【ダウン症の少年画家】“シュールでポップ” 剛輝さんと家族の特別な思いを込めた展覧会 (every.しずおか特集)
シュールでポップな世界観に独特な色使いが特徴のこちらの作品。描いたのは浜松市のダウン症の少年画家・大村剛輝さんです。
浜松市北区で暮らす剛輝さんは、特別支援学校の中等部3年生(当時)。ダウン症は、染色体の異常が原因とされ、知的な発達がゆっくりで疲れやすかったり、言葉を発することが少し苦手です。
学校から帰ってくると、毎日、机に向かい絵を描きます。ボールペンやフェルトペンを使って、大好きな動物や日常生活であったことを表現することが得意です。
3人兄弟の末っ子として生まれた剛輝さん。昔から少し人見知りなところがあるということですが、普段、家族の前では、人を笑わせるのが大好きなムードメーカーです。
剛輝さんの創作活動を支えてきたのが母親の由実さん。剛輝さんが産まれたばかりの時は不安でいっぱいだったといいます。
(母・由実さん)
「ダウン症を知らなかった。確定しましたという時に、これは避けられない現実なんだなと。(ダウン症の子がいる人に)連絡したところ、すぐお電話いただいて『大丈夫、愛情いっぱいに育てればいいのよ』と話してもらったことと、貸してもらった本に、こういう子を育てられると見込まれた家庭に授かると書いてあって、マイナスな気持ちだったのが、選ばれたならやってみようと」
そんな大村さん家族を支えてきた場所があります。家の一室で、由実さんが運営している交流スペース「えほん文庫」です。
剛輝さんが産まれた年に開館し、絵本の貸し出しのほかに子育て、ダウン症、不登校など、さまざまなテーマを話し合う座談会を開催。15年間で、のべ5700人以上が利用し、多くの出会いと交流が生まれてきました。
(母・由実さん)
「今でも、ダウン症のある赤ちゃん会でも、私が相談したり情報交換したり、私の方が皆さんやえほん文庫に支えられてきたんだなと思います」
今の剛輝さんとの生活も「えほん文庫」があったからこそ。そこで、15年間の感謝を、剛輝さんの絵を通して伝えようと考えたのです。
(母・由実さん)
「好きなことをやらせてあげると伸びていくし、それが自信になって他のこともできるようになる」
展覧会当日。剛輝さんが1歳から描いてきた50点以上の作品が、当時の写真と共に飾られました。
展覧会に初めて訪れたという親子がいました。1歳7か月の娘が剛輝さんと同じダウン症です。
「この子も、まねをすると才能があるのかなと思う」
「一つのことを黙々と目標を持ってやる素晴らしさ。うちの娘にも挑戦させてやりたいという意欲がわきました。徐々に娘ができるように導いてあげられればなって、この展覧会をみて率直に思いました」
多くの人に絵で元気を与えた剛輝さん。
(母・由実さん)
「本当にたくさんの人に支えていただいて今日がむかえられたんだなって実感しています。これからも浜松に限らず、全国あちこちに出掛けていく機会ができたら嬉しいなと、夢が広がりました」
(静岡第一テレビ every.しずおか 2022年11月22日放送)