殖」に活路を見いだす動きが注目されています。
おとといの八戸港、第2魚市場。
午前5時を過ぎて前沖で操業した定置網漁の漁船が水揚げしています。
いつもの年は秋のうちに最盛期を終えるサバがいま網にかかる一方で、この時期最盛期となるはずの沿岸のサケはわずか。
かつては1日で1隻千匹以上あったサケの水揚げは今は100匹に満たない日もあります。
★定置網漁船 清和丸 石井駿吾さん
「漁は少ないですね 全体的な量が全然ダメですね」
「(サケは)去年に比べて半分以下ですね」
「日によって入る魚が変わってくるので、そこは毎日魚を見ながら考えながらという感じですね」
要因は異常な高水温にあると考えられています。
気象庁が公表している月平均の海面水温を見ると、東北沖は2014年の夏は平年差が1度から2度高い程度でしたが去年は3度から4度も高くなりました。
濃い赤の範囲は極端な高温が続く「海洋熱波」が発生した可能性があるとされ、これまでに例がない状況が今年も続いています。
原因として考えられるのは、暖流の黒潮の北上傾向が強くなっているということです。
八戸市に研究拠点をもつ水産研究・教育機構によりますと、高水温が及ぼす影響として魚種によって漁場ができにくくなったり成長の悪化が懸念されるということです。
★八戸市水産事務所 茨島隆所長
「タチウオやブリなどこれまで八戸で取れなかった魚が取れるようになってきたという声もあるので気候変動の影響は大きいと思います」
魚のとれる時期がこれまでの「旬」とは大きく変わっていくなかで、八戸市は関係機関と連携し海洋環境の変化に左右されにくい養殖の方法を模索してきました。
今年2月 福島県浪江町で先進的な「陸上養殖」のプラントを構築した、かもめミライ水産から講師を招き勉強会を開きました。
かもめミライ水産は海からおよそ2キロ離れた場所で人工海水を浄化して再利用する完全閉鎖型の養殖施設でサバを育てています。
海洋環境の変化に左右されず海を汚さない未来の漁業に期待の声が上がりました。
そして同じ閉鎖型の陸上養殖をめざして8月、八戸市の嶋脇漁業が手を上げました。
ヒラメと高級カレイ「マツカワ」の陸上養殖に挑戦します。
★嶋脇漁業養殖責任者 吉田徳光共同代表
「自社の船の魚が年々取れるものが取れないというのを見て、会社的にもこれから先漁船漁業というところがちょっと不安なところもあって」
1951年から沖合底引き網やサンマ漁などを行ってきた嶋脇漁業が初めて養殖に挑戦するのは、長期化する不漁に対する強い危機感からです。
★嶋脇漁業養殖責任者 吉田徳光共同代表
「やっぱりこの地球環境の変化がここ数年激しくなってきているので天然の魚を待っているだけでは…」
人工海水をろ過・循環させる「閉鎖循環型」の養殖は菌や寄生虫の混入するリスクが低くなります。
吉田さんはヒラメのミニプラントで養殖方法を確認しながら種苗の受け入れに備えています。
★嶋脇漁業養殖責任者 吉田徳光共同代表
「天然の魚が揚がるのを待っているのではなくこういう陸上養殖で自分で魚をつくる」
「これから5年10年経ったらこういう陸上養殖というのが必ずどんどん増えていくのは間違いないと自分は思っています」
陸上養殖の課題は水の管理と大きな初期投資、それにエサ代や電気料などのランニングコスト。
八戸市は嶋脇漁業の挑戦をつくり育てる漁業推進のモデル事業に採用し、産学官金で連携協定を結んで課題解決をはかります。
★八戸市水産事務所 茨島隆所長
「どんどん変わっていく海の環境にどのように対応できるかどこまで対応できるかが八戸のハマの今後のカギになると思います」
八戸港の去年1年間の水揚げ高は3万7千トン過去最高だった1988年の81万トンを大きく下回るなか、気候変動に適応する「新しいハマ」の構築に向けて産学官金が手を携えた挑戦が始まりました。
最終更新日:2024年12月12日 19:35