“新たな熊文学”直木賞に「ともぐい」 羊飼いをしながら執筆 別海町出身の河﨑秋子さんが受賞
17日に開かれた直木賞の選考会で、別海町出身・河﨑秋子さんの「ともぐい」が選ばれました。
河﨑さんの作品は北海道にこだわり、「新たな熊文学」とも呼ばれていて、今回の受賞に道内からは多くのお祝いの声が聞かれました。
17日夜の東京都内で直木賞の選考会が開かれました。
「第170回、直木三十五賞は河﨑秋子さんの“ともぐい”」
第170回の直木賞に、道東・別海町出身の河﨑秋子さん44歳の「ともぐい」が選ばれました。
河﨑さんの作品は「新たな熊文学」とも言われています。
なぜクマをテーマにした小説なのか。
受賞から一夜明けた河﨑さんをインタビューしました。
(宮永キャスター)「受賞の話を聞いた時は?」
(直木賞を受賞 河﨑秋子さん)「嬉しすぎて、嬉しい容量が多すぎて、頭のバッテリーが落ちたような状態になっていました」
受賞作品の「ともぐい」は明治時代の後期、道東を舞台に狩猟をなりわいとする男と、巨大なクマとの死闘を通して「死生観」を描いた物語です。
実家は酪農を営んでいる河﨑さん。
羊飼いをしながら執筆活動を始めました。
2014年に小説「颶風の王」で三浦綾子文学賞を受賞し、直木賞は2回目のノミネートで選ばれました。
(宮永キャスター)「作品に込めた思いは?」
(直木賞を受賞 河﨑秋子さん)「数や環境は変わっても、クマの生態が変わる訳ではないので。それに対して人間がどういった対応をするか。それによる時代の違いや令和の読者の人が見る時のズレなど、そういったことを意識しながら書いていました」
(宮永キャスター)「物語のテーマはどういったところから取り入れているのですか?」
(直木賞を受賞 河﨑秋子さん)「今回の話でいえば、クマを撃つ人が主人公だが、地元・道東で暮らしていた時、山の中に入ってクマがいそうな所に足を踏み入れた時の怖さとか、あるいは昔の猟師の人たちの手記などですとか、物語の中に織り込んでいって、小説の世界観として読み手の人に受け取ってもらえれば、ある一定、成功できたかな思う」
受賞から一夜明けた河﨑さんの地元・別海町では、町役場の電光掲示板にお祝いのメッセージが表示されていました。
図書館でも直木賞の受賞を称えるメッセージなどが飾られ、祝福ムードです。
さらに…
(武田記者)「こちらには特設コーナーが設けられていますが『ともぐい』は貸し出し中で、3か月以上先まで予約で埋まっているということです」
兄の淳さんにも受賞の一報が届いていました。
(河﨑秋子さんの兄・淳さん)「名前が出た瞬間、びっくりしたのと誇らしかったのと。ほんとおめでとう、お疲れさまというそれだけです」
そして、小学校時代の同級生からはこんな言葉もー
(小学校時代の同級生・伊沢春奈さん)「もう雲の上のような存在ですよね。もう下の名前で呼べないかなと思います。なんて呼びましょう。『先生』になるんですかね」
小説「ともぐい」が置かれていたのは、札幌市内の書店です。
さっそく本を手に取る人の姿も見られました。
(書店に来た人)「賞を取ったから読んでみるかと初版を求めて一番先に来ました」
(書店に来た人)「応援したい気持ちと興味があって読んでみたくなりました」
北海道にこだわった創作活動で「新たな熊文学」を切り開いた河﨑さん。
直木賞の贈呈式は来月下旬に行われるということです。